2017 Fiscal Year Research-status Report
MRI撮像における胎児内SARと温度上昇の高精度評価
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17K06335
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
長岡 智明 国立研究開発法人情報通信研究機構, 電磁波研究所電磁環境研究室, 主任研究員 (00381674)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | MRI / SAR / 妊娠 / FDTD法 / 数値人体モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、これまで明らかにされてこなかった、MRI 撮像時の妊娠時(初期~後期)、すなわち胎児に発育、成長考慮した胎児内の電磁波エネルギー吸収量および温度上昇を世界唯一の妊娠初期から後期までの人体を模擬した人体解剖モデルを用いて高精度に推定することを目標としている。 そこで、まずMRI撮像時のRFパルスが照射された際の人体に対する生体影響に関する国際ワークショップ(ISMRM Workshop on Ensuring RF Safety in MRI)に参加し、最新の研究動向などの情報収集を行った。さらに妊娠中の胎児に対する最新研究を論文等を中心に調査した。 次に、妊娠中の胎児に対する影響を考察するための基礎的な検討として、MRI装置のRFコイルとして代表的なバードゲージコイルの数値モデル化を先行報告を参考に実施し、本研究で利用した電磁波シミュレーション手法(Finite-Difference Time-Domain 法; FDTD 法)を用いたMRI撮像時の人体に対する電磁波エネルギー吸収(SAR)評価の妥当性を先行研究と比較することで確認した。 その後、妊娠20週、26週、29週の胎児を含む、解剖学的構造を有した日本人の妊娠女性数値人体モデルを用いて、1.5T および 3T MRI撮像時の胎児内の電磁波エネルギー吸収量やそのエネルギー吸収に起因する胎児内の温度上昇を高精度に推定した。 その一方で、胎児の発育、成長考慮したモデルの構築法の検討を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
MRI撮像時の妊娠女性に対する数値シミュレーションの基礎的検討については、実施計画通り概ね順調に研究課題を遂行できた。その一方で、妊娠時の胎児の発育、成長を模擬したモデル開発については、コンピュータグラフィック(CG)の技術を利用することから、専門的な知識を有するCGクリエータのサポートが必要不可欠であるが、そのサポートが不十分であったことから、本年度予定していた、モデルの変形技術の検討をすべて実施することはできなかった。したがって、本研究課題の達成度としてはやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
成長モデルの開発については、今年度の遅れを取り戻し、成長モデルの基礎的な検討を実施し、体型と解剖組織の形状変化を連動して、胎児の発育、成長変化を模擬したモデル開発の検討を実施する。具体的には、体型と解剖組織、それぞれの変化を単純に統合したモデルでは、組織の連続性が満たされたない、または解剖学的に不正確なモデルが生成される恐れがある。そこで、適切な変化を模擬した胎児モデルを構築するため、3次元マッピング技術を応用することで、体型と解剖組織を連動させた変化可能な胎児モデルの生成が可能か検討する。 さらに、ばく露評価については、胎児組織の水分量等や成人の各組織の電気定数、熱定数値を参考に、胎児の値を変化させ、SARや温度上昇の電気定数、熱定数依存性について検討するとともに、胎児の個体差を考慮して、各週齢の胎児の体格を変化させ、SARや温度上昇の胎児の体格依存性についても検討する。
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Causes of Carryover |
CGソフトウェアを研究の進捗状況を考慮し今年度購入しなかったことと、来年度の研究成果の発表等が予定より多くなることを鑑みて、次年度使用額が生じた。次年度は主に今年度購入できなかったCGソフトウェアおよび解析データ可視化用のソフトウェアに物品購入、本研究成果を国内外の研究者にアピールするための、学会発表の旅費、参加費、さらに研究論文投稿のための経費に利用する。
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