2017 Fiscal Year Research-status Report
無加圧式積層クラッドを利用した超高融点材料と形状記憶合金の創製と拡散過程の解明
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17K06072
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Research Institution | Matsue National College of Technology |
Principal Investigator |
新野邊 幸市 松江工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (20342545)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 超高融点材料 / 金属間化合物 / 反応拡散 / クラッド / アルミナイド / モリブデン / ニオブ |
Outline of Annual Research Achievements |
モリブデン(Mo)やニオブ(Nb)などの超高融点金属とアルミニウムからなる金属間化合物はアルミナイドと呼ばれ,高温強度やある程度の耐酸化性に優れることから,超高融点構造用材料として期待されている.しかしながら,融点に起因して溶解による製造が困難であるため,本研究では無加圧式積層クラッドを用いた反応拡散による合成を試みた.すなわち,超高融点金属とアルミニウムを積層させて,アルミニムの融点以上に加熱することで,超高融点金属と溶融したアルミニウム間の反応拡散によりアルミナイドを形成させた. 厚さ0.04mmもしくは0.035mmのモリブデン箔と厚さ0.04mmのアルミニウム箔を10mm×10mm程度になるように切断して,これを積層させた.厚さ0.5mmのモリブデン板を2枚用いて,積層した試料を上下から挟み込み,これを酸化防止のタンタル箔で包み込みステンレス製クリップで固定した.加熱温度は700℃から1200℃,保持時間は5minから24hとして熱処理を行った.加熱温度700℃ではAl濃度の高いMo3Al8が形成され,加熱温度900℃ではMo3Al8からMo濃度の高いMo3Alへの変化が認められた.ただし,いずれの温度でもモリブデンが残留していた.そこで,1200℃で加熱したところモリブデンが消滅して,Mo3Al8とMo3Alのアルミナイドからなる試料が得られた. 厚さ0.5mmのニオブ板と厚さ0.5mmのアルミニウム板を用いて積層した試料を準備して,700℃で加熱したところ,形成されたアルミナイドは厚さ数μmに限られ,反応がモリブデンに比べて遅いことが分かった.そこで,ニオブとアルミニウムの間にチタン,ニッケル,鉄の箔を積層させて,第3元素の影響を調査した.この結果,チタンを添加するとアルミナイドの形成が促進されることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
無加圧式積層クラッドを用いて,モリブデン基アルミナイドの形成を試みたところ,Al濃度の高いMo3Al8とMo濃度の高いMo3Alのアルミナイドを確認することができ,加熱温度の上昇に伴い,Mo3Al8からMo3Alへ変化することを明らかにできた.Mo3Alは2000℃を超える融点を有することから,いくつかのモリブデン基アルミナイドの中でも超高温構造用材料として期待できる.したがって,目的とするモリブデン基アルミナイドの形成は可能であり,研究は概ね順調に進んでいると考える. ニオブ基の場合は,形成されるアルミナイドはごく僅かであり改善を求められた.そこで,第3元素の添加を試みたところ,ニッケルと鉄を含む場合はニオブ単体の場合と類似した反応が見られたが,チタンを含む場合ではこれらと異なる傾向と,アルミナイドの形成が確認できた.このことから,ニオブ基アルミナイドの形成も可能であり,研究は概ね順調であると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
厚さ0.04mmもしくは0.035mmのモリブデン箔と厚さ0.04mmのアルミニウム箔を組み合わせた場合,試料のAl濃度はそれぞれ43at%と46at%であり,超高融点アルミナイドとして期待されるMo3Alを形成させるにはAl濃度が25at%となるように,モリブデン箔の厚さを変更する必要がある.これにより,Mo3Alの単相からなる試料を作製して,機械的特性の評価を行う.また,Mo3AlとMoの2相が層状に積層した複合材料を開発することができると考え,この複合材料の作製条件も合わせて明らかにする. ニオブ基アルミナイドの作製では加熱温度を700℃に限定したため,引き続き1000℃から1200℃での高温域における加熱を行い,アルミナイドの形成過程を明らかにする.また,第3元素を含む化合物の特定は十分でないため,X線回折による結晶構造解析により,アルミナイドの特定を行う.
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Causes of Carryover |
当該年度の研究は概ね順調に終了していて,かつ,次年度の物品として10万円程度の熱処理および研磨に使用する消耗品が必要となっている.そこで,差額分は前述の目的のため,次年度に使用する予定である.
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