2017 Fiscal Year Research-status Report
導電性と透光性を備えた大形の導電性ナノファイバ/樹脂薄膜の移動電界印加による試作
Project/Area Number |
17K06061
|
Research Institution | Hachinohe Institute of Technology |
Principal Investigator |
鈴木 寛 八戸工業大学, 大学院工学研究科, 教授 (90179242)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | カーボンナノチューブ / グラフェン / 複合材料 / 導電性 / 透光性 / 一方向配列 / 移動電界 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は,(1)申請者がこれまでに作成したCNT/樹脂複合材薄膜でのCNTの分散性は必ずしも良好とはいえないこと,(2)懸濁物をコートしたカバーガラスの面を前面とすれば,移動電界をカバーガラスの背面から印加しており,コートされる物体が厚い場合は従来の手法は適用できないことの二つの問題に対しての解決策を検討した.CNTの分散性の問題については,CNTを界面活性剤で処理することにより,分散性の向上を図った.また,懸濁物上方より移動電界を印加する方法について検討した.実際には,スライドガラス上にCNTと未硬化の紫外線硬化性樹脂の懸濁物をコートし,多重電極をコート面と向かい合わせの位置に配置して,懸濁物に移動電界を印加した. 樹脂を硬化させたのちに,複合材薄膜の電気抵抗率を測定するとともに,分光器を用いて複合材薄膜の光の透過率も測定した.得られた主な知見は以下のとおりである. (1)CNTを界面活性剤で処理することにより樹脂中でのCNTの分散性は向上した.このため,重量含有率で0.1 wt%と少量の添加でも電気抵抗率の低下が確認できた.しかし,CNT表面に存在する界面活性剤が障害となるためか,それ以上CNTを添加したときの電気抵抗率の低下の割合は,未処理のCNTを添加し,同一の電界印加形式を使用したときに比べて小さかった. (2)コートされる物体の厚さの制限を外すために,懸濁物上方より移動電界を印加する形式を試した.懸濁物中のCNTは電界の移動方向にある程度配向した.残念ながら,電気抵抗率の低下の割合は,従来型の移動電界印加方式に比べ小さかった.電気抵抗率の低下の割合が小さかった原因の説明と,解決策の提示を行った. (3)従来型と新方式のそれぞれの移動電界印加方法で作製した複合材の光の比透過率を測定した.CNTの含有率の増加とともに光の透過率の減少率は指数関数的に低下した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CNTを添加材とする複合材の作製,および電気的,光学的特性の検討については,「研究実績の概要」に記したとおりであり,その結果をまとめて「材料」に投稿し,すでに掲載可の通知を受けている. 現在,添加材をグラフェンに変更して未硬化樹脂中でCNTを一方向に連結させるのと同様の手法で複合材を作製することに挑戦中である.この方法により,凝集したグラフェンの塊を一方向に長く伸ばした形式にすることが可能であることがわかっている.光学顕微鏡により,複合材中にこのように繊維状に凝集したグラフェンが何本も観察されている.また,透光性に関しては,CNTより少ない量の添加でなければ同等の透光性が得られないこともわかっている.ただし,実験に用いた未硬化樹脂の分子量が大きかったためか電気伝導性の発現には至っていない. 今回の実験に使用した樹脂は低粘度に分類されるもので,グラフェンの配列しやすさを狙ってこれを使用している.これはCNTと混合して電気伝導性が発現した樹脂とは異なる.電気伝導性が発現しない問題の解決のために,(1)電気伝導性が発現に実績のある樹脂を使用する,(2)電界印加形式を工夫することにより,グラフェンをより強固に配列させる,の両方にチャレンジする計画である.
|
Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況に記した事項を実施し,結果を論文としてまとめることが大きな課題である.また,より大形の導電性ナノファイバ/樹脂薄膜の作製方法についての理論的検討も概ね済んでいる.こちらについては早急に論文を作成し投稿したいと考えている.
|
Causes of Carryover |
(理由) 計画時の購入物品の見積額に比較して,競争入札により価格が下がったことにより差額が生じた. (使用計画) 頭書の申請時の経費についての使用計画の変更はない.差額については,実験遂行に必要な消耗品購入に充てる計画である.
|
Research Products
(3 results)