2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K05999
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
伊藤 大道 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 講師 (40363254)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 高分子構造・物性 / 高分子微粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は光刺激に応答して形状を変化させる高分子微粒子の合成と、微粒子形状の光制御手法の開発に関する。高分子微粒子の機能は微粒子のサイズや化学組成に大きく左右されるが、微粒子の形状の効果も大きく、薬物輸送や光散乱挙動に大きな影響を与えることが知られている。ここで、高分子微粒子を利用する場の外部ではなくその場での形状変化が可能になれば、高分子微粒子のさらなる先進材料としての展開が期待できる。特に、光刺激で操作できれば、生体温度での操作や、遠隔操作、微小領域での操作が可能となり、高度な応用が期待できる。 これまでに真球状高分子微粒子を延伸して非真球状にする手法や、2次元平面上に固定した微粒子を光で操作する手法が報告されているが、いずれも高分子微粒子を利用する場の外での変形操作が必要であり、これらの手法では微粒子の機能をじゅうぶんに引き出せない。 これらの課題を克服するため、本研究では水などの媒体に分散させた状態でも光刺激で形状変化を示す高分子微粒子を開発してきた。具体的には、まず、光応答性アゾベンゼンを骨格とした分子設計を行い、分散重合法による微粒子合成を行うことで、分散系で光刺激による形状変化を示す高分子微粒子の合成に成功した。さらに、その形状が非真球状であることを見いだしており、微粒子合成の観点から興味深い結果が得られている。そして、微粒子内の分子配列について詳細な検討を行い、微粒子形状との相関、さらには光駆動形状変化のメカニズムとの相関についても明らかにしつつある。今後、本研究で得られる高分子微粒子の特徴を活かした新たな光操作技術を提案していきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では1)光刺激に応答する非真球状高分子微粒子の合成、2)微粒子形状と分子構造との相関の解明、3)微粒子形状の光操作の3点から検討を行っている。平成30年度は1)および2)について主に検討を進めてきた。 まず、上記1)に着目して検討を進めてきた。光刺激に応答して形状を変化させるアゾベンゼン部位を含む分子を原料とし、粒径の揃った精密な高分子微粒子を得ることのできる分散重合法を適用して、水に分散する微粒子を合成した。一般に分散重合法では真球状微粒子が得られる。ところが、本研究では真球状でない卵型や短円柱状の微粒子を得ることができ、これらを作り分ける条件を見いだすことにも成功した。 次に、非真球状微粒子が得られる理由を明らかにするため、上記2)の検討を行った。X線構造解析、偏光顕微鏡観察、示差走査熱量測定を行ったところ、アゾベンゼン部位は液晶構造をとっていることがわかった。しかも、この液晶構造は高い秩序をもっており、分散重合のメカニズムおよび微粒子の形状との間に強い相関が見られた。本研究で得られた高分子微粒子は、アゾベンゼン部位の形状、液晶構造、微粒子の形状といった階層的な構造を有していることが特徴であり、この階層構造が、非球形微粒子形成に深く関係していた。特に、1)で短円柱状微粒子を得たことで、内部構造との相関をより明確に検討を進めることができた。 現在、3)について検討を進めており、階層構造に起因した特徴的な光駆動変形挙動を見いだしつつある。 以上から、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに得られた高分子微粒子に対して、微粒子形状の光制御手法を検討する。本研究の光駆動高分子微粒子には多様な場で多様な光刺激を与えることができる。具体的には、基板表面に固定して偏光を照射する従来法のほか、無偏光を照射することもでき、さらには水分散系での光照射も可能である。さらに、真球状に比較的近い卵形の微粒子だけでなく、短円柱状の微粒子をも本研究では得られていることから、可視光のみならず紫外光による形状変化も対象となる。このように、本研究では高分子微粒子に対して多彩な光操作の検討が可能となり、光駆動形状変化のメカニズムについて詳細に検討することができる。また、上述の通り、本研究で得られた微粒子の形状は、微粒子内部の液晶構造と、液晶構造を形成するアゾベンゼン部位の異性体構造とも関連しており、これらの階層構造に着目した議論を行っていくことで、微粒子、液晶、光化学の各方面に対して学術的に貢献していきたい。
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Causes of Carryover |
経費節約に努め、研究の必要に応じて最小限のものを購入した結果であり、現在のところ研究はおおむね順調に進行している。今後、試料の光物性に関する測定が増えるため、光照射のための光源、測定のための消耗品などに充てる計画である。
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Research Products
(5 results)