2018 Fiscal Year Research-status Report
Functionalization of metalate nanosheets synthesized by bottom-up processes through the hybridization with organic compounds
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17K06014
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
伴 隆幸 岐阜大学, 工学部, 教授 (70273125)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ゾル-ゲル法 / ナノ材料 / セラミックス / 溶液化学 / 薄膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属酸ナノシートは二次元材料であり、その構造異方性に起因した興味深い特性が期待される材料である。我々はこれまでに、有機陽イオンの作用を利用した水溶液プロセスによる金属酸ナノシートのボトムアップ合成法を見出している。本研究は、このボトムアップ法で合成したナノシート特有の特性を見出すことを目的としている。 そのひとつとして、合成できるナノシートの種類を増やすことを検討している。今年度は、2種類の金属イオンを含むナノシートの合成に必要となる条件を明らかにした。その合成には高温での熱処理が必要であった。そのため、剥離することでナノシートを与える層状化合物の層間イオンとして高温でも有効に作用する有機陽イオンを用いないとナノシートは生成しない。よって、ボトムアップ合成できるものとできないものがあることが分かった。その他に、これまで絶縁性のナノシートの合成を主に検討してきたので、金属電導性が期待される、混合原子価をもつ金属イオンを含むナノシートの合成も検討した。 また、金属酸ナノシートの形態制御も検討している。今年度は、大きなチタン酸ナノシートを合成する方法を検討した。ボトムアップ法では面内サイズの小さいフレーク状ナノシートしか合成できなかったが、溶解・再析出作用を利用することで比較的簡便にサブミクロンの面内サイズのナノシートが合成できることが分かった。 物性評価としては、ナノシート薄膜の屈折率の異方性を利用した光学的な応用を検討する。そのために今年度は、チタン酸ナノシートゾルをコーティングゾルとして用いて、ゾルゲル法により薄膜を作製し、その屈折率、その異方性、および加熱温度によるそれらの変化などを評価した。その結果、今後、光学的な応用を検討するための予備的な知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ボトムアップ法で合成できるナノシートの種類を増やす検討では、層状ペロブスカイト型のような2種類の金属イオンを含むものが合成できれば、合成できるナノシートの種類を膨大に増やせるため有効である。しかし、層状ペロブスカイト型ナノシートの合成には至らなかった。その検討において、このボトムアップ法に必要となる条件を明らかにすることができるなど、今後の検討における有効な知見が得られた。また、応用研究において金属電導性のナノシートが今後必要となるが、今年度は混合原子価をもつバナジン酸ナノシートを合成することができた。 ナノシートの形態制御として、大きなナノシートの合成を検討した。当初の予定では、有機リンカー分子により小さなナノシートを繋ぎ合わせる方法を検討する予定であった。しかし、リンカー分子による配位反応の平衡定数が小さく、この方法は有効でないことが分かった。そこで代わりに、フッ化物イオンなどの無機配位子を使う方法を検討した結果、溶解・再析出作用により簡便に大きなナノシートが得られることが分かった。 物性評価については、当初の予定では、ナノシートの末端に配位した有機配位子からナノシートへの光照射による電荷移動を利用した光触媒特性の評価を予定していた。しかし、配位する有機配位子を増やすと、ナノシートはその形状を維持できないという問題が生じた。そのため今年度は、次年度に予定していた双曲面型分散をもつナノシート薄膜の作製に関する予備的な検討を主に行った。その結果、ナノシートゾルを用いてゾルゲル法で作製した薄膜の屈折率に関する予備的な知見が得られた。 以上のように、予定していたことがうまく進まないことがあったものの、その機構を明らかにできたり、代わりの方法を見出せることができたり、今後につながる重要な知見が得られた。よって、全体として、おおむね順調に研究は進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、有機配位子で修飾したナノシートの光触媒特性、ナノシートから作製した光学薄膜の屈折率やその異方性の制御、ナノシートと高分子ポリマーの複合材料の作製を検討する予定である。 光触媒特性については、今年度、有機配位子の配位量が増えると、ナノシートの形状を維持できないという問題が生じたため、今後は、高活性な光触媒特性を求めるのではなく、この光触媒反応を用いないとできないような形態をもつ薄膜、例えば、優れた表面増強ラマン散乱特性を示す、銀ナノ粒子とナノシートの複合薄膜などの作製に重きを置いて進める予定である。 光学薄膜の作製においては、具体的には、薄膜の面内に金属電導性をもち、厚さ方向に絶縁性をもつ薄膜の作製を検討する。その屈折率異方性は、双曲面型分散をもつことが知られており、金属電導性のナノシートが積層した層状化合物の薄膜は、そのような特性を生み出すのに適していると考えられる。実際にそのような特性が得られるかを調べることが目的となる。それに必要となる金属電導性ナノシートの合成を引き続き検討すること、有機陽イオンの働きを利用して薄膜の配向性を制御すること、これまでに合成した金属電導性のナノシートを用いて作製した薄膜の屈折率およびその異方性を測定することを行う予定である。それらの検討により、このボトムアップ法で合成したナノシートを用いて作製した薄膜特有の屈折率における特長を見出せないかを調べる。 ナノシートと高分子の複合材料作製では、今年度、溶解・再析出作用を利用して簡便に大きなナノシートを合成できることが分かったので、そのようにして作製した様々な形態のナノシートを高分子ポリマーと複合化させることで興味深い微構造をもつ複合材料ができないかも調べる予定である。
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Research Products
(9 results)