2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K06303
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山田 和正 九州大学, 理学研究院, 助教 (30380562)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 導電性高分子 / ゼーベック |
Outline of Annual Research Achievements |
モバイルコンピューティングおよびユビキタス社会実現のために、温度差を利用した環境発電が期待されている。その一つ方法としてスピンを利用した無機スピンゼーベック素子が作成された。本申請にて、無機材料に替えて有機半導体ペンタセンおよび有機導電性高分子をスピン伝導層として使用する有機熱スピン注入によるゼーベック素子を提案する。有機はスピン緩和長が長く、よくスピン流を伝達するこができる。有機膜を使うことで、重金属などの使用を減らし、環境負荷を下げることができる。単純な膜構造で電圧を稼ぐことができ、フレキシブルでどこにでも貼り付けて発電することが可能になる。 本年度は、有機蒸着用の改良を行った。クヌーセンセルを購入し、蒸着装置に導入した。水晶膜厚計を購入し、蒸着装置に導入した。有機を蒸着し、水晶膜厚計で有機膜厚の測定を行った。有機膜の成膜条件を調べた。これらの装置の立ち上げにより有機スピンゼーベック素子の作成が可能になった。 まず、準備として有機を使わず磁性体と非磁性金属の2重膜からなる磁性体のみからなる異常ネルンスト効果用の素子を作成し、測定を行った。強磁性体中で見られる熱電効果の一つとして、熱のホール効果に対応する異常ネルンスト効果がある。この現象の微視的起源は、現在も論争中ではあるが、スピン流からホール電圧を発生させることに対応しているため、熱により効果的にスピン流を発生できる物質を用いれば、より大きな異常ネルンスト電圧の発生が期待される。 有機導電性高分子の移動度は、有機スピンゼーベック素子の作成のため重要なパラメータである。有機導電性高分子の移動度に関する解析を行った。移動度の温度依存性がポーラロン伝導モデルで説明可能であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有機蒸着用のクヌーセンセルを購入し、既存の蒸着装置に導入した。ペンタセンやAlq3などの有機材料は、高温で劣化しやすい。このクヌーセンセルにより蒸着源の温度コントロールが可能になり、良好な有機膜の成膜が可能になった。以前は有機蒸着装置に膜厚計はなく、蒸着中に膜厚を測ることはできなかった。水晶膜厚計を購入し、有機蒸着装置に導入した。蒸着中に膜圧の測定が可能になった。有機物をシリコン基盤に蒸着し、有機膜を作成し、膜厚の測定を行った。段差計と水晶膜圧計の測定結果の比較を行った。真空度や蒸着速度など成膜条件を調べた。 有機スピンゼーベック素子作成の準備として、磁性金属(FM)と常磁性金属(NM)の2重膜からなる異常ネルンスト(ANE)効果用の素子を作成した。具体的には、表面酸化されたシリコン基盤上に、FMとしてパーマロイ, CoFeBおよびCoFeAlを、NMとしてPtをスパッタし、ホールバー構造を作成した。交流電流を印可すると、熱は基盤に逃げるため、面直方向に温度勾配∇Tができる。温度勾配と面内方向の磁化よりANE電圧が生じる。面内磁場を掃引し、2nd harmonic lock-in技術によりANEの電圧を測定した。この素子の異常ネルンスト効果の測定を行った。実験結果を学会発表した。 本研究費が決まったときには締め切りを過ぎていたので、実験室を借りることはできなかった。来年度、実験室を借りるように手続きを行った。 有機導電性高分子の移動度は、有機スピンゼーベック素子の作成のため重要である。有機電性高分子の移動度に関する解析を行った。移動度の温度依存性がポーラロン伝導モデルで説明可能であることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
再び、有機蒸着装置の立ち上げを行う計画である。そのため、膜厚モニター等の各種部品を購入し、蒸着装置の再整備を行い、有機膜を成膜するための各種の条件出しを行う予定である。 昨年度作成した磁性体と非磁性金属の2層膜からネルンスト効果用の素子を発展させ、有機層を追加して3層膜からなる有機スピンゼーベック素子の作成を行う計画である。熱伝導率の低い有機層をスピン伝導層として追加することにより、熱伝導を減らし、発電能の高性能化が可能になると期待される。作成した有機スピンゼーベック素子の評価を行う計画である。昨年度作成した有機層のない2層膜との比較および、有機層の厚さに依存性も調べる計画である。この実験により有機中におけるスピンの緩和長および緩和機構を調べることができる。 来年度、実験室を借りるよう手続き済みである。この実験室の整備を行う予定である。 昨年度の導電性高分子の移動度の解析結果を利用し、有機スピンゼーベック素子の改良を行う。
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Causes of Carryover |
蒸着装置のために膜厚モニター等の購入を予定していたが、本年度は既存のものを使用した。次年度で膜厚モニター等を購入し、蒸着装置に取り付ける予定である。 学会の旅費は他の経費を使用した。次年度で学会発表を行う計画である。実験室の借り上げを行う予定であったが、本年度借り上げができなかった。来年度、借り上げを行うべく手続きを行った。
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Research Products
(2 results)