2017 Fiscal Year Research-status Report
抗力型風車高出力化のための集風ケーシング偏流装置の最適化
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17K06175
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Research Institution | Kurume National College of Technology |
Principal Investigator |
谷野 忠和 久留米工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (70352367)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 再生可能エネルギー / 抗力型風車 / 垂直軸風車 / 高出力化 / 集風装置 / 数値解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請課題では,集風ケーシング付クロスフロー風車のスケールアップとともに,集風ケーシングの小型化の検討を行う.平成29年度は,ケーシングを構成する2つの偏流板(風車への増速流れを誘起する偏流板A,風車に不要な風の流入を防止する偏流板B)の寸法を小さくする検討として,偏流板断面形状をこれまでの平板形状から風車翼と同じ円弧翼形状とし,代わりに偏流板寸法を2/3に小さくすることを検討する. また同時に,クロスフロー風車のスケールアップについて,2種類の方法を検討し,3Dプリンタによる小型供試風車模型を製作する.すなわち,これまでに製作した代表直径114mm(風車翼中心を通る直径は100mm)の基準となる供試風車(翼弦長20mm,翼枚数12枚)と,それと相似に1.5倍とした風車(翼弦長30mm,翼枚数12枚)に加え,平成29年度は,代表直径114mmの供試風車と翼寸法およびソリディティを等しくし,翼枚数を多くして代表直径を1.5倍の171mmとした風車(翼弦長20mm,翼枚数19枚)の製作を行った.クロスフロー風車では,スケールアップを検討する場合,形状を相似に大きくする方法以外に,翼寸法は大きくせずに翼枚数を増やすなど,いくつかの方法が考えられる.また,集風ケーシング付風車では,翼寸法と集風体である偏流板寸法との大小関係も風車性能に影響するものと考えられ,これらを踏まえスケールアップの指針となる検討を行うことを目的としている. 平成29年度は,基準となる代表直径114mmの供試風車とスケールアップの方法が異なる代表直径171mmの2種類の供試風車,計3種類の供試風車について,風車単体および2枚の円弧翼形状の偏流板を付加した集風ケーシング付風車を対象に,簡易吐出型風洞送風機を用いた出力性能試験を実施し,偏流板を円弧翼形状とした集風ケーシングの出力性能改善効果の把握を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに検討した代表直径114mmの供試風車を基準として,翼寸法とソリディティ(0.76)が等しい代表直径を1.5倍の171mmとした供試風車を,3Dプリンタを用いて製作した.なお,代表直径114mmの風車と,相似に1.5倍の供試風車は前年度に製作済みである.これらの風車に適用する集風ケーシングについても,ケーシングを構成する偏流板の断面形状をこれまでの平板形状から風車翼と同じ円弧翼形状にするため,代表直径114mmおよび171mmの風車それぞれの偏流板を3Dプリンタにて製作した.なお,偏流板の長さ(翼弦長)は,代表直径114mm風車では20mm,代表直径171mm風車では30mmであり,過去に用いた平板形状に比べて2/3の大きさとした. 平成29年度は,代表直径114mmの供試風車と,スケールアップの方法が異なる2種類の代表直径171mmの供試風車について,風車単体および2枚の偏流板を付加した偏流板付風車の条件で,簡易吐出型風洞送風機を用いた出力性能実験を実施した. 集風ケーシングを付加しない風車単体の条件では,基準となる代表直径114mmの風車に対して,直径と翼寸法とも相似に1.5倍とした風車は,出力性能が向上したが,翼寸法を変えず翼枚数を増やした1.5倍風車は同程度の出力性能となった.一方,2枚の偏流板付風車では,直径と翼寸法とも1.5倍の風車は基準の偏流板付風車と出力性能は同程度となり,翼寸法を変えず翼枚数が多い1.5倍風車はこれらより高い出力性能を示した.後者では,2枚の円弧翼形状の偏流板の付加により最も良い条件で平板形状と同等の約45%出力性能が向上した.これまでの出力性能試験から,クロスフロー風車のスケールアップでは,風車単体では翼寸法も大きくする方が良く,偏流板付風車では,翼寸法が偏流板寸法よりも小さい条件の方が偏流板の効果が得られやすいことが示された.
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Strategy for Future Research Activity |
前述の出力性能試験結果から,集風ケーシング,すなわち,2枚の円弧翼形状の偏流板の付加によりクロスフロー風車の出力性能が向上した結果を踏まえ,OpenFOAMを用いた数値解析を行う.すなわち,2枚の円弧翼形状の偏流板を付加した3種類の供試風車を対象に,出力性能特性において,出力が最大点付近の作動点を解析条件として数値解析を実施する.なお,クロスフロー風車は軸方向に同一の断面形状であるため解析は2次元解析とする.これまでに,各風車の計算格子を作成し,いくつかの解析を実施中である.今後は,先に実施した3種類の偏流板付風車の出力性能試験結果と比較ができる数値解析の合わせ込みを行い,数値解析結果の流れ場から,2枚の円弧翼形状の偏流板の流れ場改善効果を評価する計画である.特に,1.5倍風車について,風車翼寸法と偏流板寸法との関係に着目して検討することを考えている. また,先の出力性能実験において,本ケーシングが風車軸周りにローター旋回方向にわずかに傾いた(15度)場合を調べた結果,偏流板Bが不要な風の流入を遮れなくなることが確かめられ,集風ケーシングの最適化として,このケーシングの傾きを考慮して偏流板Bを2枚の偏流板とし,計3枚の偏流板で構成した集風ケーシングを検討し,出力性能実験等を実施する予定である. さらに,集風ケーシングを構成する姿勢制御のための尾翼についても検討する.すなわち,数値解析結果から,2枚の偏流板に作用する風車軸周りのトルクを導出し,その値から尾翼の寸法,配置を決定し,2枚の偏流板と尾翼で構成され,軸受けを介して風車軸に固定される集風ケーシングの製作を行い,この集風ケーシング付風車の風車軸周りの挙動の把握および出力性能実験を行う予定である.なお,尾翼の寸法,配置は数値解析結果に基づき決定するため,過去の検討に比べ,小型化が期待できる.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由について,現在までの達成度でも述べた通り,おおむね順調に進展している.本申請課題では,予算決定において最も不確定な要素が3Dプリンタによる供試風車および偏流板の製作費である.3Dプリンタはまだ未成熟な部分があり,要求する精度の模型の製作に失敗する場合が多く,その分,多めの予算を想定している.なお,参考として,モデル成形にはモデル材とサポート材が必要であり,3Dプリンタの各カートリッジ1つあたりの価格は8万円で計16万円となる.本研究で用いる供試風車および偏流板の製作も何度か失敗したのちに製作されたものである.当該年度は,3Dプリンタの製作で比較的失敗が少なく順調であったため,それに係る費用が抑えられたことが,次年度使用額が生じた主な理由である. 使用計画については,上述の理由に述べた通り,初年度の助成金に繰り越しが生じているが,繰り越し相当額(約14万円)については,新たに製作する集風ケーシングを構成する偏流板の製作および,2枚の偏流板と尾翼で構成された実際的な集風ケーシングの製作の一部に充当する計画である.
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Research Products
(3 results)