2018 Fiscal Year Research-status Report
液中レーザーアブレーションによる蛍光ナノ粒子の生成場とその時間変化の解明
Project/Area Number |
17K06076
|
Research Institution | Fukuoka Institute of Technology |
Principal Investigator |
山岸 里枝 (田邉里枝) 福岡工業大学, 工学部, 准教授 (70432101)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | レーザーアブレーション / 蛍光ナノ粒子 / 発光 / 可視化 |
Outline of Annual Research Achievements |
微粒子生成法の一つに、液中レーザーアブレーション法(LAL, Laser Ablation in Liquid)がある。この方法は、液相中の固体試料にパルスレーザーを照射することにより微粒子を生成する方法である。LALにおいては、粒子径や形状をコントロールすることが課題となっている。レーザー照射条件や液体の種類を変えた実験等が行われているが、微粒子が、いつ、どこで、生成するのかという、微粒子の生成メカニズムは未だ不明確である。我々は、これを明らかにすることで、粒子径や形状のコントロールが可能になると考えた。そこで、独自の高速度連続撮影法を開発し、LALによる金属ナノ粒子の生成過程をシャドウグラフ法により調べてきた。レーザー照射直後から気泡が発生し、気泡は数ミリ秒後には消失した。その後、試料表面から微粒子の群れと思われる影が観察された。しかし、この方法では気泡内部は観察できず、また、静止画像を見るだけでは、微粒子の位置を判別することは困難で、観察方法を改善する必要があった。そこで、本研究は、紫外光を照射すると発光する蛍光性固体であるYVO4:Eu3+を試料として用い、レーザー照射時の粒子からの発光を観察することによって、微粒子の生成タイミングや分布を明らかにすることを目的とした。まず高輝度水銀ランプを用い、YVO4:Eu3+のコロイド溶液の発光を高速度ビデオカメラで撮影できる条件を調べ、より拡大した像を得るために拡大光学系を構築した。励起光として短パルスレーザーの第4高調波を用いる計画で光源系を構築したが、発光効率やレーザー強度の関係から、蛍光測定はできていない。そこでH30年度は、水銀ランプを励起光源としてLALによるナノ粒子の生成時の発光撮影を行った。最速で16μs間隔での撮影に成功し、微粒子がレーザー照射時に生成する気泡内で生成されていることを明らかにできた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
試料に焼結蛍光体(YVO4:Eu3+)、励起光に高輝度紫外ランプを用いて、LALによる発光撮影を行った。YVO4:Eu3+は350nm未満の光励起で発光効率が高く、発光は波長620nmで高いスペクトルを持つ。2台用意した高速度ビデオカメラのうち1台は試料の発光撮影が困難であったが、別のもう1台では可能であることが分かった。アブレーションによる発光をカットするフィルターの設置や励起光の照射方法等を工夫しながら撮影速度を変えて実験を繰り返し、最速で16μs間隔での発光撮影が可能であることが分かった。試料表面からレーザー集光位置を中心に発光領域が噴き上がっていくように見える挙動を観察した。同じパルスエネルギーでシャドウグラフ撮影も行った。レーザー照射による気泡の生成位置やその膨張・収縮過程を調べており、発光撮影画像と比較した。シャドウグラフ撮影では気泡が黒く写ってしまうためその内部が分からないが、発光撮影において試料表面から噴き上がるように放出された発光挙動は、レーザー集光点から広がっていた。これはアブレーションによって生成された粒子化したYVO4:Eu3+試料からの発光を捉えたものであり、アブレーションにより生成された気泡内で生じているものと考えられる。 微粒子の発光撮影は非常に困難であり、励起光源についていくつか検討した。近年開発された深紫外(波長280nm)LED照射器(100mW/cm2)を借用して励起光源として活用したが、高速度撮影には十分な出力ではないことが分かった。そこで、現有の超短パルスレーザー(パルス幅35ps)の外部に紫外発生ユニットを追加して266nmの紫外パルスを発生するよう改良した。この紫外パルスレーザーを励起光源に用いる撮影システムを構築したが、現時点では高輝度水銀ランプを用いた場合にのみ蛍光粒子の挙動を撮影できている。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、15mJのナノ秒パルスレーザー照射における蛍光ナノ粒子生成過程の観察を行い、概ねの生成タイミングやその空間分布と時間変化を明らかにすることができた。しかし、その解像度や拡大率を調整することで、より詳細が明らかにできる可能性がある。また、アブレーション環境を変えることによって、蛍光粒子の発光の大きさや輝度に変化が見られる可能性もある。今後は、撮影システムの光学系を改良し、より明瞭な像の撮影を試みる。LALによるナノ粒子生成環境を水中のみでなく、異なる種類の液相または気相、また、その温度を変化させて実験を行う等して、LALによる粒子生成メカニズムの解明を目指す。今回用いたYVO4:Eu3+試料は発光効率が最大になるようにEu3+の濃度を調整されたものであったが、現状の観察方法では16μsのシャッタースピードが必要であり、より速い撮影は困難であった。別の種類の蛍光体を用いれば、より高い時間分解能での観察が可能になる可能性がある。そこで、カメラの感度や発光波長等を考慮して、より高い発光効率を得られる別の種類の蛍光体を選定し、材料をいくつかの条件で焼結して新しいターゲット試料を成形する。この試料に対して、LALにおける蛍光粒子の発光撮影を試みる。
|
Causes of Carryover |
概ね予定通りの予算執行をしており、次年度使用となった額は少ない。
|
Research Products
(1 results)