2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of the electrodes for high-performance electrochemical capacitors via high dispersion of metal oxide nanoparticles into the micropores of activated carbon
Project/Area Number |
17K06034
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Research Institution | Aichi Institute of Technology |
Principal Investigator |
糸井 弘行 愛知工業大学, 工学部, 准教授 (40648789)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 電気化学キャパシタ / 金属酸化物 / 酸化ルテニウム / ナノ粒子 / クラスター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、酸化ルテニウム前駆体となる有機ルテニウム錯体を高分散させた活性炭に電圧を印加することで、活性炭細孔内部での酸化ルテニウムの高分散化と電気化学キャパシタ電極への応用の検討を行っている。平成29年度では、試料中のルテニウムの担持量が5重量パーセントを超える試料においてもルテニウム由来の粒子が透過型電子顕微鏡を用いてもほとんど確認できないことから、ルテニウムが1ナノメートル以下の微小なクラスターとして存在していることが示唆されていた。また、平成29年度にはX線吸収スペクトル測定による試料分析を行ったが、従来の酸化ルテニウムと構造が全く異なるためか、フィッティングが困難を極め現時点でも酸化ルテニウムの構造が明らかにされていない。しかしX線吸収スペクトルの結果から、ルテニウムの担持量によって酸化ルテニウムの酸化状態が異なり、また酸化還元反応特性との相関があることが分かった。特に電気分解後の試料中のルテニウムの担持量が2重量パーセント以下の試料においては、ルテニウムの酸化状態が低い傾向を示した。 異なる細孔構造を有する多孔質炭素でも同様の検討を行うため、平成30年度ではゼオライトを鋳型として合成した多孔質炭素を用いた検討も行った。この多孔質炭素は細孔径が1.2ナノメートルという均一なサイズを有しており、三次元的に規則正しく配列した細孔構造を有している。また、積層の無いグラフェンから成る構造をしており、活性炭の10倍の酸素を含酸素官能基として含んでいる。その結果、活性炭を用いた場合よりも錯体が極めて分解されやすいことが分かり、分解挙動が多孔質炭素の細孔構造に依存することが分かった。 一方でフェロセンを用いて同様の手法により評価したところ、熱的かつ電気化学的に安定なフェロセンにもかかわらず、活性炭細孔内では極めて容易に電気化学的な分解を受けることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度では、酸化ルテニウムを高分散化した活性炭を透過型電子顕微鏡と走査型電子顕微鏡で詳細に観察することで、酸化ルテニウムの高分散化処理の過程で活性炭粒子の体積膨張が起こらないことが分かった。この結果は酸化ルテニウムクラスターが活性炭の細孔内部に高分散しているためであり、電気化学キャパシタ電極として体積あたりの高容量化が得られることが分かった。 本研究手法は熱的・電気化学的に安定なフェロセンのような有機金属錯体でさえも、活性炭細孔内部に吸着させて電圧を印加することで容易に分解されることが分かった。したがって様々な金属においても微小金属酸化物クラスターの高分散化が可能な方法として期待できる。本研究では酸化ルテニウムクラスターの高分散化によって急速な充放電が可能な電気化学キャパシタ電極特性を明らかにすることができたが、微小金属酸化物クラスターを利用した電極触媒や合成触媒への応用も期待できる。特に炭素担体は金属や金属酸化物との相互作用が小さいために、従来の手法では1ナノメートルよりも小さな金属クラスターや金属酸化物クラスターの高分散化が困難であった。一方で本研究手法は、安価な活性炭に有機金属錯体を吸着させて電圧をかけるだけで、金属酸化物クラスターを高分散可能な極めて容易な手法である。 X線吸収スペクトル測定結果の解析がまだ終わらないために論文の投稿も遅れているが、しかし平成30年度に得られた知見をもとに、高インパクトファクタージャーナルへの論文の早急な投稿を目指すことが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
X線吸収スペクトル測定の解析を進め、酸化ルテニウムクラスターの構造を明らかにする。また、X線吸収スペクトルで得られた知見をもとに、早期の論文の投稿を目指す。 本研究手法はルテニウムのみならず鉄を含む安定な錯体においても応用可能であることが分かったため、さらに多くの種類の金属錯体を用いて検討を行い、電気化学キャパシタ電極の高性能化を目指すとともに、電子顕微鏡を用いた構造解析を同時に行う予定である。
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Research Products
(10 results)