2018 Fiscal Year Research-status Report
レーザー改質による耐久性と潤滑性を両立させる接触表面の創成
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17K06120
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
藤井 正浩 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (80209014)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 機械要素 / トライボロジー / 表面改質 / ピーニング / レーザー / 転がり疲れ / テクスチャー / 摩擦 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではレーザーを援用した表面改質により,耐久性と潤滑性の向上を両立する表面創成技術の開発を行う.具体的には,ショットレスでトライボ機素表面に圧縮残留応力の付与ならびに表面硬度の向上を実現するレーザーピーニングを利用し,ピーニングと同時に表面形状を制御することで潤滑性にも優れた表面を創成することを目的とする.レーザーピーニングは高出力レーザーを水中の被加工物表面に照射し,発生する高圧の金属プラズマによってピーニング効果を得るものであり,本研究ではYAG レーザー発振器を用い,電動ステージとレーザー発振を同期制御してピーニングを実施した. 高強度機械要素を想定したSCM415(浸炭焼入れ)製試験片と,各種環境での摺動機械要素を想定したSUS440C(焼入れ)製試験片を用い,初年度に探求したレーザーピーニングの最適条件に基づいてピーニングを施し,転動疲労試験および摩擦摩耗試験に供した. 転動面全面にピーニングを施した転動試験用試験片では,最大900MPa程度の圧縮残留応力を付与でき,ボール/ディスク型の転動疲労試験ではピーニングを施さないものと比べて数倍の寿命向上が認められた.また,複数パターンでピーニングした摺動試験用試験片では,1~5パルスの照射により0.5~1.5umのディンプルを付与でき,リング/ディスク試験による摩擦・摩耗試験ではピーニングを施さないものと比べておよそ1/2の摩擦係数となった.一方,ディンプルのパターン及び深さにより摩擦係数が変化することも認められたため,耐久性と潤滑性を両立させるためのピーニング条件ならびにピーニングパターンと,そのメカニズムの解明を進める.本研究の成果は,機械システムの小型化・省力化のために重要なトライボ機素の表面耐久性の格段の向上と動力損失の低減を実現する基礎となる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に開発したレーザーピーニング装置を用いて,高強度伝動トライボ機素への応用を目的として,約HV800の硬度に浸炭焼入れしたSCM415製の試験片表面に各種条件でピーニングを施し,ボールオンディスク型の転動疲労試験に供した.その結果を,初年度に実施した調質したS45C製の試験片の結果等と比較し,表面硬度の上昇ならびに表面圧縮残留応力付与の観点から,ピーニング効果に及ぼす試験片硬度および材質の影響を検討した. レーザーピーニングにより得られる表面形状を潤滑性向上の観点から検討するため,ピーニングで創成された表面のキャラクタライゼーションの測定・解析を実施し,ショットピーニングした表面で見られるような盛り上がりはなく,1um程度の深さのディンプルの生成が可能であることを示した.複数のパターンでディンプルを付与したリング/ディスク試験片を用いた摺動試験により,レーザーピーニングした表面の摩擦・摩耗特性を調べ,ディンプルの深さや面積率との関連から摩擦特性を評価した. 摺動試験中の表面テクスチャーの経時的変化を,直接観察およびレプリカを用いて観察し.摩擦・摩耗挙動および転動疲労挙動との関連を調査した.レプリカの観察のためにクイックコーターを新規購入した.表面コーティングとの複合処理や粘弾性材料等との組み合わせなど,レーザーピーニングの更なる応用範囲も並行して検討し,NBRゴムとレーザーピーニングした表面との摩擦特性やDLC(Diamond like Carbon)との組み合わせでの検討も実施し,レーザーピーニングのより創成された表面のトライボ性能の評価を進めた. 現在まで,純滑りおよび転がり条件での試験を進めてきたが,滑り転がり条件下での摩擦・摩耗特性および転動疲労特性を明らかにするため,ローラ試験の準備を進めておりは,ローラ試験片外周にピーニングを施すための装置の製作を進めた.
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Strategy for Future Research Activity |
現在まで,摩擦挙動についてはグリース潤滑で調べてきたが,潤滑油粘度により摩擦低減効果のあるレーザーピーニング条件が異なることが考えられるため,粘度を変えた油潤滑状態で摩擦・摩耗試験を行い,レーザーピーニングで得られる表面のキャラクタライゼーションの効果を究明する.また,高強度歯車の歯面への応用のため,浸炭硬化した肌焼鋼を中心にレーザーピーニングを施し,転動疲労試験によりレーザーピーニングの有用性を更に究明する.マクロ的には表面下の圧縮残留応力分布,ミクロ的には表面近傍の組織変化を詳細に検討し,レーザーピーニングによる転動疲労強度の向上メカニズムを検討する. 純滑りおよび転がり条件での試験を進め,レーザーピーニングの有用性を明らかにしてきたが,滑り転がり条件下での摩擦特性および転動疲労特性を明らかにすることも必要である.最終年度にはローラ試験片外周にピーニングを施し試験に供する.滑り転がり接触下での摩擦特性を調べるとともに転動疲労試験を実施し,純滑りおよび純転がり接触条件下で得られた結果と比較検討する. 表面コーティングとの複合処理や粘弾性材料等との組み合わせなど,レーザーピーニングの更なる応用範囲も進めており,これらについても検討を進める.相手材料が異なる際の最適条件も究明する予定である. 以上の試験・解析結果を総合的に検討し,レーザー改質による耐久性と潤滑性を両立させる接触表面の創成のためのレーザーピーニングの条件とそれらの向上のメカニズムについてまとめる.
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Causes of Carryover |
2019年3月に開催された学会への出張旅費等が予定額より少なかったため生じた残金を次年度の物品費と合算して用いる.
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Research Products
(2 results)