2018 Fiscal Year Research-status Report
可変迎角フィン付き伝熱管による混相流の流動制御と熱輸送の最適化
Project/Area Number |
17K06178
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山田 雅彦 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (70230480)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 氷スラリー / 混相流 / 固液相変化 / 熱交換器 / 流動制御 / 数値解析 / 粒子法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,氷スラリー流内の氷の潜熱を有効に採取するため,矩形フィンを氷スラリー流側に,流れに迎角を有する形態で各伝熱管に取り付け,流れに対するフィンの迎角を変えることで加熱管周囲の流れおよび後流を制御し,氷粒子と加熱面の接触を促進する事を目的としている.平成30年度では平成29年度に行った単管による実験・解析を管群に拡張して実験・数値解析を行い下記の成果を得た. 1.試験部(加熱管)の単管から管群への改造: 平成29年度に製作した実験装置の試験部および加熱管を単管から管群に変更した.氷スラリーの流速をより広範囲に設定するため,氷スラリー循環系統を新たに設計・製作した.加熱管熱流束および管表面温度をより正確に測定するために加熱管構造の改良を実施した. 2.実験の遂行および結果の検討: 管群の各加熱管のフィン迎角の組み合わせが,管平均熱伝達率および試験部圧力損失に及ぼす影響を検討した.管群の平均熱伝達率は,迎角の組み合わせに影響を受けるが,圧力損失に関しては,主流方向に垂直な面に対するフィンの投影面積が,加熱円管のそれを越えないフィン幅と迎角の組み合わせに対してはほとんど変化しないことがわかった.各加熱管の平均熱伝達率は,スラリー主流速度およびフィン迎角の組み合わせに対して様々な値を示し,次年度において多変量解析などにより最適解を検討するために十分な測定データが得られた. 3.数値解析の遂行および結果の検討: 粒子法を用いて加熱管群内の氷スラリーの流れ場および氷粒子の融解量の数値解析を遂行した.今年度に実施した数値解析条件範囲においても,流動状態および熱伝達率分布に関する解析結果は定性的に実験結果と同様の傾向を示すことを確認した.さらに,氷粒子の軌跡とその融解過程を辿ることにより,氷粒子の融解潜熱がどのような過程を経て利用されているかを詳細に検討することが出来た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の検討事項は,大別して,フィン付き水平加熱円管群内の氷スラリー流の融解熱伝達に及ぼす諸条件の影響に関して実験により検討を行うこと,および,粒子法を用いた数値解析により,上記の実験条件に関して数値解析を行うことである. 実験に関しては,昨年度の単一加熱円管の実験装置に改良を施し,加熱円管群の実験に拡張する用意が整い,各加熱管のフィン迎角の組み合わせに対して個々の加熱管の平均熱伝達率,および試験部の圧力損失に関して実験結果を得ることが出来た.さらに,数値解析に関しては,粒子法の一つであるMPS法を用いて,加熱管群の個々の加熱管のフィン迎角を変化させた場合の加熱円管周りの氷スラリーの流動挙動に関してシミュレーションを実施した.本研究期間(3年間)を通じての到達目標である,加熱管群に対する各迎角の最適組み合わせ条件を見出すには,多くの因子が現象に影響しており,実験条件の組み合わせをすべて検討して最適条件を見出すには,多大な時間を要する.従って,数値解析を援用して最適フィン迎角配置に関する検討を行う方法が確立できたことは,本研究の目的に対して良好な見通しを与えるものである.さらに,数値解析により氷粒子の軌跡とその融解過程を辿り,氷粒子の融解潜熱がどのような過程を経て利用されているかを詳細に検討することが出来た.本年度は,実験および数値解析の両面においてほぼ当初計画の通り遂行することができ,問題点に関する確認・検討とともに次年度(最終年度)に追加実施が必要な事項の確認を行った.従って,現時点において本研究は概ね計画通り進捗していると評価される.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,本研究計画の最終年度であり,これまでの成果を反映させて流動条件の変動に適応する最適化機構の構築および総合評価と報告を行う.本研究期間を通じての目標は,『迎角を有するフィン付き加熱管群周りの氷スラリーの融解伝熱における各管の迎角の組み合わせの最適条件』を見いだすことであり,実験および解析の両方から目的を達成すべく研究を推進する. 1.追加実験および数値解析の実施:平成29年度および30年度において実施した実験結果を,単管および管群の場合につき整理・評価し,各伝熱管に設置したフィンがその迎角と流れの状態により,スラリー中の氷粒子の融解にどのような影響を与えるのかを現象の観点から明らかにする.また,必要に応じて追加の実験や数値解析を実施する. 2.フィン迎角の最適制御機構の構築:これまでの成果から得られた最適迎角配置に対して,スラリー流の流量や氷粒子数密度などの変動が予想されるが,かかる変動に対して最適な角度調整を行う最適制御機機構の構築を行う.本実験装置試験部に関しては,計画当初よりステップモータにて各伝熱管の回転角度を制御する機構を組み込むことを想定した構造設計をしており,平成29年度および30年度の実験および解析で構築した氷スラリーの融解伝熱モデルとその解析結果に制御機構および最適制御理論を取り入れることにより,条件変動に対して最大の潜熱利用率を与えるよう各伝熱管のフィンの迎角の組み合わせを最適に制御することを試行する.また,氷スラリーの流入条件に変動を付与して,構成した制御機構が様々な条件に対して有効な動作をすることを確認する. 3.研究結果の総括および成果の公表・報告の作成:研究期間全体で得られた知見などを総合し,本研究成果を公表するとともに最終報告の作成を行う.
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Causes of Carryover |
消耗品費の節減により次年度使用額が発生したが,当該残額は次年度の実験・解析の遂行における消耗品費として有効に利用する予定である.
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