2018 Fiscal Year Research-status Report
Slow-photon effects in inverse-opal TiO2 photocatalysis: evaluation by electron spin resonance spectroscopy
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17K06018
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
駒口 健治 広島大学, 工学研究科, 准教授 (80291483)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | フォトニック結晶 / 低速フォトン / 逆オパール構造 / 金属酸化物半導体 / 電子スピン共鳴法 / 光触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,二酸化チタン(TiO2)の逆オパール(IO)型フォトニック結晶を作成し、それらの光物性および光触媒活性の評価、光反応中間化学種のESR測定を行った。さらに、IO-酸化亜鉛(ZnO)の薄膜を作成し、その作成条件の最適化と光学特性の評価を行った。 (1) IO-TiO2薄膜の作成と光学特性の評価: スライドガラス上にPMMA単分散球を六方最密で膜状に堆積させ、そこにチタン (Ⅳ) イソプロポキシド溶液を浸潤させた後に焼結することでIO-TiO2薄膜を作成した。直径200 nmのPMMA単分散球をテンプレートに用いたとき、フォトニックバンドギャップは420 nm付近に現れ、低速フォトンとTiO2のバンドギャップのエネルギー領域が重なっていることを確認した。このことから、光触媒活性の評価およびESR測定には、直径200 nmの単分散球で作成したIO-TiO2を用いることとした。 バルク状のIO-TiO2およびP25などのTiO2について、所定の条件下でスーパオキシドラジカルアニオン(O2-)のESR測定を行った結果、IO-TiO2は参照として用いたP-25と同等かそれ以上のO2-生成量が得られることがわかった。また、水溶液中でのシカゴスカイブルー6B (SCB)の光分解反応について、光触媒活性を評価したところ、IO-TiO2の活性はP25よりも低いことがわかった。この結果は、ESR測定結果と矛盾している。これら2種類のTiO2へのSCBの吸着特性の違いが、活性を決める因子の1つとして作用している可能性がある。 (2) IO-ZnO: メタクリル酸架橋ポリスチレン単分散球(直径: 270 nm)をスライドガラス上に六方最密で堆積させ、これに硝酸亜鉛溶液を前駆体として浸潤させ、500℃で焼結することでIO-ZnO薄膜の作成に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
IO-TiO2の作成については、薄膜(光学特性測定用)とバルク状態(ESRおよび光触媒活性測定用)共に既報のものと同等の品質で作成することに成功している。そこで、低速フォトン効果について、O2-のESR測定に加えて、TiO2の光触媒活性の評価を行った。有機物のモデル化合物として基質にSCBを用いて光触媒活性を評価したところ、ESR結果との整合性が得られなかった。この理由として、SCBがIO-TO2よりもP25に吸着し易いことが考えられる。TiO2の比表面積とSCBの吸着量の測定結果から、P25単位面積あたりのSCBの吸着量はIO-TiO2の約3倍多いことがわかった。IO-TO2とP25は同じアナターゼ型であるにもかかわらず、SCBの吸着特性に大きな違いが現れたことは想定外の結果であった。 IO-ZnOについては、薄膜の作成に成功したが、バルクでの大量合成はできていない。そのため、IO-ZnOの光学特性を測定し、フォトニックバンドが470 nm付近に現れることを確認しているが、ESR測定などは行うことができていない。バルクでの合成は、基本的に薄膜と同じ手順で、ガラス基板なしで行う。ガラス基板がないと、IO-ZnOの空孔が崩れたり潰れた状態になってしまう。 ZnOには、酸素や亜鉛が脱離して欠陥が生成しやすい性質や蛍光発光を示すなど興味深い性質がある。本研究では、TiO2との比較としてZnOを選択したが、IO-ZnOで格子欠陥などの影響を除外して低速光子の効果を評価するためには、TiO2系に比べて試料調製の条件を適切に設定し、より丁寧な測定を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)IO-TiO2について: 光触媒活性の測定では、TiO2表面に吸着しにくい有機物(例えばフェノールなど)を基質として選んで、活性評価を再度行う。得られる結果をSCBおよびESR結果と比較することで、低速フォトン効果について、O2-のESR測定結果と光触媒活性との関連をより確実にすることが出来る。また、これまでに研究されているIO-TiO2について、ルチル型TiO2の報告例はほとんどない。これは、アナターゼ型TiO2の方がルチル型よりも光触媒活性が高いことが原因していると考えられる。しかし、最近では、基質の違いや反応の種類によりアナターゼ型よりもルチル型のほうが高い活性を示す系も多く報告されている。ルチル型TiO2は、アナターゼ型を高温(> 500℃)で焼結することで簡単に作成することできる。ルチル型のIO-TiO2の作成とその光学特性、低速光子効果について検討を行う。 (2) IO-ZnO: 今年度、薄膜の作成に成功しているがバルク状では作成できていない。基本的な作成手順は薄膜と同じで、前駆体の浸漬条件や浸漬方法を変えて、バルク状IO-ZnOの大量合成を行う。ZnOでは、酸素空孔などの格子欠陥により可視光の吸収に伴う電荷分離も容易に起こることが報告されている。実際に、ZnOへの可視光照射によりO2-が表面に生成することをESR法で確認している。そこで、このサブレベルの電子を伝導帯に光励起できるエネルギー領域と低速光子の波長領域が一致したIO-ZnOを作成し、バンドギャップ励起に加えてサブレベル励起の光誘起電子移動反応に及ぼす低速光子効果の調査についてESR法を用いて行う。 最終年度は、以上の測定を系統的に行い、TiO2およびZnOのフォトニック結晶における光化学反応に及ぼす低速光子効果を明らかにする。
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Research Products
(4 results)