2017 Fiscal Year Research-status Report
偏波面の情報とGPS測位情報を共有する高効率なミリ波ワイヤレス給電システムの開発
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17K06329
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Research Institution | National Institute of Technology, Toyota College |
Principal Investigator |
安藤 浩哉 豊田工業高等専門学校, 情報工学科, 教授 (30212674)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マイクロ波 / ワイヤレス電力伝送 / 指向性アンテナ / 移相器 / 0dBカプラ |
Outline of Annual Research Achievements |
マイクロ波による電力伝送の伝送効率を評価することができるように、測定機器が搭載できるラックを兼ねた架台の上に、送電用のアンテナと受電用のアンテナとが正対した1.5mのワイヤレス電力伝送路を構成した。電力伝送の効率は、ラック上にアンテナとして直径が40cmの回転楕円体面アンテナを1組用いたガウシアンビーム伝送路を構成し、周波数18GHz~20GHz(波長15mm)の電磁波の通過特性を測定することで確認した。 この作業と並行して、指向性のあるアンテナを任意の方向に向けることができるような駆動系を検討し、水平方向の回転を600kg-cmのトルクで±225度(回転速度が約6度/秒)、仰角方向の回転を1400kg-cmのトルクで±90度(回転速度が約2.7度/秒)、それぞれ変化させることことができる駆動系を導入した。 偏波面制御を実現するために、各偏波成分の位相差を変化させることができるような移相器に関する研究・考察を行ない、その試みとして、2箇所の非接触な摺動部に分布結合方式0dBカプラを用いた、伝送線路長が可変な移相器を考案した。 考察の結果、位相器を構成する伝送線路の特性インピーダンスZ1およびZ2と、分布結合部の偶モードインピーダンスZeと奇モードインピーダンスZoとの間に成立する関係性を見出し、これに基づいて設計した結果、比帯域100%で反射損失が20dB以下であり、摺動部のスライド量を増やすごとに位相差が線型的に変化する移相器が実現できることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は、マイクロ波による電力伝送の伝送効率が評価できるように、測定機器が搭載可能なラック上に送電用の指向性アンテナと受電用の指向性アンテナとが正対したワイヤレス電力伝送路を構成することができた。しかしながら、このワイヤレス電力伝送路を構成するアンテナは、現状では形状や肉厚等が最適化されていないために重量が重く、素早く方向を変えるには適していない。このため、指向性アンテナの方向を変えるのに必要な駆動系を先に導入し、この駆動系の能力に見合った形状や肉厚のアンテナを検討している。 偏波面の制御については、各偏波成分の位相差を連続的に変化させることが望ましいため、そのために必要な移相器について検討を重ね、2箇所の非接触な摺動部に分布結合方式0dBカプラを用いた伝送線路長が連続的に可変な移相器を考案した。考案した移相器は、比帯域100%の周波数範囲で動作することが、シミュレーション上で確認できている。
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Strategy for Future Research Activity |
固定されたパラボラアンテナ間で10mW~100mWレベルの送電が行えることをLED等の点灯実験で確認する。特に、受電側の整流回路で使用する、RF/DC変換効率の向上に寄与するような低電圧で動作するダイオードや、チャージポンプ回路に関して検討を行い、受電した高周波電力を高効率で直流電力に変換する回路を開発する。 さらに、水平方向は600kg-cm以下、仰角方向は1400kg-cm以下のトルクで、それぞれ回転させることができるような指向性アンテナを製作し、送電電力にGPS位置情報を重畳させ、2軸でアンテナの向きを制御することで、任意の位置に置かれた指向性アンテナ間で、電力の伝送が出来ることを確認する。 さらに、送電側と受電側に偏波分離機能を持たせ、受電側の各偏波出力を送電側にフィードバックすることで、送電側と受電側で偏波面を合わせることで電力伝送効率が最も良い偏波方向で、マイクロ波送電が行える技術を開発する。
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Causes of Carryover |
本研究において、マイクロ波による電力伝送の伝送効率を正確に把握することが大切であるが、測定機器が搭載可能なラック上に送電用の指向性アンテナと受電用の指向性アンテナとが正対したワイヤレス電力伝送路を構成するのに時間を要した。 偏波面の制御では、各偏波成分の位相差を連続的に変化させることが望ましく、そのために必要な移相器について検討・動作の確認をすることを優先させたために、2箇所の非接触な摺動部に分布結合方式0dBカプラを有する移相器の検討や製作のための費用が計上されている。これらの成果は研究発表の通りである。 予算執行の関係で平成29年度予算執行には計上されていないが、アンテナ駆動系等の執行は既に行われており、平成30年度の予算執行に計上される見込みである。
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