2018 Fiscal Year Research-status Report
蒸気タービン材料の腐食挙動に及ぼす有機酸の影響の解明
Project/Area Number |
17K06051
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
牛 立斌 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (20262694)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 腐食 / 蒸気タービン材料 / ボイラ水 / 有機酸 / 塩化物イオン / 不働態皮膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
発電プラント低圧蒸気タービンの乾湿交番域では、蒸気中の微量の塩化物イオンなど不純物化学種が蒸気凝縮水に濃縮し、材料の腐食損傷が生じやすくなる。さらに近年、ボイラ給水・補給水に有機アミン類水処理薬剤を使用する傾向があるが、これらの有機アミンは熱分解により有機酸のギ酸や酢酸などを生成するため、生成した有機酸が不純物として蒸気タービンに搬入され、タービン材料の腐食の一因になることが懸念されている。本研究では、発電プラントボイラ給水の模擬水に有機酸(ギ酸や酢酸)および塩化物イオンなどの不純物を添加した試験水中における各種腐食試験および試験片の形成皮膜分析などを行い、有機酸が低圧蒸気タービン材料の腐食挙動に与える影響を調査する。 平成30年度では、前年度の継続研究とし、ロータ材の3.5NiCrMoV鋼とブレード材の13Cr鋼について浸漬腐食試験および電気化学的腐食試験を実施した。また、平成30年度よりボイラ機器用STBA24低合金鋼およびその溶接部材も供試材として使用した。試験には、発電プラントにおいて全揮発性物質処理(AVT) を行っているボイラ給水の模擬水(pH9.5、DO<7 ppb) に有機酸(ギ酸と酢酸)や塩化物イオンおよび硫酸イオンを組み合わせて添加した各種試験水を用いた。試験水の温度は 90℃とした。 平成30年度では、塩化物イオン含有ボイラ水中における3.5NiCrMoV鋼の腐食挙動に及ぼす酢酸の影響、塩化物イオンおよびギ酸含有ボイラ水中における13Cr鋼のすきま腐食挙動に関連する研究成果を日本金属学会北陸信越支部・日本鉄鋼協会北陸信越支部平成30年度連合講演会に発表した。また、塩化物イオンおよびギ酸含有ボイラ水中におけるSTBA24低合金鋼とその溶接部材の腐食挙動に関連する研究成果を水と蒸気の性質に関する国際会議17th ICPWSに発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有機酸(ギ酸と酢酸)および塩化物イオンを添加した各種模擬ボイラ水中における低圧蒸気タービンロータ材の3.5NiCrMoV鋼とブレード材の13Cr鋼の各種腐食試験および試験片の形成皮膜分析試験をほぼ計画通り実施している。また、ボイラ機器用STBA24低合金鋼およびその溶接部材の腐食挙動に及ぼすボイラ水中の有機酸と塩化物イオンの複合影響に関する調査も並行して実施している。得られた研究成果の一部は学会等で発表されている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、塩化物イオン含有ボイラ水中における3.5NiCrMoV鋼およびSTBA24鋼のような低クロム鋼の腐食挙動は、試験水中の有機酸(ギ酸と酢酸)が大きな影響を与えたことが確認された。一方、これらの有機酸が塩化物イオンによるブレード材13Cr鋼の孔食発生抑制傾向も見られている。また、平成30年度から有機酸(ギ酸と酢酸)および塩化物イオンを組み合わせて添加した各種試験水中における13Cr鋼の低歪速度引張(SSRT)試験を行った結果より、有機酸による13Cr鋼の応力腐食割れ(SCC)感受性を低下させたことも見られた。これは有機酸が不働態皮膜の形成機構に影響を与えたものと考える。また、各供試材の不働態皮膜形成機構及び各種腐食挙動は鋼材のクロム含有量の違いによって異なることが確認された。しかしながら、低圧蒸気タービンロータ材の低クロム鋼の全面腐食挙動や、ブレード材の高クロム鋼の孔食発生・成長挙動およびSCC感受性に及ぼす有機酸の影響機構についてまだ解明されていない。 今後、ロータ材3.5NiCrMoV鋼、ブレード材13Cr鋼を代表的な低クロム鋼および高クロム鋼の供試材とし、有機酸(ギ酸と酢酸)および塩化物イオンを添加した各種模擬ボイラ水中における各種腐食試験および試験片の形成皮膜分析試験を継続的に実施し、鋼の各種腐食機構に対する塩化物イオンと有機酸(ギ酸と酢酸)の複合影響を詳細に調査する。得られた結果を総合的に考察するとともに、火力発電プラント低圧蒸気タービン材料の各種腐食挙動および不働態皮膜の形成・破壊特性に及ぼす水・蒸気系に含まれる有機酸(ギ酸や酢酸)の影響を検討する。取得した研究成果については、国内外の学会などで発表を行い、論文として学術誌に発表する。
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Research Products
(5 results)