2019 Fiscal Year Research-status Report
活性化アルミ微粒子と水との反応を利用した非常用水素発生源の開発と燃料電池への応用
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17K06327
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Research Institution | Fukuoka Institute of Technology |
Principal Investigator |
高原 健爾 福岡工業大学, 工学部, 教授 (70292076)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前川 孝司 北九州工業高等専門学校, 生産デザイン工学科, 准教授 (00711300)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 活性化アルミニウム微粒子 / 水素発生 / 燃料電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は,反応モデルの構築で大きな進展が得られた。粒子1つのミクロ的な反応のシミュレーションのモデル基盤が構築できた。具体的には,アコースティック・エミッション(以降AE)法により,亀裂が生じた際に発生する弾性波であるAEを水素発生時に測定することができた。その結果に基づいて,水素発生のファクターと考えられるき裂進展のシミュレーションモデルを構築した。 実験では,あまり実績が得られなかった。これまでに設計した水素発生制御のファジィルールをさらに検討し,100[W]の燃料電池では,より精度良く水素発生を制御できるようになったものの,実験者の操作ミスにより発生装置の接続部等に変形・亀裂が生じ,一時的に充分な実験を行えない状況になった。一方,1[kW]燃料電池では,水素漏れが発生し,修理に時間がかかった。修理後に実験を行った。その結果,一部に改善が見られたものの,水素発生容器内の圧力が高いにも関わらず,燃料電池の出力が800[W]程度でダウンしてしまうという状況が続いている。大きな出力が得られないので,システムの検証実験が十分に行えないでいる。原因の一つとして,水素発生を増加させるために,送水量を増やすことでタンク内の温度低下が起こり,一時的に水素発生が抑制されることが確認できており,送水温度を上昇させるための方策を検討した。また,自動制御だけでなく,手動で水素発生の調節を行えるようにしており,余計な電力を使うことなく水素発生できるように改造した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
計画では,2019年度は,2018年度までの研究成果を統合し,非常用多機能電源のための電力マネージメント構築を中心に研究し,全体的な性能評価と調整を行う予定になっていた。しかし,機器の不具合や,実験者の操作ミスなどにより,充分な実験が行えなかった。当初の計画よりも「(4)遅れている」と判断している。主な原因としては以下のようなものが挙げられる。 (1)大型の水素発生システムでは,水素発生は十分に行われているものの,燃料電池の出力が十分に得られなかった。1[kW]の燃料電池の水素漏れの修理に時間がかかったが,修理後も800[W]程度でダウンする症状が続いており,減圧弁の交換や水素供給管の見直しを行っている。 (2)水素発生特性を見直し,ファジィルールを設計しなおし,100[W]燃料電池を用いて実験を行ったところ,精度良く水素発生制御できるようになった。その性能評価のために,実験を繰り返している。 (1)については,発生装置の接続部などを見直し,再設計中である。(2)については,実験を繰り返している。電力マネジメントシステムについては,走行中の自動車への電力供給ではなく,避難所等で停車中に種々の負荷に電力供給するシステムを検討中である。 一方で,微粒子に水を加えることで,AE波と水素ガスが観測されたことから、亀裂進行と水素発生の関連を明確にできた。その結果を基に,内部と表面それぞれへの亀裂進行について別々と捉え、それぞれのパラメータの同定を行い,き裂進展の時間変化の傾向について検討した。さらに,亀裂の進展を0から1の範囲で設定し,活性化Al微粒子の反応をシミュレーションしたところ,温度条件に対応したAEの変化と、定性的に一致する結果が得られた。現在は、この成果を論文にまとめており,「(4)遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)水素発生システムの改良と水素発生制御系の評価:燃料電池の減圧弁を取り換えたところ,一部改善は見られたものの十分ではなく,流量を大きくするために水素発生装置を現在改良中である。改良後に水素発生制御実験を行う。 (2)活性化アルミニウム微粒子の反応モデル構築:令和元年度のシミュレーションでは、初期の亀裂が1箇所の条件で与えていたのに対し、複数箇所の初期亀裂から広がるとした場合のシミュレーションを実施している。 (3)電力マネジメントシステムの試作・接続:具体的な負荷を想定し,負荷への供給と自動車への充電を適切に切り替えるための電力マネジメントシステムの設計・実装を行う。具体的には携帯電話やスマートフォンを複数台接続して充電し,必要に応じて炊飯器や電気ポットなどの生活家電を駆動するためのシステム構築を目指す。
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Causes of Carryover |
水素発生容器内の圧力が高いにもかかわらず,燃料電池の出力が800[W]付近からダウンしてしまうなど実験装置に不具合が生じ,検証実験が予定通りに進まなかったことが主な理由である。 原因を究明し,発生装置の改良に予算を使用する予定である。
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