2017 Fiscal Year Research-status Report
高分子溶液における温度勾配を外場とする不可逆的拡散現象の普遍性と多様性
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17K06005
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
喜多 理王 東海大学, 理学部, 教授 (90322700)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 高分子 / 溶液 / 温度勾配 / 非平衡熱力学 / 物性解析 / 拡散 / 外場 / 構造形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高分子溶液における不可逆的拡散現象の普遍性の探求と同時に、分子レベルでの相互作用に依存する多様性を明らかにすることで、当該分野の発展に寄与することを目的とする。すなわち、熱力学的非平衡状態において、不可逆的な高分子鎖の拡散現象と構造形成現象を系統的に調べる。高分子溶液に外場として安定な温度勾配を与え、熱平衡状態から離れた条件にて起こる濃度勾配形成現象(ルードヴィッヒ・ソレー効果)のデータ取得を行う。この構造形成現象に影響を及ぼす分子レベルの相互作用を理解する。これら研究成果は、非平衡熱力学分野に実験データを提供するとともに高分子科学分野に新たな知見をもたらすことを意味する。 ルードヴィッヒ・ソレー効果の測定対象として、水溶性高分子、核酸、タンパク質および多糖類を取り上げた。これらサンプル選びは計画通りである。温度や濃度、分子量などをパラメータとする系統的な測定を実施した。具体的には、合成高分子としてポリエチレンオキシド(PEO)、ポリイソプロピルアクリルアミド(PNIPAM)、糖類・生体高分子としてλ-DNA、デキストラン、シクロデキストリンを取り上げ、ルードヴィッヒ・ソレー効果を特徴づけるソレー係数の温度依存性を決定した。その詳細は現在解析中であるが、いくつかの重要な知見が得られつつあり、これは次年度に発表する方向で準備中である。 論文発表、学会発表、招待講演などの研究成果は、成果欄に記載した通りである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のように、計画していた系におけるデータ取得が進んだことによりおおむね順調であると判断した。また、非平衡系における実験研究と並行して、高分子の熱平衡状態でのキャラクタリゼーションを行った。熱平衡系における高分子の溶液物性を正確に把握することが、非平衡状態の分子物性を解釈するために不可欠であるとの観点から、静的・動的光散乱や広帯域誘電分光法などを用いた分子ダイナミクス解析を並行して実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
計画にしたがい系統的な系選びによる測定と解析を進める。同時に高分子の熱平衡状態でのキャラクタリゼーションを推進する。 高分子物性理論と非平衡系輸送現象論の両者を軸とするモデル構築と理論的考察を行い、実験データとの比較を行うことでこの現象の普遍性を探求する。同時に、系に依存する多様性を系統的に調べ、分子レベルでの相互作用を調べるためのツールとして提供していく。
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Causes of Carryover |
旅費の支出が当初計画よりも減少し、消耗品費として使用したため。次年度では消耗品費として使用する。
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Research Products
(36 results)