2018 Fiscal Year Research-status Report
Study for new type of organic solar cells
Project/Area Number |
17K06336
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
金 敬鎬 北見工業大学, 工学部, 准教授 (70608471)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ナノ構造体 / 導電性ポリマー / 太陽電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
再生可能エネルギー資源として太陽電池は、安心・安全と環境への負担が少ないことから大きな期待が寄せられている。太陽電池の低コスト化や素子の柔軟性を実現するには、有機系太陽電池の高性能化が不可欠である。したがって本研究では、新規ナノ構造を有する酸化物(酸化亜鉛、酸化ニッケル、酸化銅など)・水酸化物及びハイブリッドポリマー電極の作製とその特性評価を通して、有機系太陽電池の高機能化を目指す。 今までの研究内容は 1)様々な液相法の中、沈殿法を用いて厚さ約20 nmのナノシートが連続的に相互接続した構造を有する水酸化ニッケルを低温かつ簡単なプロセスで作製可能であることが分かった。銅を微量添加することにより、水酸化ニッケルの形態変化(ナノレイヤー積層構造)とそれに伴う表面積の制御が可能になった。また、銅をドープした水酸化ニッケルは優れた電気化学的特性を示した。ユニークな形状および広い表面積を有する水酸化ナノ構造体の研究は新たな機能を有するナノデバイスの開発への展開が期待される。 次に、2)新しいポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-テトラメタクリレート(PEDOT-TMA)ポリマーへUV-ozone 処理にともなう透過率の向上や表面濡れ性の制御が可能であることが分かった。また、フレキシブルデバイスへの展開のためには柔軟性をもつポリエチレンナフタレート(PEN)基板上に、スピンコーティング法を用いてPEDOT-TMA薄膜を作製し、その構造的・形態的特性を従来のポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(4-スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)との比較を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、両面受光型有機系太陽電池の開発とその高機能化を目指し、様々な基板上に簡単かつ安価な液相法を用いて酸化物・水酸化ナノ構造体の作製とその形態制御およびハイブリッド型ポリマー電極の作製と性能向上を図る。 今までの研究成果は、液相法の中で均一沈殿法を用いて銅を添加したニッケル水酸化物を作製し、その形態的特性をノンドープニッケル水酸化と比較した結果を雑誌論文(International Journal of Electrochemical Science, 13 (2018) 7655-7662)として報告した。銅を添加することで、ニッケル水酸化の形態は連続的に相互接続した構造を有するナノシート(nanosheets)からナノレイヤー積層構造(nanolayer-stacking structure)への変化することが分かった。また、ニッケル酸化物ナノ構造体の形態および電気化学的特性に及ぼす熱処理の影響を調べた結果を国際会議(ICSM、2018年、7月)で発表した。 代表的な透明導電性ポリマーとして(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)は有機エレクトロルミネッセンスや有機系太陽電池など様々な分野で応用されている。一方、湿気に弱く、導電性が低いという欠点があり、それを改善させる研究が必要である。 本研究では、フレキシブル基板上に作製した新しい導電性ポリマーであるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)- テトラメタクリレート(PEDOT-TMA)の構造的・光学的特性を従来のPEDOT:PSSと比較・評価した研究成果を韓国のプッサンで開催される国際会議(IDW, 2018年、8月)で発表した。また、PEDOT-TMAに異なる界面活性剤を添加による形状的特性の変化を評価し、その研究成果を応用物理学会(2018年、9月)で発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
1)新規酸化物・水酸化物ナノ構造体の作製・特性評価と2)ハイブリッドポリマー電極の作製・特性評価に関する研究を包括的に行い、本研究課題の成果をまとめる。 簡単かつ安価な液相法による新規酸化物・水酸化物ナノ構造体の作製とその特性評価については、特に異なるドーパント(Zn、Al、Li など)を添加したニッケル酸化物・水酸化物を化学溶液堆積法やゾル - ゲル法により作製し、その形態的・構造的・光学的・電気化学的特性を総合的に評価し、ドーパントと物性との相関関係を明らかにする。広いバンドギャップ(optical bandgap (Eg) :~ 3.7 eV)を有するニッケル酸化物・水酸化物は有機系太陽電池へ高機能化およびn-p接合ダイオード型太陽電池への展開とそのエネルギー変換効率の向上にも期待できる。 また、PEDOT-TMAと酸化物(WO3、CuOなど)・水酸化物(Ni(OH)2、Co(OH)2など)を組み合わせたハイブリッド電極の電気化学的特性を異なるpHの電解液(KOH、NaCl、H2SO4など)を使用し、サイクリックボルタンメトリー(CV)を用いて評価する。 低コスト、簡単なプロセス、高い可視透過率と優れた環境安定性をもつ高機能性ポリマーに関する研究は、触媒、擬似キャパシタ、エレクトロクロミックデバイスなどの幅広い分野への応用にも期待できる。
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Causes of Carryover |
当初予定していた英語論文の校正費・投稿費として使用する予定だったが、今年度末までに投稿準備が完了しなかったため,次年度使用が生じた。 機能性有機系太陽電池の研究開発に必要な試薬や基板などの消耗品費や研究成果の発表に必要な国内外の学会参加費などで計画的に研究費を使用する。
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