2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K06303
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山田 和正 九州大学, 理学研究院, 助教 (30380562)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | スピン / ゼーベック / 有機 / カーボン |
Outline of Annual Research Achievements |
モバイルコンピューティングおよびユビキタス社会実現のために、温度差を利用した環境発電が期待されている。その一のつ方法としてスピンを利用した無機スピンゼーベック素子が考案された。本申請にて、無機材料に替えて有機半導体ペンタセンおよび有機導電性高分子をスピン伝導層として使用する有機熱スピン注入によるゼーベック素子を提案する。有機はスピン軌道相互作用が小さく、スピン流が緩和しにくく、よくスピン流を伝達するこができる。有機膜を使うことで、重金属などの使用を減らし、環境負荷を下げることができる。単純な膜構造で電圧を稼ぐことができ、フレキシブルでどこにでも貼り付けて発電することが可能になると期待される。 非晶質CoFeBを強磁性層とし、カーボンを有機伝導層、Ptをスピン流変換層とし、微細加工によりクロスバー構造を持つ有機スピンゼーベック素子を作成した。Ptの逆スピンホール効果は大きく、スピン流変換層として適している。有機スピンゼーベック素子の測定を試みたが、有機伝導層が静電破壊し、現在のところスピン信号は得られていない。 一方、スピンギャップレス半導体CoFeMnSiは熱伝導率が小さく、スピンゼーベック素子の材料として期待できる。昨年度に英国で成膜したスピンギャップレス半導体CoFeMnSiの異常ホール効果の測定を行った。異常ホール効果の温度依存性は、磁化の温度依存性とよく似たふるまいを示した。異常ホール効果に重畳する通常ホール効果を分離しキャリア密度の温度変化を求め、CoFeMnSiの基礎物性を明らかにした。CoFeMnSiは、有機スピンゼーベック素子の強磁性層として使えることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
CoFeBを磁性層とし、カーボンを有機伝導層、Ptをスピン変換層とする膜を製膜し、クロスバー構造に微細加工し、有機スピンゼーベック素子を作成した。スピン信号の検出を試みたが、有機伝導層が静電破壊し、現在のところスピン信号は得られていない。 福岡県は、COVID-19蔓延のため、緊急事態宣言対象地域に指定され、九州大学は在宅勤務推奨となり実験は遅れているので、研究助成期間の再延長を申請した。 スピンギャップレス半導体は熱伝導率が小さく、スピンゼーベック素子の材料として期待できる。昨年度に英国で成膜したスピンギャップレス半導体CoFeMnSiの異常ホール効果の測定を行った。異常ホール効果の温度依存性は、以前測定した磁化の温度依存性とよく似たふるまいを示した。CoFeMnSiの異常ホール効果が磁気モーメントを起因していることを明らかにした。さらに、異常ホール効果に重畳する通常ホール効果を分離し、キャリア密度の温度変化を求め、CoFeMnSiの基礎物性を明らかにした。データについて共同研究者と議論を行い、論文投稿を行った。CoFeMnSiは、有機スピンゼーベック素子の磁性層として使えることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度作成した有機スピンゼーベック素子を静電破壊しないように工夫し、素子構造の改良を行い。スピン信号の検出をめざす。有機伝導層として有機EL発光素子として使用されているペンタセンなども使用する計画である。有機スピン流伝導層であるカーボンやペンタセンの条件だしは終了している。 次年度で、有機熱スピン注入によるゼーベック素子を完成させる。有機膜の厚さを変化させて、有機中のスピン流の緩和長の測定も行う。有機熱スピン注入による温度差を利用した環境発電を実現する。ペンタセンやカーボンなど有機中のスピンの緩和メカニズムを理解することが期待される。 パーマロイに関するネルンスト発電を行い、すでに発表ずみである。これと同様の構造にスピンギャップレス半導体CoFeMnSiも微細加工しネルンスト発電を行う計画である。スピンギャップレス半導体は熱伝導率が小さく、従来の材料より大きなネルンスト効果が期待される。ネルンスト効果の測定により、スピンギャップレス半導体の熱伝導に関する知見も得られると期待される。
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Causes of Carryover |
福岡県は、COVID-19蔓延のため、緊急事態宣言対象地域に指定され、九州大学は在宅勤務推奨となり実験は遅れているので、研究助成期間の再延長を申請した。 本年度は、予定されていた出張や実験ができず予算を使用できなかった。 前年度作成した有機スピンゼーベック素子を静電破壊しないように工夫し、素子構造の改良を行い。スピン信号の検出をめざす。 次年度には、測定装置の購入費用、測定のための寒剤の購入費用、成果発表のための費用、論文投稿費用などが発生する予定である。
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