2018 Fiscal Year Research-status Report
均質化とトポロジー最適化を援用した多孔質吸音材微視構造設計法の構築
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17K06238
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
山本 崇史 工学院大学, 工学部, 准教授 (30613640)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 吸音材 / 微視構造 / 均質化 / トポロジー最適化 / 吸音率 / 散逸エネルギー / 随伴変数法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度に構築した吸音材微視構造の寸法最適化法を,特徴的な微視構造を有する多孔質吸音材料に適用し,その有用性を検証した.アルミ微粒子を焼結させた金属多孔質吸音材に適用し,粒子径分布,空孔率はμX線CTで撮像した画像を解析して同定し,面心立方格子状に粒子を配置することでおおむね特性を再現した.また,次世代の軽量高機能吸音材料として注目されているナノファイバー吸音材に適用し,通常の繊維材料と同様の微視構造モデルを構築することで,吸音率実測値と良く一致した.なお,本検討は東京工業大学物質理工学院の赤坂修一助教と共同ですすめている.さらに,自動車の積層型防音材料の構成要素である多孔シートに適用した.孔のピッチが5 mmと広く,均質化法の適用可能周波数範囲が狭くなるものの,実験値と比較して良い一致が得られ,孔の大きさ・ピッチを適正化した.なお,本検討に必要な材料は共同研究先企業に試作いただいた. 吸音材微視構造のマルチスケールトポロジー最適化については,マクロスケールにおける材料分布は固定し,材料微視構造のトポロジー最適化を検討した.目的関数には,吸音材の代表特性である吸音率と等価であり,かつトポロジー最適化において扱いやすい,散逸エネルギーの領域積分値を用いた.トポロジー最適化では,従来,随伴変数法を用いて目的関数の設計感度を求めており,その場合,材料特性の設計感度が必要になる.本研究で対象としているマルチスケールトポロジー最適化では設計変数をミクロスケールで定義しており,均質化材料特性の設計感度を陽に求めることができない.ここでは,均質化材料特性の設計感度を,ミクロスケールにおいて随伴変数法を適用し求める手法を新たに構築した.多孔質吸音材は固体相・流体相が混在する二相材料であるため,各相の均質化特性,および両相の連成に関わる特性について随伴方程式を導出した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度に構築した吸音材微視構造の寸法最適化法は,均質化法とBiotのモデルを併用し任意の微視構造に適用できる汎用性のある手法になったことで,当初の計画よりも多種多様な多孔質吸音材に応用することができている.一部の多孔質材料は共同研究を実施している企業からの要望にもとづくものであり,本解析技術が有用であることを示していると考えている.また,あわせて多様な多孔質材料を入手することができ,実材料の微視構造の特徴や特性を反映したユニットセルモデルを構築することができた点も当初の計画より進展があった点であると考えている. 吸音材微視構造のマルチスケールトポロジー最適化については,目的関数がマクロスケールにおいて定義されている一方,設計変数はミクロスケールにおいて定義されており,スケールをまたいで設計感度を求める必要があるという点において従来のトポロジー最適化とは異なり,感度解析の構築に多少の時間を要した.しかし,ミクロスケールとマクロスケールをつなぐ均質化特性の設計感度を,随伴変数法により求める手法としたことで,統一性および一般性のある方法論とすることができた.それにより,固体相の均質化弾性テンソルに加えて,流体相の均質化体積弾性率,均質化密度,および両相の連成に関わる特性についても,随伴変数法を用いて同様に求めることができた.なお,固体相の均質化弾性テンソルの設計感度を求める随伴方程式は自己随伴であるが,その他の特性については非自己随伴であり随伴方程式をそれぞれ新たに導出している.
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度に構築した吸音材微視構造の寸法最適化法は,これまで検討できていない特徴的な微視構造を有する多孔質吸音材に適用を拡大する.まずは,ディーゼルエンジン自動車の排気浄化に使用されているセラミック多孔質材料に適用することを予定しており,性能評価指標として新たに音響透過損失を考え検討する性能領域も拡大する.なお,材料試作検証はこれまで同様,企業との共同研究などを通じて検討する. また,2019年7月から,広島県,広島大学および広島県内の主要製造企業が進める内閣府地方創生プロジェクト(ひろしまものづくりデジタルイノベーション創出プログラム,~2022年)において,本研究課題の代表者の参画が内定しており,本研究課題で構築してきた解析手法の汎用化と機能拡張を図る.現在シェルスクリプトによりプログラムの動作を制御しているが,GUIインターフェースを構築し,汎用化および一般化を図る. また,現在,自動車の防音材・内装材の設計において不可欠となっている,遮音性・吸音性と断熱性の両立検討に対応するため,熱伝導・熱伝達特性の均質化解析機能を追加する. 吸音材微視構造のマルチスケールトポロジー最適化については,微視構造のトポロジーのみを最適する場合の数値検証をすすめるとともに,吸音材の微視構造と巨視的な配置を同時に最適化することも検討する.
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Causes of Carryover |
今年度の直接経費800,000円に対し,695,616円を執行した.直接経費の約13%に相当する104,384円の残額が発生してはいるがおおむね計画どおりに研究費を執行できたと考えている.平成30年度の残額は,平成31年度に計画している消耗品費や旅費などが不足した場合に充当する.
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