2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K06303
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山田 和正 九州大学, 理学研究院, 助教 (30380562)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | スピンギャップレス / ネルンスト |
Outline of Annual Research Achievements |
最近、発見されたスピンギャップレス半導体は、スピン偏極率が高く、電気抵抗が大きい。従来から、スピン偏極率が高い材料としてハーフメタルがあるが、その電気抵抗率は小さく熱伝導率は大きい。スピンギャップレス半導体は熱伝導率がハーフメタルより小さいと期待される。 有機スピンゼーベック素子の磁性層として、スピンギャップレス半導体が好ましいことが期待される。 本年度、この分野で著名な英国ヨーク大学に滞在し、高真空スパッタによりスピンギャップレス半導体CoFeMnSiを成膜に関する研究を行った。スパッタ速度や基盤温度の調整を行い、成膜条件の最適化を行った。膜の評価のため、X線回折による構造解析やVSMやSQIUDによる磁化測定を行った。室温で成膜したCoFeMnSiには、ホイスラー構造に起因する回析ピークは得られず、結晶性がよくないこと、キュリー点が低いことが分かった。成膜後に加熱しても、膜質は変わらなかった。スパッタ中に基盤加熱すると、ホイスラー構造に起因するXRD回析ピーク(220)が得られ、結晶性が向上すること、キュリー温度が増加することが分かった。成膜したCoFeMnSiをホールバー構造に微細加工し、プレーナーホール効果の角度依存性および温度依存性の測定を行った。プレーナーホール効果は磁気抵抗の異方性によって生じる。基盤加熱していない膜では、磁気の係数は正だが、基盤加熱し結晶化した膜に、プレーナーホール効果の符号が負であることが分かった。負の符号は、s-d散乱において、スピン反転の散乱が少ないことを示し、マイノリティースピンのギャップが開き、スピン偏極率が高いことを示唆する。この成果を国際会議MMM2019にて発表した。プレーナーホール効果の結果から、CoFeMnSiのスピン流生成効率が高く、スピンゼーベック素子として高性能が期待されることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最近発見されたスピンギャップレス半導体は、スピン偏極率が高く、電気抵抗率が大きい。したがって、熱伝導率が小さく、熱を伝えにくいと考えられる。 有機スピンゼーベック素子の磁性層として、スピンギャップレス半導体を使うことが好ましいことが判明した。 申請当初の計画を変更し、2019年度にこの分野で著名な英国ヨーク大学に滞在し、スピンギャップレス半導体CoFeMnSiを成膜した。2019年度は、ほぼ海外に滞在していたのため、本研究費の執行はあまりできなかった。2020年度にCoFeMnSiを使用したスピンゼーベック素子を作成する予定である。熱電性能の向上が期待される。CoFeMnSi薄膜をホールバー構造に加工し、第二高調波測定を行い熱磁気効果すなわちネルンスト-エッティングスハウゼン効果の測定を行ったが、検出されなかった。その理由は、CoFeMnSi膜の下に熱伝導率の高い膜(ルテニウム)があるためと、ホールバーの線幅が太いため、発生した温度差が小さいためであると考えられる。膜の構造の改良が必要なことが分かったので、それを踏まえて次年度に微細加工を行う計画である。 現在までに有機膜(ペンタセン、ルブレン、PE-DOT、カーボン)およびスピンギャップレス半導体を製膜し、最適な条件を調べている。また、昨年度までにNiFeやCoFeAl等の磁性体をホールバー構造に微細加工し、ネルスト効果の測定も完了している。
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Strategy for Future Research Activity |
ペンタセン膜およびカーボン膜およびスピンギャップレス半導体の成膜およびその条件出しは終了したので、それを踏まえて、それらの膜をクロスバー構造に微細加工を行い、カーボン膜をスピン流伝導層として、強磁性層としてスピンギャップレス半導体を用いた利用した有機スピンゼーベック素子の作成を行う予定である。第二高調波測定を行いスピンゼーベック効果の検出を行い、その素子の評価を行う計画である。それぞれ高性能な熱電素子としての性能が期待される。 ペンタセンやカーボンなど有機物は、軽い元素から構成されスピン緩和長が長く、よくスピン流を伝達するこができると期待される。金属より熱伝導率が小さい有機膜とスピンギャップレス半導体を使うことで、無駄な熱流を抑えることができる。有機膜を使うことで、環境負荷を下げることができる。単純な膜構造で電圧を稼ぐことができ、フレキシブルでどこにでも貼り付けて発電することが可能になる。スピンゼーベック効果の測定により、カーボン中およびスピンギャップレス半導体中のスピン流を調べ、それぞれの物質中のスピン緩和機構を明らかにする。熱は主に電子によって運ばれると考えられるので、熱伝導率は、スピンギャップレス半導体においてスピンに依存すると考えられる。いままで、スピンギャップレス半導体の熱伝導率は測定されていない。これらの実験においてスピンギャップレス半導体の熱伝導率に関する知見も得られると考えられる。スピンゼーベック効果の測定により、有機と磁性体の界面におけるスピン流の緩和を調べる。スピンカロニトロニクスの発展に大きく寄与すると期待される。
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Causes of Carryover |
最近発見されたスピンギャップレス半導体は、スピン偏極率が高く、電気抵抗が大きい。したがって、熱伝導率が小さいと考えられる。有機スピンゼーベック素子の磁性層として、スピンギャップレス半導体が好ましいことが判明した。 申請当初の計画を変更し、2019年度にこの分野で著名な英国ヨーク大学に長期間滞在し、スピンギャップレス半導体CoFeMnSiを成膜し、各種の条件出しを行った。滞在中の海外では本研究費を執行できないため、本年度の研究費使用額はすくない。2020年度にこのCoFeMnSiを使用したスピンゼーベック素子を作成し、温度差を発生させスピンゼーベック効果の測定を行う予定である。熱伝導率の小さいスピンギャップレス半導体CoFeMnSiを使用することで、熱電性能の向上が期待される。2020年度に各種の測定装置等を購入し、スピンゼーベック素子の測定を行う予定である。2020年度に使用するため、本研究費の延長申請を行った。延長により、より高性能な有機スピンゼーベック素子の創成が期待される。
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Research Products
(2 results)