2018 Fiscal Year Research-status Report
ブロック共重合体の粘着メカニズム解明による強接着・遅延接着性粘着剤の設計提案
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17K06008
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Research Institution | 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び中性子科学センター(研究開発 |
Principal Investigator |
宮崎 司 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び中性子科学センター(研究開発, 中性子科学センター, 室長 (70789940)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹中 幹人 京都大学, 化学研究所, 教授 (30222102)
山本 勝宏 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30314082)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 粘着剤 / 剥離力 / ブロック共重合体 / 中性子反射率 / 斜入射小角X線散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
ブロック共重合体粘着剤の粘着メカニズムを解明し、強接着・遅延接着機能をもつ新規機能性粘着剤の設計提案をおこなうことを目的にしている。昨年度我々が想定している上記機能発現メカニズムをまず検証した。そのためにモデル試料として、粘着剤成分のPnBAを重水素化した成分 (dPnBA)と、PMMA成分をもつジブロック共重合体粘着剤などを合成した。これらのモデル粘着剤を薄膜にし被着体であるPMMAを薄膜にしたPMMA薄膜で上下を挟んだ3層膜をフローティング法を応用して作製する技術を確立した。エージングにより粘着剤層中の被着体と相溶性のある成分が界面に偏析することで、粘着剤層が無配向構造から水平配向構造に変化する様子を観察するための基礎技術の一つである。 PMMA以外の被着体の検討として今年度は、ポリプロピレン(PP)を選択した。そのため上下の層をPPに変えて3層膜を作製し、一年目と同様の種々の検討をおこなった。PPは自動車などの各種輸送機器の軽量化のために、金属などの代替材料として検討されている。しかしPPだけで金属に置き換えることは強度的に難しいので、まずは金属や他の材料との複合材での利用がすすめられているが、それらとの接合に使われる接着剤が無いことが問題である。そこで本研究のコンセプトである相溶成分の偏析による接着力の向上というコンセプトがPPにも生かされることを確認することは重要だと考えた。ただし、結晶性であるPPをスピンコートにより薄膜化することは難しいため、薄膜化の検討が必要であった。 結果としてPP/dPnBA-PMMA/PPの3層膜を作製することができたので、140℃でエージング前後での粘着剤層の配向変化を観察することに成功した。結果はdPnBA成分がPPに配向することによる水平配向構造が形成されることを確認した。今後は実際の粘着力が上昇することを確認する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
粘着剤の重合環境が確立し、PnBA-PMMA系での強接着・遅延接着性のコンセプトは平成29年度前倒しで実証できた。さらに研究内容を一年目で論文にまとめることができた。このメカニズムがPMMA以外の一般的な被着体でも成り立つことを示す計画であったが、ポリプロピレンという実材料として有望な材料で上記のコンセプトが成り立つということを証明できた。引き続き中性子反射率を使って評価を進める体制も維持されている。3年目は至急、粘着剤重合用のモノマーを購入し、実際の粘着剤と被着体の組み合わせで、界面の相分離構造の配向と粘着力との相関を明らかにすることで研究をまとめたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後PnBA-PMMA系だけではなく、2~3の系で被着体と相溶性の高い成分の偏析を利用した強接着・遅延接着機能の検証を行う。被着体は当面、PPを中心に進めるがコンセプトの実証のためには、その他の相溶性パラメータの大きく違う被着体も利用する。粘着剤は現在中心的に評価しているdPnBA-PMMA系にまずは固定して、PMMAと相溶性パラメータの大きく違う被着体を選定する。これにより実用材料として重要なポリプロピレンに強接着する粘着剤開発に直結する知見を得たいと考える。さらに粘着剤として実際に使われる系での実際の粘着力の評価を貯めていく必要があり、数十g以上の大量合成も来年度内に実施の予定である。
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Causes of Carryover |
ブロック共重合体粘着剤の強接着・遅延接着性の検証に必要な新規ブロック共重合体粘着剤合成に必要な重水素化モノマーの購入を計画していた。しかしPPに強接着する粘着剤開発に我々のコンセプトが生かせる可能性がでてきたので、急遽実材料としての粘着力評価のための粘着剤を大量合成することを優先することになった。そのため重水素化モノマーの購入計画が遅れた。近々粘着力評価用の粘着剤合成のためのモノマーと重水素化モノマーを同時に購入する。
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Research Products
(1 results)