2018 Fiscal Year Research-status Report
エレクトロスピニングによる骨再生用アパタイト被覆ポリ乳酸ナノファイバー足場の開発
Project/Area Number |
17K06067
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
片山 傅生 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (70161065)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森田 有亮 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (80368141)
田中 和人 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (50303855)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ポリ乳酸 / リン酸水素カルシウム / ファイバースキャホールド / アパタイト被覆 / 骨再生 / エレクトロスピニング |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内で早期にアパタイトで被覆されるポリ乳酸(PLLA)ファイバースキャホールドの開発を行った. アパタイト析出を誘起させるためりん酸水素カルシウム(DCPA)粒子を準備した.PLLAとPolyethylene oxide (PEO)を溶解させた1,3-dioxolaneにDCPA粒子を添加することでPLLA/DCPA溶液を調製した.PEOは相分離によりファイバーの多孔質化を促すために添加した.PLLA/DCPA溶液をエレクトロスピニング装置により紡糸し,多孔質PLLA/DCPAファイバースキャホールドを作製した.比較のため,DCPA粒子を添加しない多孔質PLLAファイバースキャホールドおよび中実PLLA/DCPAファイバースキャホールドを準備した.アパタイト析出を評価するため,スキャホールドを擬似体液(SBF)に37℃環境下で3日間浸漬した.浸漬後,SEMによるスキャホールド形態の観察を行った.また,EDS,FTIRおよびXRDによりスキャホールド表面および析出物の分析を行った. SEM観察により,SBF浸漬後にDCPA粒子を添加した多孔質および中実ファイバーの表面が析出物で覆われていることを確認した.DCPA粒子を添加しない多孔質ファイバー表面には析出物は観察されなかった.元素分析により析出物からCaとPが検出され,FTIRおよびXRD分析により析出物はアパタイトであることが確認された.中実ファイバーにおいてもDCPA粒子添加によってアパタイト形成が誘起されたが,部分的にクラックや剥離が観察された.ファイバー断面のSEM観察により,多孔質構造とした場合にはアパタイトがファイバー内部にまで析出していることが確認された.これらより,多孔質構造とすることでPLLA/DCPAファイバーが早期かつ均一にアパタイトで被覆されることが確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究実施計画としては,PLLA表面へアパタイトを早期かつ均一に析出させる技術の発展と,ファイバースキャホールドの3次元構造化の試みであった. 昨年度は,アパタイトを析出させるために炭酸カルシウム粒子を添加したPLLAファイバースキャホールドを飽和塩化カルシウム溶液で処理した.この場合,ファイバー全体にアパタイトが析出したものの,全体が均一に被覆されるには至らなかった.今年度は,アパタイト析出の核としてりん酸水素カルシウム(DCPA)を用い,また析出効率を向上させるよう比表面を増加させるためファイバーを多孔質構造とした.これにより,ファイバー内外にアパタイトが早期に析出し,剥離やクラックが生じることなく均一にファイバーがアパタイトで被覆された. エレクトロスピニング法で作製したスキャホールドは,一般的に電気引力により数百マイクロの厚みのシート状となる.今年度に開発したスキャホールドの作製技術においては,添加したPEOおよびDCPAの効果により厚みを有する状態でのスキャホールド作製が可能となった. 以上より,概ね順調に進展していると評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,今年度に開発した多孔質PLLA/DCPAファイバースキャホールドについて,多孔質ファイバーの直径をナノレベルとしてスキャホールドを作製することを試みる.また,表面がさらに均質に被覆されるようにPLLAファイバー径に対するDCPA粒子径および添加量を検討し,より効果的な作製条件の詳細な探索を行う. スキャホールドの応用の視点より,細胞の播種やスキャホールドの移植を想定し,3次元構造を有するスキャホールドを任意形状へ成形する技術の開発に取り組む.また,多孔質PLLA/DCPAファイバースキャホールドについて,アパタイト析出に伴うスキャホールドの機械的特性の評価,骨芽細胞様細胞の培養による骨形成評価を行う.
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Causes of Carryover |
多孔質PLLA/DCPAファイバースキャホールドの紡糸装置として既存設備を大きく変更することなく活用でき,またDCPA粒子の添加条件やアパタイト析出条件について順調に条件探索が進んだため,当初予定していたスピニング装置の改良のための消耗品代や評価のための原材料費などが低く抑えられた. 次年度にはさらに均一にファイバーがアパタイトに被覆されるようにPLLAファイバーの作製技術の改善と,スキャホールドとしての細胞活性の向上に対する効果の検証のための材料費や培養・検査用試薬に使用する.
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Research Products
(3 results)