2018 Fiscal Year Research-status Report
レーザープローブによる超音速噴霧液滴の分裂・分散過程の解明
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17K06162
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
植木 弘信 長崎大学, 工学研究科, 教授 (30160154)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 混相流 / 液体微粒化 / ウエーバー数 / マッハ数 |
Outline of Annual Research Achievements |
レーザー2焦点流速計(L2F)では、飛行時間と散乱時間の計測によって液滴の速度とサイズを算出する。信号処理を行うFPGA(Field Programmable Gate Array)におけるVerilog HDLプログラムを書き換え、クロック周波数を480MHzから700MHzに増加した。このことにより、計測精度が1.5倍に向上した。 ノズルへの供給圧力を55および110MPaに設定し、ベルヌーイ速度を360および500m/sとした。高圧噴射の場合のマッハ数は約1.5に達する。ノズル噴孔から5mm下流の噴霧中心においてL2Fにより計測された液滴の最高速度はほぼベルヌーイ速度に近い値であったが、平均マッハ数はそれぞれ約0.7および1.2であった。液滴サイズのばらつき、ならびに、速度とサイズの正の相関のためと考えられる。 噴霧中心において、低圧噴射の亜音速噴霧、および高圧噴射の超音速噴霧の両条件において、噴孔から10㎜の液滴サイズは5mmの値より小さく、液滴の分裂が確認された。サイズの減少割合は高圧噴射の場合が高く、高マッハ数で液滴分裂が顕著であった。 噴霧周辺部において、5㎜と10mmの液滴数を比較し、そのサイズ依存性に基づいて液滴の分裂と分散を評価した。低圧噴射の場合、5㎜に比べて10mmの液滴の個数はサイズによらず増加した.噴霧中心で分裂により生じた小サイズ液滴が分散により移動したものと考えられる.高圧噴射の場合、噴孔から5㎜に比べて10mmでは、約10マイクロメートル以上の液滴の個数は減少し,同サイズ未満の液滴の個数は増加した.大サイズ液滴の減少は分裂によるものであり、小サイズ液滴の増加は噴霧中心で分裂により生じた小サイズ液滴が分散により移動したものと考えられる。すなわち、高マッハ数の場合には噴霧周辺部でも液滴は分裂することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、最高噴射圧250MPaで噴射を行うことによって最高マッハ数3.0において、噴孔から5~20㎜の距離で噴霧液滴の計測を行う計画であった。装置の不具合により250MPaの超高圧噴射を達成できなくなったが、別装置により圧力110MPaで噴射し、マッハ数1.5において、噴孔から5および10㎜の位置における計測を行った。また、液滴サイズ頻度分布の変化によって液滴分裂を評価した。これにより、噴霧の中心部および周辺部における液滴分裂に及ぼすマッハ数の影響、ならびに、噴霧周辺部への小サイズ液滴の分散を明らかにした。これらのことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
噴霧液滴の分裂および分散の過程において、個々の液滴を囲む空気の流動ならびに噴霧全体を囲む空気の流動が重要な役割を担っており、この2つの流動の評価が必要である。 最終年度には、当初の計画の通りオイルミストを含む空気中に噴射される軽油噴霧液滴の速度およびサイズをL2Fにより計測する。サイズが0.3マイクロメートルの液滴は、衝撃波による急激な減速に追随することが知られており、サブミクロンのオイルミストの速度データを空気速度として取り扱い、液滴速度と空気速度の差、すなわち相対速度を代表速度としてウエーバー数を評価する。 さらに、現有の2次元位相ドップラー流速計を用いて噴霧周囲の速度場の計測を行い、噴霧へ取り込まれる空気速度の空間分布を評価する。この結果とL2Fによる噴霧内空気流動の計測結果を比較することにより、個々の液滴を囲む空気の流動ならびに噴霧全体を囲む空気の流動の評価の妥当性を検証し、研究を推進する予定である。
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Causes of Carryover |
高圧発生装置の不具合により当初予定していた圧力250MPaでの燃料噴射を実施できず、ユニバーサルカウンタおよびFPGAボートの購入を見送ったこと、ならびに、圧力200MPaレベルでの計測に向けた光学部品等の仕様の検討が必要となったことが、次年度使用が生じた理由である。 最終年度である2019年度においては、翌年度分として請求した助成金と合わせて、新たに半導体レーザー、フォトダイオード、非球面レンズ等の主要な消耗品に加えて、L2Fの光学的かつ電気的SN比向上のための光学部品、電子回路部品、ならびに、信号処理部品を購入する計画である。実験装置の関連では、噴射圧力を上げるために高圧発生装置の改良が必要であり、助成金を充当する。 さらに、噴霧周囲流動を計測するために2次元位相ドップラー流速計を使用する計画であり、液滴の速度およびサイズの膨大なデータを取得し保存するために制御コンピュータを更新する必要が生じており、このために助成金を充当する予定である。
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Research Products
(4 results)