2018 Fiscal Year Research-status Report
高発光性と高移動度を両立させた発光デバイス材料の創製
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17K06036
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
矢野 将文 関西大学, 化学生命工学部, 准教授 (10330177)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 宏之 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任准教授 (60390655)
岡本 敏宏 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (80469931)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 有機合成化学 / 機能性有機材料 / 塗布プロセス / 有機半導体分子 / 分子設計 / 構造有機化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では1)高ホール移動度,2)固体での高発光性を併せ持つ酸素架橋V字型およびN字型パイ電子系コアを基本骨格とする。これらについて伝導や光物性に関連する置換基と印刷プロセスに関連する置換基の両軸からの構造有機化学的アプローチにより有機発光デバイス向けの有機半導体材料の創製を行い、有機発光トランジスタ向けの有機半導体材料の分子設計指針を確立する。今年度は、非対称のパイ系を有する誘導体(DNF-L, DNT-L)の結果を取りまとめ学術論文として発表した。これらの分子はアモルファスシリコンに匹敵する移動度、非常に低い閾値電圧を持つ塗布型有機トランジスタ材料の分子設計が示された。 このふたつの分子の検討で、アルキル基を全く持たない縮環パイ系化合物であっても、パイ系のつながり方を適切に設計すれば、塗布型有機トランジスタ材料に求められる溶解度の条件を十分に満たせることが明らかになった。 我々は既に、DNF-V誘導体(Ph-DNF-VW) を設計し、300°C以上の非常に高い耐熱性、固体状態で非常に高い量子発光効率(ΦF=80%)を示し、単結晶貼り付けデバイスはアモルファスシリコンに匹敵する移動度最大(0.70cm2/Vs)を示し、さらに劇的な閾値電圧の減少を明らかにしている。しかしながら、Ph-DNF-VW は非常に低い溶解度しか示さないため、外側のアリール置換基を変化させることによって、優れた基礎物性を保ちつつ、溶解度を向上させる分子設計方針の探索に着手した。昨年度、グラムスケールで合成した臭素原子を有するDNF-V誘導体(Br-DNF-VVおよびBr-DNF-VV)に種々のアリール基を高い収率で導入できる条件を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来、必要不可欠と考えられていた柔軟なアルキル基を持たなくても、高移動度を保ちつつ、高い溶解度を有機半導体分子に担保させることがわかったことは大きな成果である。アルキル基などのフレキシブルな置換基導入によって溶解度を担保させていた従来の分子設計方針とは全く異なるアプローチに基づいており塗布型有機半導体材料の分子設計指針の確立に大きく寄与する。 当初の予定通り、臭素原子を有するDNF-V誘導体を前駆体として、種々のアリール基をもつ化合物の合成研究に着手できた。今後、これらの基礎物性、デバイス物性を検討するためには、非常に純度の高いサンプルを得る必要がある
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Strategy for Future Research Activity |
補助事業期間内に目的を達成するために、平成30年度はグラムスケールで得た前駆体分子に種々のアリール基を導入する検討を重点的に行なった。この結果、平成31年度はこれらの化合物の性質の解明に集中して取り組むことができるようになった。平成30年度、化合物の性質を明らかにするために用いる予定だった経費は平成31年度以降に執行する予定である。
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Causes of Carryover |
平成30年度の研究を通して、基礎物性を明らかにするための研究方針、研究体制が確立できた。平成30年度に使用しなかった599772円および平成31年度の配分の一部は、今年度に合成した化合物の性質を明らかにするための消耗品購入に用いる。
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[Journal Article] Oxygen- and Sulfur-bridged L-shaped π-Conjugated Molecules: Synthesis, Aggregated Structures, and Charge Transporting Behavior2018
Author(s)
Toshihiro Okamoto, Hiroaki Dosei, Masato Mitani, Yoshinori Murata, Hiroyuki Ishii, Ken-ichi Nakamura, Masakazu Yamagishi, Masafumi Yano, and Jun Takeya
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Journal Title
Asian J. Org. Chem
Volume: 7
Pages: 2309-2314
DOI
Peer Reviewed
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