2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K05996
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
辻本 敬 大阪大学, 工学研究科, 助教 (90425041)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 高分子材料 / バイオベースポリマー / 形状記憶材料 / 植物油脂 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は再生可能な植物油脂を主要素に利用し、他の高分子と複合化することでバイオベース形状記憶性材料を開発することである。 平成30年度は形状固定を担うポリマーとしてポリ塩化ビニルを含む油脂ベース複合材料を合成し、その物性測定や形状記憶性の測定を行った。テトラヒドロフラン中でエポキシ化大豆油とポリ塩化ビニルを任意の割合で混合し、重合開始剤を添加した。キャスト法により溶媒を留去した後、加熱することで透明な複合材料を得た。 複合材料の示差走査熱量分析(DSC)や動的粘弾性の測定により、油脂ポリマーとポリ塩化ビニルのガラス転移に由来する変化がそれぞれ観察された。また、エポキシ化大豆油とポリ塩化ビニルの組成を変化させたところ、各々のガラス転移温度に大きな変化がなく、貯蔵弾性率の転移幅のみが変化することがわかった。これらは油脂成分とポリ塩化ビニル成分は非相溶であり、油脂の架橋ネットワーク中に直鎖状のポリ塩化ビニルが分散したセミ相互侵入高分子網目構造(セミIPN構造)を形成していることを示している。引張試験を行ったところ、エポキシ化大豆油の単独硬化物と比較してポリ塩化ビニルの添加により強靭化していることが明らかとなった。また、ポリ塩化ビニルの割合が増加するにつれ初期弾性率と破断強度が増加した。さらに本複合材料はポリ塩化ビニル成分のガラス転移を利用することで形状記憶性が発現し、その機能はエポキシ化大豆油とポリ塩化ビニルの組成に依存することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、植物油脂を基盤とする形状記憶材料を合成し、その物性や機能の測定を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
形状固定を担うポリマーとしてポリ塩化ビニルを選択した油脂ベース複合材料の材料組成と形状記憶性の相関を詳細に調査する。また、ポリ塩化ビニル以外のポリマーとの複合化を行い、その物性や形状記憶性を調べる。さらに2段階形状記憶材料の開発も検討する。
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Causes of Carryover |
前年度までに保有していたり購入した試薬や企業提供サンプルを用いて形状記憶性を有する複合材料が合成し、得られた材料の物性測定に注力したため消耗品への執行はなかった。次年度はこれまでの研究のまとめとともに新たな複合材料の創製に着手する予定である。
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