2017 Fiscal Year Research-status Report
複合外力を受ける速度・温度非相似乱流場の熱伝達構造の解明と現象モデルの再構築
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17K06195
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
服部 博文 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 技術職員 (30467352)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 乱流境界層 / 乱流熱伝達 / 複合外力 / 壁面温度境界条件変化 / 乱流熱伝達モデル / 直接数値シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,乱流境界層について,浮力や圧力勾配等が重畳するために複合外力を受け,なおかつ,速度境界層と温度境界層が非相似乱流場となった時の,乱流熱伝達構造や統計量の変化を高精度数値解法である直接数値シミュレーション(DNS)を用いて解明することと,その複合外力を受ける非相似乱流熱伝達場を予測する現象モデルを再構築する研究である.平成29年度は,主に次の5つのテーマについて研究を行い,それぞれについて以下の成果を得た. (1)壁面熱的境界条件を流路途中で加熱壁を断熱することによって急激に変化させた,逆圧力勾配を伴う共存対流乱流境界層について,浮力に影響する壁温と主流温度差も変化させた時の乱流統計量と熱伝達構造の変化を解析し,構造変化の原因を明らかにした.(2)自由せん断乱流場と境界層が複合する壁面噴流乱流場の速度場に,温度助走区間の付加に伴い発達させた,速度場の境界層部分と比較して十分に薄い温度境界層によって,速度場と温度場が非相似形となる壁面乱流噴流熱伝達場を形成させ,その基本乱流統計量の取得に成功した.(3)流れ方向と壁面垂直方向の両方に浮力が作用する乱流熱伝達場である,傾斜した加熱平板上を通過する共存対流乱流境界層の基本乱流統計量の取得と乱流熱伝達構造解析を行い,一方向にしか浮力が作用しない水平平板及び垂直平板上の共存対流熱伝達場と比較して,その乱流熱伝達場における統計量と構造の変化の原因を明らかにした.(4)様々な高さの2次元丘を通過する共存対流乱流境界層について,基本乱流統計量の取得や乱流熱伝達構造の変化を観察すると共に,丘周りの乱流状態が丘後方の再循環領域に与える影響について調査した.(5)複雑な乱流熱伝達場について,種々の乱流熱伝達モデルを用いて予測解析を行うことによって得た乱流熱伝達モデルの改良指針を基に,新たなマルチタイムスケール乱流熱伝達モデルの構築を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は,研究計画にある「非相似場を伴う乱流境界層熱伝達のシミュレーション」について,(1)温度助走区間を伴う壁面噴流乱流場,(2)傾斜した加熱平板上を通過する共存対流乱流境界層,(3)様々な高さの2次元丘を通過する共存対流乱流境界層のシミュレーションを行い,それぞれについて,高次統計量を含めた基本乱流統計量を取得することに成功した.また,乱流熱伝達構造解析事例として,ある基点から離れた距離にある地点との乱流量の空間相関値を取得することによって,乱流境界層内の上流の熱伝達状態が下流にどのように影響しているかを調べたことや,乱流熱伝達構造の可視化による詳細な現象変化観察などを行うことによって,有意な結果を得ることが出来た. 次に「単一外力と非相似場を伴う乱流境界層熱伝達場のシミュレーション」について,壁面熱的境界条件を急激に変化させた逆圧力勾配を伴う共存対流乱流境界層のシミュレーションを行い,単一外力の場合も含めた複合外力の場合の乱流熱伝達構造解析も行えたことから,研究計画以上の進展があったと考える. また,これらのシミュレーションから創出されたデータを基に,上述の乱流熱伝達構造解析事例にあるように,高次統計量を含めた基本乱流統計量の取得や乱流熱伝達構造の可視化による現象観察など,「現象の検証」も十分に行え,次年度に向けた研究の推進方策をより良い方向に向けることが出来ると判断した.さらに平成30年度の研究計画としていた「RANS モデルとLES モデルの評価」や「現象予測数理モデルの構築」について,RANSモデルの予測性能評価に留まったが,複雑な乱流熱伝達場について,種々の乱流熱伝達モデルを用いて予測解析を行うことによって得たモデルの改良指針を基に,新たなマルチタイムスケール乱流熱伝達モデルの構築を行うこともできた. これらの理由から,当初の計画以上に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度が当初の計画以上に研究が進展していることから,今後の研究の推進方策として,研究計画にある「複合外力と非相似場を伴う乱流境界層熱伝達場のシミュレーション」については,様々な解析手法を用いて,さらに詳細な乱流熱伝達構造を調査することとする. また「RANS モデルとLES モデルの評価」については,平成29年度にRANモデルの評価を進展させたことから,平成30年度以降はLESモデルの評価に重点に置く.「現象予測数理モデルの構築」については,新たなマルチタイムスケール乱流熱伝達モデルを平成29年度に構築したが,このモデルは厳密な壁面境界条件を設定できるモデル,すなわち「低レイノルズ形乱流モデル」である.実用的な乱流熱伝達計算では,計算格子点数が節約できる仮想的な壁面境界条件を用いる「高レイノルズ形乱流モデル」がまだまだ有意であり,多く用いられている.そのため,現象予測数理モデルの構築に関する今後の研究の推進方策としては,構築したマルチタイムスケール乱流熱伝達モデルを「高レイノルズ形乱流モデル」に適用させるべく改良を施すことにする.その場合,仮想的な壁面境界条件が本研究の一主題である「複合外力を受ける速度・温度非相似乱流場」においてどのように変化するのかを調査する必要があるため,平成29年度に行ったシミュレーション結果からその変化を調べ,「高レイノルズ形乱流モデル」の構築研究へと繋げる.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は,旅費の支出が少なかったためである.この次年度使用額については,平成29年度に行った大規模計算により算出されたデータを保管する大容量ストレージサーバーに不足が生じているため,平成30年度予算に加えて,サーバー増強の購入予算に充てる.
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Research Products
(15 results)