2018 Fiscal Year Research-status Report
計算科学的手法とマイクロ材料試験によるマグネシウム合金の変形機構解明
Project/Area Number |
17K06052
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
松中 大介 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (60403151)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マイクロピラー圧縮試験 / マグネシウム合金 / 分子動力学法 / ナノインデンテーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,分子動力学法や第一原理計算といった原子レベル・電子レベルの計算力学的アプローチによる解析とマイクロスケールの実験力学的アプローチの両サイドからマグネシウム(Mg)の変形機構を解明し,それぞれの変形の素過程に対する合金元素の効果を明らかにすることで合金設計のための知見を得ることを目的としている.平成30年度はまず装置の不具合のために実施できていなかったマイクロピラーの圧縮試験を行った.純Mgと著しい延性の改善が知られているMg-Y合金に対して,荷重軸と底面が45度にあるピラーをFIBにより作製し,フラット圧子を用いて圧縮を行った.変形後のSEM観察からいずれの場合も底面すべりが活動することが確認できた.しかし,その臨界分解せん断応力は純Mgに比べてMg-Y合金の方が大きいことがわかった.これはY添加の効果として底面すべりの抑制が重要であることを示唆している.また平成29度から引き続きナノインデンテーション試験も実施し,粒界近傍での局所的な力学応答を調査した.表面方位が底面と柱面の場合について,粒内と粒界近傍で試験を実施し,底面と柱面いずれの場合も粒界近傍では塑性硬さが増加することがわかった.計算サイドの研究としては,a方向のバーガースベクトルを持つ3つのすべり系における垂直応力の影響に関する分子動力学解析,I1型積層欠陥の近傍における欠陥挙動の分子動力学解析を実施した.また,[0001],[10-10],[1-210]をそれぞれ回転軸とする対称傾角粒界の構造とエネルギーについて原子論的解析を行った.一方,人工ニューラルネットワークに基づく原子間ポテンシャルの機械学習構築について,純Mgに対するポテンシャルを構築し,分子動力学コードLAMMPSへの実装を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度実施できなかったマイクロピラーの圧縮試験に着手し,Y添加が底面すべりの臨界分解せん断応力を上昇させることを明らかにするなど成果が得られている.また,ナノインデンテーション試験から粒界近傍での力学応答が明らかにされてきており,微小スケールでの実験力学的なアプローチからMgの変形挙動の知見を得る研究計画は着実に進められている.また,計算サイドでも当初計画していた事項に関してほぼ予定通り行うことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に関してほぼ予定通り達成できているため今後も基本的に当初の計画に沿って研究を実施するが,一方で,合金元素による底面すべりのCRSSの上昇などこれまでの研究結果で得られた結果に関する解析や,当初の計画に含まれていなかったナノインデンテーション試験による局所的力学応答などに関しては,本研究の目的に合致する重要なポイントであるため重点的に研究を進めたいと考えている.
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Causes of Carryover |
研究の一部が共通する他の予算を使用して,共同研究者との研究打ち合わせ旅費や実験装置・大型計算機の使用料などを支出したため.残額は研究成果の学会発表や論文投稿などの費用にあてる予定である.
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