2018 Fiscal Year Research-status Report
Growth processes and low-dimensional physical properties on ultrathin high-k materials film fabricated on concave-convex Si surface by spectroscopic observation
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17K06030
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
垣内 拓大 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 講師 (00508757)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 二酸化ハフニウム / 高誘電体材料 / シリコン半導体 / 表面界面反応追跡 / 時間分解光電子分光法 / シンクロトロン放射光 / ハフニウムシリサイド / 酸化ダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
超高真空中にてSi(111)-7×7清浄表面上に約2原子層(monolayer, ML)および6 MLのハフニウム(Hf)超薄膜を作製した(以下、Hf/Si(111)と表記)。2 MLのHf/Si(111)超薄膜はHfが表面界面でHfシリサイドの層を形成し、これがほとんど酸素と反応しないことから試料表面への酸素曝露に対して酸化の進行がほとんど観測されなかった。一方、6 MLのHf/Si(111)超薄膜には表面のHfシリサイド層に加え金属Hf成分が界面に観測された。金属Hf層中にはSi基板からのSi拡散も観測された。この試料表面を酸素曝露すると、界面の金属Hfが容易に酸素と反応し、さらにその近傍のSiも酸化した。この酸化の前後においてもHfシリサイド成分の酸化は観測されなかった。 酸化した6 MLのHfO_(2)/Si(111)を昇温すると900℃に到達した時、表面にある酸素種のほとんどが脱離し、Hfジシリサイド(HfSi_(2))へと変化した。このHfSi_(2)は、表面で島構造を形成していると考えられる。900℃でアニール処理した後の表面に再び酸素を曝露した結果、Si(111)-7×7清浄表面の初期酸化で観測される酸素分子の吸着状態が観測された。酸素の曝露量が増大すると、この吸着状態が徐々に消失しSi酸化が進行した。一方で、HfSi_(2)成分の酸化は観測されなかった。これは、島を形成したHfSi_(2)の間から露出したSi(111)-7×7面で酸化が起こっていると考えられる。 以上の結果はHf/Si(100)で観測された結果とHfの吸着状態および酸化過程で大きく異なっており、原子スケールで制御された物性を保証するためには、酸化反応の理解によるHf膜およびその酸化膜構造の制御が必要であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画当初、実験に用いるSi基板には清浄表面で特異な表面1次元列を示す(110)、(557)、(55 12)面を使用する予定であった。しかし、参照データを得るために行った(100)および(111)面において明確な金属Hfの吸着構造に違いがみられ、それらの酸化反応性が吸着化学状態によって異なるというこれまでに全く観測されてこなかった興味深い結果を得ることができた。本実験で観測された金属膜-Si基板表面界面での化学状態は、Si基板の複雑な表面系を理解するだけでなく、他の試料作製法でできた試料の状態分析を理解するうえでも大変重要な基礎的情報である。また、本課題で新たに大型放射光施設SPring-8の高輝度・高エネルギー分解能ビームラインBL23SUを用いることによって表面界面にある化学状態の異なる原子を選別しながらその化学反応を追跡することができた。 さらに、それ以前に昨年以前に得られたHfO_(2)/Si^(n+)/Si(110)およびHfSi_(2)/Si^(n+)/Si(110)(nは酸化数を表し、Siに結合した酸素の数に比例。n = 1, 2, 3, 4)の界面にあるSi^(n+)が酸素を介した原子種の化学状態によってその局所価電子状態が異なることを論文(Kakiuchi et al., Surf Sci. 681 (2019) 9-17)として報告することができた。 一方で、放射光光源を用いた角度分解光電子分光法によるバンド分散測定や低次元物性観測などはまだ実施できていない。これまでにない試料の表面界面状態を準備でき、高エネルギー分解能で光電子スペクトルを測定できていることから、化学反応追跡実験の解析が予想以上に時間を要しているのでそちらを優先して研究を進めている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年までの研究では、金属Hf成分は酸素と容易に反応し、近傍のSi成分も酸化させること、Hfシリサイド成分はほとんど酸化しないことが分かった。金属酸化物の高誘電体材料を用いたゲート絶縁膜では、Hfシリサイド成分が絶縁特性を劣化させることが問題である。そこで、Hfシリサイド成分の酸化を進行させるため表面に曝露する酸素分子の並進運動エネルギーを変化させることで新たな酸化反応経路が開かれるかどうかを検討する。 また、HfO_(2)は高融点であるにも関わらず酸素のみが容易に脱離し、島状のHfシリサイドを形成した。この酸素脱離が起こる温度は、異なるSi面上にHfO_(2)が形成しているためである可能性もあるが、膜厚に依存して変化している可能性がある。これはHfO_(2)中の酸素がSiの拡散によってSiOとして脱離していると考えられるためである。そこで、膜厚に依存したHfO_(2)の構造と酸素の脱離を走査型電子顕微鏡とFT-IRを用いて検討する必要が出てきた。 さらに、上記の実験結果の解釈をもってSi(110)、(557)、および(55 12)面についてもHfの吸着状態と酸化反応をX線光電子分光法に依って追跡する。また、その他の高誘電体材料としてはZrO_(2)についても吸着状態と酸化過程を追跡する。そして、HfとZrの合金系においてもどのような結果が得られるか検討する。 そして、これらの酸化反応によって特定の高誘電体材料の膜構造を準備しすることができれば、オージェ電子-光電子コインシデンス分光法によってその表面界面を選別した局所価電子状態を観測する。これによって、高誘電体材料の絶縁特性が破綻しない膜厚条件を探索する。
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Causes of Carryover |
2017年度に長期海外渡航により配分予算の執行に大きな変化が生じた。2017年度より繰り越した予算も合わせ2018年度は新たにAVC社製の超高真空1源エバポレータ電子銃本体AEV-11を導入することができた。これによりこれまで金属-Si表面界面の化学状態観測では観測されていなかった状態を観測することができるようになった。この想定外の結果の解析に時間を要し、当初予定した金属材料の調達を先送りとした。2019年度へ繰越金額は基板試料や金属試料の物品調達に当てる予定である。
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Research Products
(6 results)