2019 Fiscal Year Annual Research Report
Spinning of High-strength Fibers consisting of only nanocellulose crystals
Project/Area Number |
17K05991
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
荒木 潤 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (10467201)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | セルロースナノウィスカー / 湿式紡糸 / 繊維 / 結晶配向度 / 弾性率 / 強度 / 化学架橋 |
Outline of Annual Research Achievements |
天然セルロースの酸加水分解により得られるセルロースナノウィスカーの水懸濁液を、有機溶媒中に射出してゲル状繊維を得た後に風乾することで、100%セルロースナノウィスカーのみからなる繊維の紡糸に成功した。出発セルロース原料として一般的な綿と、高結晶性ナノウィスカーをもつホヤを用いて繊維を調製できた。凝固浴溶媒の種類、凝固浴中の電解質の種類及び濃度、紡糸原液の懸濁液濃度などの紡糸条件を広範に変えて調査し、さまざまな繊維を紡糸できる最適条件を見出した。 得られた繊維のX線回折から内部のナノウィスカーの配向度を求め、最大で配向度0.92という高配向性の繊維を得た。繊維の引張試験によりヤング率および破断強度を測定し、ヤング率はウィスカーの繊維内配向度に依存するが力学物性値は依存しないという結果を見出した。さらに、紡糸した繊維を一度水洗した後に再び風乾するとヤング率および破断強度がさらに増加することが見いだされた。この繊維の元素分析結果から、凝固浴に存在していた電解質(Ca2+)がナノウィスカーの表面荷電基の量と1:2の化学量論比で存在していることがわかり、表面官能基をCa2+イオンがイオン架橋して強度が増加している可能性が示唆された。 さらなる力学物性向上をめざし、ジビニルスルホンのような二官能性の架橋剤を紡糸時に混入する、あるいはイミダゾリド基のような加熱により架橋進行できる官能基をナノウィスカー表面に導入し、繊維内の化学架橋を試みた。架橋に必要なアルカリの浸透が不十分であったなどの理由により、期待したような物性向上は見られなかったが、架橋条件によってはやや破断強度が低下するものの破断時伸びが増加する(未架橋時1%以下、架橋繊維4%)繊維が調製できた。
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Research Products
(15 results)