2018 Fiscal Year Research-status Report
Study on Flow Boiling Heat Transfer and Critical Heat flux of Seawater with Deposited Sea Salt
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17K06216
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
小泉 安郎 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 客員研究員 (20215156)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
劉 維 九州大学, 工学研究院, 准教授 (70446417)
上澤 伸一郎 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究職 (80737073)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 流動沸騰熱伝達 / 限界熱流束 / 海水 / 塩 / 福島原子力発電所事故 / 熱工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
出口圧力0.1 MPa下、海水を用いて流動沸騰熱伝達実験を行う。人工海水を1 %~30 %の範囲で濃度を変えて実験を行う。これにより、塩析出物を伴う場合の流動沸騰熱伝達と限界熱流束整理式の導出を図る。 既設の純水用流動沸騰熱伝達実験装置の耐腐食性向上を実施した。 次に、テスト部の制作を行った。伝熱面テスト部は銅製で逆T字型をしている。ベース部には400 W加熱ヒーター6本を差し込む。逆T字の縦棒部分には、高さ方向3箇所、流れ方向4箇所、計12箇所に熱電対を設置する。銅製伝熱面の巾は10 mm、流れ方向長さは50 mmである。この銅製伝熱面テスト部を下方からガラスエポキシ製流路底面板に伝熱面が流路底面と同一平面になるよう差し込む。この流路底面板の上に、厚さ3.0 mmのステンレス板を載せる。ステンレス板中央には、巾10 mm、長さ316 mmのスリットが開けられている。ステンレス板の上に透明ポリカーボネイト製流路上面板を載せ、流路底面板とこの流路上面板をボルト-ナットで固定し、試験部は完成する。ステンレス板のスリット部が高さ3.0 mm、巾10 mm、長さ316 mmの試験部流路になる。伝熱面熱流束は縦方向3本の熱電対測定値から算出する。また、伝熱面表面温度は縦方向熱電対測定値を外挿して求める。試験部入り口と出口で試験液温度と圧力を、また、試験部入り口出口間圧力損失を測定する。 テスト部完成後装置に組み込み、通水試験を行い、問題無く流動することを確認した。塩水濃度が低い3.5%実験では、高熱流束まで限界熱流束発生状態には至らず、従来の水流動沸騰熱伝達と同様な状況であることを確認した。一方、10%濃度海水実験では、水流動沸騰に比し、低い熱流束で緩やかな壁温上昇が開始し、プール沸騰の場合と同様な塩析出が伴う場合の特有な限界熱流束現象発生を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は順調に進んでいる。 実験では既設のテストループを一部改造して使用することにしていた。本研究では海水を試験対象流体としており、耐腐食性をあげておく必要があった。このため、既設ループで腐食に対して弱い部分の手直しをし、この問題を解消した。次いで、試験で使う試験部の設計と作成を行った。完成したテスト部を試験ループに取り付け、試験通水を行い、問題無いことを確認した。これまで実施した海水流動沸騰熱伝達実験で、当初想定していた現象を確認することができている。以前に実施していたプール沸騰海水熱伝達実験の経験、また、これまで研究代表者及び研究分担者が身につけてきた研究経験から、実験実施、解析体制には問題が無い。
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Strategy for Future Research Activity |
準備の整った装置、試験体を用いて、実験を実施する。 (1) まずもって大切な装置の特性確認を充分に行う。これ無しでは本来研究の結果の解析ができない。これまで取得した測定データーの上積みを図り、充実させる。純水を用いて、常温水の水単相流圧力損失実験を行う。次いで、純水常温水の水単相流熱伝達実験を行う。これらを確認した後、純水を用いて、試験部入り口条件を飽和温度近くまで昇温した状態にし、沸騰流熱伝達実験を行い、沸騰二相流の圧力損失特性、沸騰熱伝達特性、限界熱流束の把握を行う。 (2) 試験流体に人工海水を用いて流動沸騰熱伝達ならびに限界熱流束測定実験を行う。人工海水は市販の人工海水用粉末を純水に溶かして生成する。人工海水用粉末は、真水に溶かした場合に天然海水中の主要組成を模擬できるよう調整されている。天然海水のNaCl重量割合は3.5 %である。このNaCl濃度を基本指標として、NaCl重量割合が1~30 wt%の範囲で実験は行う。実験では、高速度カメラを使用し、沸騰状況の観察、塩析出状況、析出の成長状況の可視化を行う。 (3) 現在の試験部の流路高さは3 mmである。流路高さを1 mm、5 mm及び10 mmの装置を作成し、同様に人工海水を用いて流動沸騰熱伝達ならびに限界熱流束測定実験を行い、流路口径の違いが減少に及ぼす影響を把握する。試験部流路高さ変更は試験部に挟み込むスリット付きステンレス板厚さを変える事により容易に行える。 (4) 以上を基に、塩析出物を伴う場合の流動沸騰熱伝達と限界熱流束整理式の導出を図る。
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Causes of Carryover |
H30年度は、H29年度に作成した試験体に加えて新たに流路の高さを変えた試験体を3体作成し実験領域を広げる予定であったが、計画を変更して、新たな試験部作成に進む前に、H29年度に作成した流路高さ3mmの試験部を用いて、装置の特性試験の充実と目標とする海水流動沸騰の基本現象把握を優先することとした。新たな試験部作成を行わなかったことにより、当初計画に比べて少ない支出とり、次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、H31年度経費と合わせて、残りの試験部の製作等に係る費用として使用する。
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