2018 Fiscal Year Research-status Report
最新ディーゼル燃焼に適合する修正セタン価および分子構造に基づく新着火性指標の提唱
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17K06177
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小川 英之 北海道大学, 工学研究院, 教授 (40185509)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ディーゼルエンジン / 着火性 / 着火遅れ / 燃料 / セタン価 / 排気再循環 / 過給圧力 / 吸気温度 |
Outline of Annual Research Achievements |
コモンレールシステム,低圧ループクールドEGR,外部駆動の機械式過給機,および吸気ヒータを搭載したディーゼルエンジンを用い,吸気温度,吸気圧力,吸気酸素濃度および燃料噴射圧力を変化させた際のディーゼル燃焼の着火遅れに与える影響について系統的に調査するとともに,各因子に対する着火遅れの依存性の解明を試みた.その際,機関回転速度は1400rpmで一定とし,吸気温度は吸気管内に装着したヒータにより30℃から210℃まで,吸気圧力は機械式過給機により100 kPa(abs)から160 kPa(abs)まで,吸気酸素濃度はEGRにより21%から10%まで,燃料噴射圧力は50 MPaから200 MPaまでの範囲で変更した.なお,燃料噴射後,熱発生率の二階微分が極大値となる時期を着火時期と定義し,着火遅れを定量的に算出した.加えてそれらの因子に対する着火遅れを重回帰分析することで各因子の影響度についての比較を試みた.その結果,吸気酸素濃度を21%から10%の範囲で低下させると,燃料噴射圧力によらず着火遅れは2倍から3.5倍ほどに増加した.また,吸気温度を30℃から210℃に高温化させた場合および吸気圧力を100kPaから160kPaの範囲で高圧化させることにより着火遅れは減少した.さらに,低吸気温度では吸気酸素濃度が15%から21%の範囲では燃料噴射圧力の増加にともない着火遅れが減少したが,吸気酸素濃度が10%から12%の範囲では燃料噴射圧力の増加にともない,着火遅れは減少から増加に転じた.着火遅れに対する各パラメータの相関係数を比較すると,吸気酸素濃度の影響が最も大きく,吸気温度,吸気圧力,燃料噴射圧力の順であった.加えて,着火遅れの実測値をもとに重回帰分析を用いた着火遅れの予測式により,着火遅れを十分な精度で予測することができた .
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,コモンレール噴射系を有する直接噴射式ディーゼルエンジンを用い,吸気酸素濃度,吸気温度,過給圧力,および燃料噴射圧力を広い範囲で系統的に設定して軽油の着火遅れを計測し,着火遅れとセタン価の関係を把握するとともに,分子構造が既知の単組成炭化水素および軽油などの実用燃料を用いて同一条件で 着火遅れを測定してセタン価正標準燃料の着火遅れと対比することにより,各燃料の修正セタン価を求めることができており,おおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
過給および250 MPaまでの高圧噴射が可能なコモンレール噴射系など最新の燃焼系を有する直接噴射式ディーゼルエンジンにおいて,種々の運転条件における軽油の着火遅れを計測し,これをデータベースに加えることで修正セタン価の信頼性を向上させるとともに,修正セタン価を目的変数,分子構造パ ラメータを説明変数として多重解析を行うことにより,新たなPDI indexの算定式を構築する.分子構造パラメータとしては,各パラメータと修正セタン価との 単相関やパラメータ間の多重相関などを考慮しながら,必要に応じて見直しを行い,最終的にはH-NMR分析などにより容易に求めることができる分子構造パラ メータで構成する算定式とし,機器分析で簡便に求めることができる着火性指標を提唱する.さらに,PDI indexを求めた各燃料について,実際のディーゼルエ ンジンを用いて様々な運転条件で着火遅れを実測し,PDI indexの適合性を検討するととに.着火遅れ期間中の温度および圧力経過と修正セタン価から, Livengood-Wuの着火遅れ理論におけるアレニウス式の各定数を修正セタン価別に求める.
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Causes of Carryover |
少額であったため,次年度の消耗品代ととして繰り越すこととした.
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Research Products
(2 results)