2018 Fiscal Year Research-status Report
新規多分岐ポリカーボネートを用いたリチウムイオン二次電池へ応用可能なSPEの創製
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17K06000
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
本九町 卓 長崎大学, 工学研究科, 助教 (70404241)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ポリカーボネート / 電解質 |
Outline of Annual Research Achievements |
多分岐高分子と線状高分子を用いた固体高分子電解質の種々様々な物性値を評価した。 線状高分子は、リビングアニオン重合により調整し、分子量並びに分子量分布の狭い高分子量体を得た。また、分子量の制御は容易であり、任意の分子量を持つ線状高分子を得ることが可能である。また、分岐度の異なる多分岐高分子の調整も可能であることを明らかとした。異なる分子量ならびに異なる分岐度を自在に制御可能であることを確認できている。 調整した多分岐高分子並びに線状高分子へ過塩素酸リチウムを加えたところ、それぞれ異なる塩の溶解度を示した。具体的には、線状高分子では、ある濃度から明確に不溶の塩が析出していることが目視でも確認できるばかりか、融点測定により、室温より若干高い40~50度付近に融点を持つことが明らかとなった。その一方で、多分岐高分子においても異常ともいえる高濃度であれば塩の析出並びに結晶化と思われる融解挙動が確認されたが、リチウム塩の溶解量は、線状高分子の3倍以上であり、かつ線状高分子から調整された固体電解質よりも著しく高いイオン電導度を示した。さらには、活性化エネルギーが低いことを明らかとしたことで、昨年度の報文(Polymer誌、2018年出版済)同様に多分岐高分子が線状高分子よりも低い活性化エネルギーを示すことを再度確認した。 上記の通り、分岐構造の導入により高分子固体電解質として優れた性質を示すことを明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分岐構造の導入により高分子固体電解質として、明確な物性改善を確認するに至った。多分岐高分子は、線状高分子よりも明確に高いイオン電導度を示し、かつ塩の溶解量も多くなった。塩の溶解量の向上は、より高いイオン電導度を示すために有効である。また、熱物性の改善をも発現しており、ガラス転移温度の低下により、低温地域でも使用可能な電池開発への可能性が示された。また、熱分解温度も向上しており、自動車などの高温にさらされる充電池へも利用可能と考えられる。 この通り、多分岐構造の導入が優れた高分子固体電解質の開発に有効であることを明らかとしつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
末端官能基を種々様々に変換した高分子固体電解質を合成し、種々のリチウム塩との複合高分子電解質を調整する。調整した高分子電解質の種々の物性(DSCによるガラス転移温度、TGA測定による熱分解温度、力学物性の評価)を行う。
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Causes of Carryover |
当該研究における試料の分子量測定のためのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の不調により、研究の進捗において深刻ではないものの若干の消耗品費用の予定に遅れが出たため、当該予定よりも使用残額が発生した。 実施予定であった、合成ならびに測定を次年度に実施するため、必要な薬品ガラス器具など消耗品を購入する予定である。
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