2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K06296
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
根尾 陽一郎 静岡大学, 電子工学研究所, 准教授 (50312674)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | ホトカソード / アルカリ光電面 / 量子効率 / スミスパーセル超放射 / マルチアルカリ光電面 / バイアルカリ光電面 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は,アルカリ金属光電面の形成条件の確立を主な目的として実験を遂行した.本研究で必要となる光電面は,ピコ秒程度の高速応答性,高い量子効率を有する事が求められる.またスミスパーセル超放射用電子源として高強度のパルス光に対する耐久性も必要となる.そこで本研究ではアルカリ金属光電面の選択した.中でもフェムト秒レーザーの二倍波に最も感度のあるバイアルカリ光電面(K-Cs-Sb)が最適と判断しその形成を行なった. 超高真空中で表面の清浄化を行なったITO付きガラスにアンチモン(Sb)を堆積する.その後カリウム(K)を堆積・合金化を行い,続いてセシウム(Cs)の堆積・合金化を完了する.第1段階のK-Sb形成に重要なプロセスがある事を見出した.本研究の特色の一つとして,堆積・合金化の過程の詳細を評価する為に,in-situで膜厚測定,分光量子効率測定,透過/吸収スペクトル分光,放出電流測定が可能となっている.光源には405nmレーザー,ハロゲンランプ,キセノンランプ分光光源,検出器には分光器,ホトダイオードが切り替え可能である.また放射電流はコレクタ-基板間に400V印加して測定をしている.K-Sb形成過程において,基板温度を100度~200度で評価したところ,光電面の色が異なる事が明らかとなった.これは透過スペクトルにおいて、700nm程度の長波長側の透過率の違いにあわられている.また形成途中に光励起電流が2回の上昇と下降を繰り返す事を見出した.1回目では透過光強度に変化はなく,2回目では吸収が大きくなる.分光特性や光電面の色により,理想的なK-Sb(六方晶)は2回目の変化で形成されている事が明らかとなった.この後,Csを堆積・合金化した所,モノアルカリ光電面(K-Sb)の量子効率20%に迫る結果を得ることが出来た.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理想的なバイアルカリ光電面の形成が難航したことが原因である.当初モノアルカリ光電面から開始したが,順調に量子効率20%を達成した為,バイアルカリ光電面形成に必要な時間を短く見積もった為である.またアルカリ光電面は光電子放出を長時間行なうと性能が劣化する事がある.この為,理想的な光電面形成に拘った.処理過程を厳密に評価する為に,スミスパーセル超放射光装置とは別に,光電面形成用の実験装置を準備し,in-situで詳細な評価を可能ための準備等に時間を費やした.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はバイアルカリ光電面の形成条件は確立しつつある為,ビーム診断に移行する予定である.すでに放射光と電子銃準備室を一体化した実験装置,フェムト秒レーザーを等間隔で分割する光路差ディレイ回路も準備を完了している.早急に排気装置に接続して実験装置の立ちあげを行なう.その後、新しい光電面準備室でのバイアルカリ光電面形成の再現性を確認をした後に、フェムト秒,パルス列の入射を行い光電面からの光放射電流のプロファイル(光応答性,収束性)を確認する.その後に放射光(コヒーレント放射,超放射)を実施する予定である.
|