2017 Fiscal Year Research-status Report
市街地運転支援のための潜在的危険要因の行動予測に基づく経路計画システムの構築
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17K06252
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
赤木 康宏 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (90451989)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 運転支援 / 交通事故予測 / オントロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は「典型事故事例辞書の構築」および、交通シミュレーションによる「事故回避モデルの検証」を実施した。典型事故事例辞書の構築法として、事故につながる危険場面を約13万件収録したヒヤリハットデータベースに含まれる、事故事例を記述するためのアノテーションデータを交通オントロジーモデルにより表現する方式を開発した。本交通オントロジーモデルに対して、事故事例を検索するための方式およびシステムを実装することで、車両の右左折などの主体的な運転行動を入力することで、事故を生じさせる対象者の種別と行動の出現頻度を1ミリ秒以下で検索することを可能にした。これは、走行中の車両上の計算機により、今後発生する事故を予測する機能を実現するために十分な速度である。また、本交通オントロジーモデルに基づき前述のヒヤリハットデータベースのデータベース構造を改修し、特に、交通参加者の行動を「単路から交差点に進入した」等の時系列で記述する方式(従来は「交差点で発生した」という地点情報のみ)に改めることで、事故事例の説明能力を向上させることに成功した。 事故回避モデルの検証では、「先行車追従」「対向車道譲り」「駐車車両追越し」「交差点停止」「交差点通過」「交差点右左折」の7種の場面に対応する、理論的事故回避ドライバモデルを設計し、交通シミュレータ上で本モデルの評価試験を実施した。具体的には、実存する市街地の総延長4kmの地図情報(道路ネットワーク)を用いて、40台の仮想車両を用いたシミュレーションを実施した。その結果、試験開始から200時間、事故を生じさせることなく走行を継続することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
典型事故事例辞書の構築に関しては、事故事例を高速に検索するシステムを実装し、リアルタイムに事故の発生頻度を集計できることが確認できた。これは、年度当初計画で示した、事故全体の95%をカバーする事故場面に該当するかどうかを識別するシステムに相当するものであり、目標を達成できた。本システムの実現にあたり、ヒヤリハットデータベースに含まれるアノテーションデータを交通オントロジーモデルに変換し、新たなデータベースシステムの開発を実施できたことから、交通オントロジーモデルの妥当性を検証できたものと考える。 事故回避モデルの検証では、前述した7種の運転場面に対して、理論的事故回避ドライバモデルを設計し、シミュレーション試験により200時間事故を生じさせないことが確認できたことから、目標を達成できたと考える。ただし、歩行者や自転車といった市街地運転時に重要となる対象者のモデル化に関しては、平成30年度に行う「リスク顕在化予測手法」を実装する必要があり、試験対象にできていない。シミュレーションシステムの実装は完了していることから、リスク顕在化予測手法の構築により、より現実に近い試験環境でのシミュレーション試験を速やかに実施できる見込みであり、研究の実施に支障はない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度に行う研究では、ドライブレコーダにより500時間以上の市街地運転行動データを収集する計画が含まれている。本データ収集には数か月の期間を要することが予測されるので、平成30年3月末より8台の車両に対してデータ収集機器を設置し、データ収集開始している。これにより、平成30年7月末までにはデータの収集、および、交通オントロジーモデルに基づくアノテーション作業が完了する見込みである。 次に、「リスク顕在化予測手法の構築」では、既存のヒヤリハットデータベース、および、上記で述べた新規運転行動データを用いて、「飛び出しを行う歩行者」や「急な進路変更を行う車両」といった、事故発生の要因となる行動を起こしてしまうドライバの意思決定をモデル化する試みを行う。その際に、マルコフ決定過程モデルを用いた新たなドライモデルを構築する計画を立てている。平成29年度中に、マルコフ決定過程モデルに基づくドライモデルは自動運転システムに対する応用などが学会等で発表されており、事故を起こしてしまう人間の行動を記述する方法としても妥当であるという当初の設計に疑義は生じていない。また、マルコフ決定過程モデルを用いた運転行動記述の研究は進展していることから、これらの知見を用いて研究を効率的に行うことができると考えられる。
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Causes of Carryover |
基金化により不急な物品等を購入し残額をゼロに合わせる必要がなくなったために残額が生じた。また、平成29年度に行った研究成果の発表(投稿)に関わる旅費等が平成30年度に予定されているので、次年度使用額はこれに充てる予定である。
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