2018 Fiscal Year Research-status Report
直鎖状高分子だけでは実現できない絡み合いトポロジーを利用した高分子結晶化制御
Project/Area Number |
17K05998
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
山崎 慎一 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (40397873)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 邦生 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (40274013)
新 史紀 岡山大学, 環境生命科学研究科, 助教 (40723268)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 高分子構造・物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、直鎖状高分子だけでは実現できない絡み合いトポロジーを持った高分子の結晶化メカニズムを解明し、その結晶化を制御することで、これまでにない高性能結晶性高分子材料を創製することである。直鎖状高分子だけでは実現できない絡み合いトポロジー群は、結び目絡み合いを持たない環状高分子と、結び目を形成し複雑に絡み合うことができる直鎖状高分子または星形高分子を混合し、両者が絡み合うことによって形成できる。具体的な検証事項は、以下の通りである。①分子量の異なる数種の環状と直鎖状および星形ポリエチレンを合成し、そのブレンド試料の静置下および流動場での結晶化過程を明らかにする。②様々なブレンド比や結晶化条件で成形された試料について、結晶構造観察、熱的特性評価と引張試験機などによる力学特性評価を行う。 当該年度は、分子量の大きな環状と分子量の小さな星形ポリエチレンのブレンド系および両成分の分子量が小さくほぼ等しい環状と星形ポリエチレンのブレンド系についての研究を実施した。環状ポリエチレンとして、修飾型Grubbs触媒によるシクロオクテンの環拡大重合によって調製される環状前駆体高分子を水素化した環状ポリエチレンを用いた。また、星形ポリエチレンとして、既報によって報告された方法で得られる3腕型星形ポリエチレンを用いた。調製した試料の化学構造と平衡融点の決定を現有のNMR、赤外吸収分光計および示差走査型熱量計で行った。特性評価の完了した環状と直鎖状または星形ポリエチレンを所定の割合でブレンドした試料を作製した。 試料の静置下における結晶化挙動のその場観察を顕微鏡下で行った。この観察によって、星形高分子の分岐点や環状と直鎖が形成する絡み合いがブレンド系の結晶化に及ぼす影響を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究実施計画では、分子量がともに大きな環状と星型ポリエチレンのブレンド系の研究に取り組む予定であったが、分子量の大きな星型ポリエチレンの合成が予想以上に困難であった。それに伴い、その系の流動場結晶化の研究に十分に取り組むことができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、前年度の計画に加え、構成成分分子量を様々に変えた環状と星形高分子または直鎖状高分子のブレンド系および成形加工で重要な流動場における結晶化についての研究を展開していく。絡み合いトポロジーが流動場結晶化に及ぼす効果は静置下のそれよりも複雑であり、興味深い結果が得られることが予想される。試料にせん断流動を印加して結晶化過程をその場観察するために、現有のせん断印加機構を組み込んだホットステージを用いる。この直接観察によって、結晶化過程におけるせん断速度・歪み量・過冷却度依存性や構成成分分子量・ブレンド比依存性などが明らかにできる。 様々な結晶化条件で成形した試料の形態や結晶学的観察に取り組む。また、成形試験片の力学的特性を引張試験機や粘弾性測定装置によって、耐熱性などの熱的特性評価を示差走査型熱量計や熱重量測定装置によって行う。
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Causes of Carryover |
当該年度は、分子量の大きな星型ポリエチレンを用いた研究を十分に進行できなかったために、次年度使用額が発生した。この次年度使用額は、今後必要となる分子量の大きな星型ポリエチレンを調製するための経費として消化される予定である。
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Research Products
(2 results)