2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of optical active devices based on DNA-dye-complexes
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17K06033
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Research Institution | Chitose Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
川辺 豊 千歳科学技術大学, 理工学部, 教授 (90305954)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大越 研人 千歳科学技術大学, 理工学部, 教授 (60500139)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | DNA / 色素レーザー / アゾ色素 / 光異性化反応 / 動的回折格子 / ホログラフィー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はアゾ色素を複数の方法で導入したDNA複合体、およびDNA複合体を構成要素とするいくつかのブレンド試料を作製し、その光異性化の動的挙動を検討するとともに、それらにドープした発光性色素の光増幅過程を調べた。 光異性化の動的過程のより詳細な検討を行うため、アゾ色素と発光性色素が共存する高分子試料を複数の手法で作製し,従来のcw光源をベースにした装置に加えパルスレーザー励起による光誘起複屈折の測定系を整備し、新たに作製した試料について検討を加えた。あわせて光増幅挙動を検討した。その結果、いくつかの試料において光増幅(amplified spontaneous emission)が観測され、単層試料による増幅素子が原理的に実現可能であることが検証された。ただし、アゾ色素による吸収のため閾値は上昇する。これはすなわち、発振しない場合も基本的には再吸収が主要な原因であり、分子の組み合わせを変えることで回避可能であることがほぼ明らかとなったと考えている。レーザー発振を具体化するための動的回折格子に関する光学系は現在準備中である。 DNA複合体の脂質部へのアゾカルバゾール色素の化学修飾を新規材料探索の一環としておこなっているが、本年度は所定の新規化合物を1種合成し、DNAとの結合および薄膜作製を行った。本試料をレーザーで励起したところ、単純にドープした場合に比較して十分大きな光誘起複屈折と透過率変化が観測された。 以上の結果の一部はSPIE(国際光工学会)等において発表され、プロシーディングとして2報公開されている。本年度の予算の主たる部分は、昨年度同様、実験装置構築に伴う部品、および合成する新規試料の原料、薄膜試料作製に必要な資材の購入に充当するとともに、SPIE参加のための旅費等として支出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DNA複合体中での光異性化挙動を検討するため、代表的アゾ化合物であるDR1をいくつかの方法でドープし、その光誘起複屈折と透過率減少を測定した。その結果、単純にDR1をドープした場合(DR1/DNA-CTMA)に比較して、市販のDR1-PMMA共重合体(pDR1)をDNA-CTMAと混合した場合は、PMMA中と同程度の応答が得られることが明らかになった。これらの試料におけるパルスレーザーによる誘起複屈折の応答から、DR1/DNA-CTMAでの減衰時間が2msであるのに対し、pDR1/DNA-CTMAでは1 sec程度になることが示された。 そこで、pDR1/DNA-CTMAへの発光色素の導入を試みた。これまでに我々が行ってきた溶液中への浸漬によって複数の色素を導入することに成功した。それらのうちローダミン640過塩素酸塩をドープした試料において光増幅が確認された。このほか、PMMA中にアゾ色素DO3とローダミン6Gを共ドープした試料においても増幅が観測されている。ただし、閾値はアゾ色素を欠いた場合よりも上昇していることから、かねて予想した通り再吸収による副次的な消光が原因であり、色素の吸収と発光波長を考慮した組み合わせを選択することによって回避可能であるあることがほぼ明らかになった。 単純にアゾカルバゾールをDNA複合体にドープした場合の光応答は極めて小さかったことから、DNA複合体の脂質部にアゾカルバゾールを導入した新規材料の合成を行った。次いで本化合物を用いてDNAとの複合体を合成し、スピンコート法によって良好な薄膜を得ることができた。本試料にcwレーザー照射下での光誘起複屈折および光誘起透過率変化の計測を行ったところ、DR1/PMMAと同等の応答が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はアゾ色素と発光性色素を共ドープした薄膜におけるレーザー発振とその波長可変化を行う予定である。また光学系全体の小型化を図ることでより簡便迅速な波長可変を実現する予定である。 材料については、消光や再吸収の影響を低減するため、DR1よりも短波長に吸収を有するアゾ色素、アゾカルバゾール色素の評価を行い、可能なものについては発光性色素を導入し、レーザー発振を試みる。その際、閾値の低下と耐久性の向上を図るためこれまで実績のあるヘミシアニンに限らず、より長波長で発振するものを視野に入れる予定である。 現在の問題点としてはアゾ色素によって形成された回折格子と、励起によって瞬間的に存在するポピュレーション格子の寄与が明確に区別できていないことである。何らかの時間応答を併せて測定することで両者を弁別し、今後の材料設計に生かす手掛かりとしたい。
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Causes of Carryover |
溶剤の使用量が想定より少なく、一方で単価の高い光学部品に充当するには十分でなかったため残額が生じた。次年度は、試薬の購入が当初計画より増加すると予想されるため、そこに充当する予定である。
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Research Products
(9 results)