2017 Fiscal Year Research-status Report
溶けた金属に吹き込むだけ!超音波マイクロバブルを用いたポーラス金属の革新的生成法
Project/Area Number |
17K06041
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
幕田 寿典 山形大学, 大学院理工学研究科, 准教授 (40451661)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ポーラス金属 / マイクロバブル / 超音波 / ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,研究代表者が有する超音波を用いたマイクロバブル発生技術の液体を問わない長所を生かし,溶融金属中にマイクロバブルを発生させることによるポーラス金属の直接生成の可能性および最適条件の検証を目的としている.平成29年度の研究では,マイクロバブルの溶融金属中での吹き出し位置,供給気体の種類,溶融金属の粘度が生成するポーラス金属に及ぼす影響を中心に検証を行った. まず,ホーン先端の吹き出し位置に関しては,ある閾値以上の深さとしない場合,超音波の音響流に随伴して溶融金属の上部の流体を巻き込んでしまい溶融金属中に気体をマイクロバブルとして供給できないため,効果的な金属フォームの形成に至らなかった.ホーンを深く差し込んだ場合には,溶融金属中へのマイクロバブル供給が安定化し,ポーラス金属の生成が確認された.なお,ホーンが浅い場合にはポーラス金属はできないものの,金属のナノ粒子の生成が確認されたため,この新しい金属ナノ粒子の製法について論文発表を行った.供給気体の影響については,窒素,空気,乾燥空気のマイクロバブルを用いてポーラス金属の生成を試みた.窒素を用いた場合にはほとんどポーラス金属の生成がおこらず,空気・乾燥空気の場合にはポーラス金属の生成が確認された.また,金属の体積は未乾燥の空気が乾燥空気よりも多かったことから,ポーラス金属の生成には,溶融金属中に供給されたマイクロバブルに含まれる酸素に起因した溶融金属の酸化による気液界面の安定化および周囲流体の増粘に加え,気泡内部の水分が気泡内の圧力変動により音響化学反応を起こし酸化を促進したことなどが要因と考えている.溶融金属の粘度については,マイクロバブルが発生可能な粘度範囲であれば粘度が高いほうが気泡同士の物理的な合体が抑制されることに加えて,気泡の浮上速度が小さくなるため,気孔がポーラス金属に分散していることが確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究でポーラス金属の生成はほぼ安定的に達成することが可能となっており、ポーラス化の可否条件についてはほぼ明確となっている。生成条件の最適化に関しても、差込み深さ、気体の種類、溶融金属の粘度などのパラメータが生成するポーラス金属に及ぼす影響について明らかとなってきており、おおむね順調な研究進捗と判断している。また、差込位置の実験の副産物として、金属のナノ粒子を簡易に生成する方法を見出しており、この点については予想以上の研究成果を残していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き最適条件の抽出に向けて、①超音波の周波数および音圧がポーラス金属に及ぼす影響、②ガスの供給流量、が生成するポーラス金属に及ぼす影響について評価する。 最適条件が明らかとなり次第、適用金属の融点を上げた環境でのポーラス金属の生成確認に着手し、ポーラス化が確認された条件で生成したポーラス金属をサンプルとして圧縮試験を行い、プラトー領域の幅・領域の確認・評価を行う。同様に、音響管を用いた振動吸収特性の実験にも着手する予定である。 また、初年度の研究において見出した中空ナノ粒子の製法についても、いまだ中空化/中実化の判定要因が不明確な部分も残されており、中空化メカニズムの解明も引き続き行う予定である。
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Causes of Carryover |
粘度が学内設備にて測定可能になったことなどにより、粘度計の購入予算などにおいて差額が生じた。本年度は当初の研究計画の予算使途に加え、昨年度の成果によりポーラス金属と金属ナノ粒子の差込深さによるスイッチングができることが明らかとなったことから、そのメカニズム解明の実験に必要な低融点金属や超音波ホーンなどの消耗品に本差額を使用する予定である。
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Research Products
(4 results)