2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K05994
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
鈴木 智幸 京都工芸繊維大学, 材料化学系, 助教 (90422807)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ポリベンゾオキサゾール / シリカ / 有機-無機ハイブリッド / ゾル-ゲル / 気体分離膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度に実施した先行評価において、直鎖ポリベンゾオキサゾール(PBO)系ハイブリッド膜の気体透過・分離性が、製膜プロセスにおける最終熱処理温度に強く依存し、最終熱処理温度の上昇が二酸化炭素/メタン分離性の向上に有効であることを見出した。そこで平成30年度は、テトラエトキシシラン(TEOS)を用いたゾル-ゲル法により作製した多分岐PBO-シリカハイブリッド膜について、最終熱処理温度の影響を検討した。種々の最終熱処理温度にて作製した多分岐PBOについて密度測定を行い、原子団寄与法に基づいて自由体積分率を算出したところ、最終熱処理温度の上昇に伴う自由体積分率の増加が見られた。また、気体透過・分離性を評価した結果、これまでに検討を行った直鎖PBO系と同様に、最終熱処理温度の上昇に伴う二酸化炭素/メタン分離性の向上が確認され、その傾向はハイブリッド化後も維持された。また得られた結果を、類似構造を有する直鎖PBO系ハイブリッド膜と比較した場合、直鎖PBO系ハイブリッド膜を上回る二酸化炭素/メタン分離性を示すことが明らかとなった。これらの結果から、最終熱処理温度の上昇により分子鎖の再配列が促進され、それに伴い自由体積分率が増加するとともに、特異な多分岐構造に起因して優れた二酸化炭素/メタン分離性が発現することが分かった。 平成30年度の研究成果について、学会(国内)(4件)での発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【サブテーマ1: 多分岐PBO系ハイブリッド膜の作製と諸物性評価】・・・平成29年度の研究成果にて、類似構造を有する直鎖PBOでは、最終熱処理温度の上昇に伴い自由体積分率が増加し、それに起因して二酸化炭素/メタン分離性が向上することが分かった。そこで平成30年度は、種々の最終熱処理温度にて多分岐PBOを作製し、各サンプルの自由体積分率を原子団寄与法に基づいて算出した。その結果、多分岐PBOにおいても最終熱処理温度の上昇に伴い自由体積分率が増加することが分かった。これは直鎖PBOと同様に、最終熱処理温度の上昇に伴い、分子鎖の再配列が促進されたためと考えられる。
【サブテーマ2:多分岐PBO系ハイブリッド膜の気体透過・分離メカニズムの解明】・・・種々の最終熱処理温度にて作製した多分岐PBO-シリカハイブリッド膜について気体透過・分離性(主として二酸化炭素/メタン分離性に着目)を評価した結果、最終熱処理温度の上昇に伴う二酸化炭素/メタン分離性の向上が確認された。また得られた結果を、類似構造を有する直鎖PBO系ハイブリッド膜と比較した場合、直鎖PBO系ハイブリッド膜を上回る二酸化炭素/メタン分離性を示すことが明らかとなった。これらのことから、最終熱処理温度の上昇に伴い自由体積分率が増加するとともに、特異な多分岐構造に起因して、優れた二酸化炭素/メタン分離性が発現することが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
【サブテーマ1: 多分岐PBO系ハイブリッド膜の作製と諸物性評価】 、【サブテーマ2:多分岐PBO系ハイブリッド膜の気体透過・分離メカニズムの解明】・・・平成30年度に引き続き、当該サブテーマを実施する。
【サブテーマ3:多分岐PBO系ハイブリッド膜の高性能・高機能化】・・・平成31年度は、二酸化炭素/メタン分離性の向上、ならびに排ガスからの二酸化炭素の分離・回収などを想定した、二酸化炭素とその他気体との組み合わせにおける透過・分離性の向上・制御 に主眼を置いた、多分岐PBO系ハイブリッド膜の高性能・高機能化に取り組む; 《 二酸化炭素とその他気体との組み合わせにおける透過・分離性の向上・制御》: これまでに研究を行った多分岐ポリイミド系ハイブリッド膜においては、シリカの原料となる金属アルコキシドの種類を適宜変更することで、二酸化炭素の透過・分離性が変化することが見出されている。よって、平成31年度は、多分岐PBO系ハイブリッド膜において、TEOS以外の金属アルコキシドを使用(あるいは併用)し、二酸化炭素と、メタンならびにそれ以外の気体との組み合わせにおける透過・分離性の向上・制御の可能性を探索する。
本研究の研究成果は随時、申請者の所属学会等にて学会発表を行うとともに、学術論文誌での論文発表を行う。また、新聞、雑誌等の媒体にて、より幅広く社会・国民に向けて発信する予定である。
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Causes of Carryover |
平成30年北海道胆振東部地震に伴い、第67回高分子討論会(北海道)が開催中止となり、旅費の合計が当初計上した概算額を下回ったため。繰り越し分については、平成31年度に執行予定。
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