2018 Fiscal Year Research-status Report
他の進行物体から受ける空力的外乱に強い3次元ブラフボディ周り流れ構造の実現
Project/Area Number |
17K06159
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中島 卓司 広島大学, 工学研究科, 助教 (40444707)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 流体工学 / 空力的外乱 / 非定常空気力 / 3次元ブラフボディ / 渦構造 / 自動車空力 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き,同一進行速度を持つ他の3次元ブラフボディから受ける,定常的な空力影響について解明を進めた。昨年度の実験計測において確認された、流体力が非線形的振舞いを示す条件を中心に計測を行い、注目している空力影響の要因となる特徴的な後流構造の変化を確認した。なかでも、流体力に強い非線形的振る舞いを生じる現象は、後流構造の応答というよりも別の形態の流れ構造へと遷移する事によって生じていることを示した。また、数値解析によっても同様の変化を明らかにした。 さらに、進行速度ベクトルが異なることで生じる、過渡的な空力影響についても調査した。自身の側方を異なる進行速度で他のボディが通過する条件に関して、風洞中で一方の模型をレール上で流路方向に運動させ、固定側ボディに作用する時系列の空気力と周囲流れ特性を計測した。また、昨年度に基礎的検討を実施したスライディングメッシュ法を適用し、過渡条件でのLES解析を実施した。その結果、他ボディの相対位置の時間変化に対して後流の応答が遅れ、過渡条件特有の流体力が生じることを示した。また、風向変化に対して強い非線形的流体力変化を示した一部のブラフボディでは、速度差が比較的小さい限られた範囲内で顕著な過渡的流体力変化を示す特性が観測された。一方で、そのような特異な条件を除けば、相対速度差を考慮した場合でも,側方を進行する他ボディからの空力影響の支配的な成分は,昨年度提案した流体現象の分離手法に基づいた理解が可能であり、2体の速度差に起因するボディ周りの動圧差と風向風速変化の増減によって、相対速度差の影響の大部分を解釈できることを示した。 一方、曳航水槽においては、地面効果をより適切に再現した状態で追従走行から離脱する過渡的条件での干渉流体力を計測し、追従状態の流体力特性から単独進行時の同特性へと移行する過渡的変化を確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度より引き続き、対象とするブラフボディの基礎的な流体力特性の把握と他の進行物体による定常的な流体力学的影響の調査について取り組むと同時に、今年度予定していた他の進行物体から受ける過渡条件下の流体力学的影響の調査を進めた。 また、昨年度の段階で遅れていたブラフボディ周囲の流動現象の解明については、数値解析を用いた分析を主体として進めた。これにより、局所のより詳細な流動状態を把握し、体系化に向けて構築した理論の妥当性についての検証も、より詳細に行うことができた。また、実験計測における可視化については、定性的な評価として、風洞において煙とレーザーシート、高速度カメラを用いた計測を実施し、数値解析の妥当性についても確認した。 なお、当初計画していた回流水槽における定量的な可視化計測に関しては、今年度風洞における動的試験装置の開発に注力したため、今年度は予備的計測にとどめ、本計測は最終年度に実施を再延期している。 以上より、全体の進捗率としては概ね計画通りであると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの取り組みにより得られた、他の進行物体の影響による3次元ブラフボディ周りの干渉流体力特性について、これまで検討してきた仮説に基づき影響現象を分離し、物体間の相対位置/運動に応じて各現象が生じる影響を局所的に評価する形で取りまとめる。その際、進行物体の運動と発生流体力との関係性を表す微係数法に基づいた流体力モデルの概念を応用し、外乱影響に伴う流体力変化の重ね合わせをベースに流体力表現モデルを構築する。そして、他ボディからの典型的な影響に対して応答が異なる局所空力パーツを付加し、流体力6成分における予測精度を評価するとともに、望ましい空力変化特性を与える空力パーツについて、構築した流体力表現モデルをベースに検討する。一方、このような流体力モデルでは表現に限界のある過渡流体力のランダム性などについては、進行物体の運動特性に対する影響を評価する過程においてランダム性の影響を調査検討し、その適切な取り扱い方法を検討する。このような強い過渡性については、システムとして基本的に回避すべき特性であるので、その発生メカニズムと現象を抑制する技術について検討する。 最後に、構築したブラフボディモデルを対象に、空力的外乱の影響を受ける条件での実験計測と数値解析を実施し、体系化において構築した流体力モデルの複合的な流れ構造を持つブラフボディへの適用性を検証する。また、同流体力モデルを入力とした自動車の運動解析を行い、他のブラフボディから受ける種々の空力的影響を考慮した場合の運動への影響を検討する。これらの知見を合わせて、他のブラフボディから空力的な影響を受けにくいブラフボディ形状の実現を目指す。
|
Causes of Carryover |
効率的な運用によって、活動を縮減することなく、見積もりに対して経費を節約することができた。一方で、現象解明のための現象可視化において数値解析への依存が増しているため、最終年度においても当初の計画よりも多くの計算資源を確保する必要が生じた。そこで、上記の残予算を次年度に繰り越し、計算資源借用のための費用に充てることとした。
|