2018 Fiscal Year Research-status Report
Effects of interphase layer on mechanical properties of silicone rubber composite filled with nano-silica particles
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17K06053
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
足立 忠晴 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20184187)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 陽介 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70781706)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 材料設計 / シリコーンゴム / シリカ粒子 / ナノコンポジット / 破壊靭性 / 中間層 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナノシリカ粒子を充填したシリコーンゴム複合材料の変形特性,強度特性,破壊特性などの力学的特性について,充填ナノシリカ粒子表面に特有に形成される中間層が及ぼす効果を明らかにすることを目的としている.変形特性,強度特性,破壊特性に生じる充填粒子の粒径依存性の相違を利用して,ナノシリカ粒子充填によりシリコーンゴム複合材料の力学的特性を独立に制御することが可能となる材料設計方法を提案することを目的とした. 作製した複合材料についてガラス状態からゴム状態に至る温度範囲である-100から200℃における粘弾性特性に対して温度・時間換算則を適用してシフトファクタより得られる活性化エネルギが粒子充填の影響を受けないことから,粒子充填により母材ゴムの組成に影響を及ぼさず母材ゴムの分子と絡み合うことでガラス状態にあり中間層が形成されることを確認した. シリカ粒子充填シリコーンゴム複合材料の破壊試験を実施した.このとき測定される荷重-変位線図は線形関係を示し予き裂からき裂進展し試験片が破断した.同時にき裂開口変位を測定しき裂先端の距離の平方根に開口変位が比例することが明らかにあり線形破壊力学を適用して臨界応力拡大係数を破壊靭性して結果を整理した.粒子充填率が上昇するとともに破壊靭性が増加することを確認した.さらに粒径200 nmのナノシリカ粒子を充填した破壊靭性が粒径1.5 μmのシリカ粒子を充填した材料より破壊靭性がむしろ低くなることが判明した.これはナノ粒子の周囲に形成される中間層が強固でありき裂進展抵抗に及ぼす影響が少なく,マイクロ粒子と母材分子の絡み合いをき裂がはがすことにより破壊靭性が増加するものと判断された.このため,粒子の表面を表面処理により母材との結合強度を大きくしすぎるとき裂進展抵抗が減少することを示唆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度においてナノシリカ粒子表面に形成される中間層がガラス転移温度によりガラス状態にあることを確認したが,2018年度において熱粘弾性特性に対する温度・時間換算則におけるシフトファクタより得られる活性化エネルギによっても確認されたことは重要である.さらに,充填粒子の粒径および粒子充填率が異なるシリカ粒子充填シリコーンゴム複合材料の破壊試験を実施し,線形破壊力学が適用できるとことを確認した上で,臨界応力拡大係数を破壊靭性として求めた.体積充填率が増加するとともに破壊靭性が増加することを本研究で取り扱っている複合材料においても確認した.さらにナノシリカ粒子を充填した複合材料がマイクロ粒子を充填した場合よりも低い破壊靭性となることが明らかになったことは重要な結果である.ガラス状態にある母材の場合,多くの複合材料では充填粒子が小さいほど破壊靭性と逆の結果となることが判明した.このことは中間層がガラス状態にあり母材がゴム状態にあることを起因し,粒子の表面処理により粒子表面に強固な層を形成することは母材がゴム状態にある複合材料では破壊靭性を低下することを示唆しており,工業上も重要な結果が得られたものと考えている.なお,この結果について第50回応力・ひずみ測定と強度評価シンポジウムにて研究室の大学院学生が研究発表を行い,これに対して平成30年度 日本非破壊検査協会 新進賞が与えられている. 2019年度,実施する引張変形特性について準備を行っている.ゴム材料は低弾性係数であることが重要な特性であり,この領域を越えると急激に応力-ひずみ線図の勾配が増加する.そこで低弾性係数の領域を予測する方法に検討を行っている. また,ゴム材料は気体の容器に使用されることが多くあり,小形の飛翔体が衝突したときの貫通強度も重要な特性のひとつである.このための実験装置の準備を行っている.
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度も引き続き,引張変形特性,貫通強度などの力学的特性について測定を実施する予定である.特に動的な変形挙動について,さらに測定を行い,力学的特性の時間依存性について明らかにすることとしている.最終的に測定された結果に対してシリカ粒子充填効果,中間層の影響等の考察を行い,相互の特性の関係をまとめ,シリカ粒子充填シリコーンゴム複合材料の材料設計の方法を提案する. 2017年度,2018年度の2年間にわたりの多くの研究成果が得られている.本年度はこれらの成果をまとめて,国内学会,国際会議にて発表するとともに論文として国際的学術誌に投稿する予定となっている.
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Causes of Carryover |
2019年度も引き続き,力学的特性の測定を実施するために,試験片を作成するための費用を用意しておく必要があった.特にシリカ粒子を長期保存しておくと,空気中の水分を表面に吸着するために,複合材料を作製する際に粒子の分散性が低下する.このため最低限の必必要量のみを購入することから,残金を試験片作製のために翌年度に使用することとした.
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