2017 Fiscal Year Research-status Report
電極表面の汚損分布イメージング表面分析による真空絶縁破壊メカニズムの解明
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17K06293
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
山納 康 埼玉大学, 情報メディア基盤センター, 准教授 (30323380)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 真空ギャップ / 放電 / 絶縁破壊 / 汚損 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、電極表面の汚損状態分布と真空ギャップの耐電圧の関係を明らかにすることである。一般的に真空ギャップに高電圧を印加すると、繰り返し絶縁破壊や放電によって耐電圧が向上するコンディショニング効果が見られる。このコンディショニング効果は、電極上の突起と異物の影響の他に、そして表面汚損が原因として考えられている。本研究では、電極上の表面汚損に注目して、先ずはコンディショニング過程における汚損状態の変化と耐電圧の影響について調査した。 真空中において繰り返し絶縁破壊試験を実施するとともに、同一真空環境下でXPSの表面分析を試験前と繰り返し絶縁破壊試験の途中で分析を行った。その結果、繰り返し絶縁破壊によるコンディショニング過程の最初の微小放電の発生もしく微小放電に起因する絶縁破壊の発生によって、電極の初期には汚損物質はほぼ除去され、純粋な無酸素銅の表面が現れていることが明らかになった。放電回数は、微小放電が100回から150回程度で絶縁破壊は10回から20回程度である。繰り返し絶縁破壊を更に繰り返すと、絶縁破壊電界は更に上昇し、絶縁破壊回数が数百回(500回以上)で絶縁破壊電界が飽和した。絶縁破壊電界が飽和した後のXPS表面分析の結果は、純粋な銅のスペクトルが得られており、汚損物質は確認できなかった。 更に詳しく電極の汚損状態変化を調査したところ、陰極側においては、初期の10回程度の放電によって電極中心の汚損は数分の1に低下し、50回程度の放電でさらに低下していた。一方、陽極側は、初期の放電によって陰極と同様に汚損は数分の1に低下したが、その後の放電によっては汚損がやや増加傾向を示すことが分かった。更に放電や絶縁破壊を繰り返すと、最終的には陰極、陽極共にほとんど汚損が存在しない純粋な銅のスペクトルが得られた。以上より、コンディショニング過程の電極汚損状態を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
真空中で繰返し放電や絶縁破壊をさせコンディショニング効果による電極表面のクリーニング効果が見られ、コンディショニング過程において、電極の表面汚損は徐々に減少していくことを実験的に明らかにした。最終的な電極の表面状態は極めて清浄な表面状態となった。試験電極を準備し、試験前の電極の表面汚損分布の測定を行うことはできており、定量的な汚損状態を確認することはできている。この電極を真空絶縁破壊の装置に輸送し、試験を行う予定である。そのための輸送ベッセルを準備中である。電極表面の全体もしくは一部をアルゴンイオンのエッチング処理により清浄化させることも確認しており、電極の汚損状態を変えて実験を行うことも確認している。
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Strategy for Future Research Activity |
真空環境下での絶縁破壊試験と表面分析を一貫して行うため、輸送用の真空ベッセルで供試試料を大気に曝すことなく移動させ、真空中で電極表面の汚損分布を把握しながら、その電極の耐電圧性能を測定する。電極は球タイプで実験を行い、コンディショニング過程における球の中心からの汚損分布を調査する。代表的な電極材である無酸素銅電極の表面には主にカーボンと酸素の化合物が存在しており、これらの分布を取得する。アルゴンイオンによりエッチング処理を施し、試料表面の清浄化を行い、汚損状態を変えて試験を行う。 汚損の評価としては、純銅電極であることからスペクトルピーク比で評価することで汚損状態を定量化することを試みる。 陰極と陽極のコンディショニング過程における電極の汚損状態の変化のメカニズムについて汚損状態を変えてより詳細に調査を行う。
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Causes of Carryover |
超高真空中絶縁破壊試験・表面分析一貫試験装置の電極導入部の故障とその修理により、真空中で電極を輸送するため真空ベッセルの準備に遅れが生じている。昨年度に計画された真空ベッセルの準備を行う。
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