2017 Fiscal Year Research-status Report
Functions and applications for optical plasmonic magnetic artificial lattices
Project/Area Number |
17K06349
|
Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
内田 裕久 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30271000)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 磁気光学効果 / プラズモン / 微細構造 / 回転角増大 / シミュレーション / センサ |
Outline of Annual Research Achievements |
磁性体と貴金属を組み合わせた構造体では,プラズモン共鳴を利用して磁気光学効果の一つであるファラデー効果を大きく増加させることができる.このような光プラズモニック人工磁気格子において,Au球が長方に配列した構造についてFDTDシミュレーションによって光学と磁気光学応答を求めた.ここで使用している磁性ガーネットの誘電率テンソルを分光エリプソメータおよび円偏光変調法による磁気光学効果測定装置を使って求めた.その数値データをもとにFDTD計算から電界分布を求め,その値からファラデー回転角とファラデー楕円率を求めるプログラムを作成した.これにより200x250nmの長方配列Au粒子との複合構造体の磁気光学応答を求めることができた.試料に垂直に偏光を入射し,偏光の回転角を変えたときに45°付近でファラデー回転が大きくなり,かつ透過率はそれほど低下しないことを確認した. 本研究では,ファラデー回転角とファラデー楕円率を求めて,誘電体テンソルの非対角成分を求めたが,そのために円偏光変調による磁気光学効果測定装置を構築した.これは光弾性変調器を用いて,分光した直線偏光を用いて,50kHzで直線偏光と円偏光の間を変化させて,光強度から回転角と楕円率角を求める方法である.回転角と楕円率のスペクトルから,磁性ガーネットの膜厚を用いて,複素数の誘電率の非対角成分のスペクトルを求めた. また実際に複合構造体を開発するため,電子線描画装置を用いた作製プロセスの立ち上げを行ってきた.直径100nmほどのAu粒子を3㎜×3㎜の領域に周期的配置に形成するものである.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・磁性ガーネットBi:YIGの誘電率テンソルの測定: FDTDシミュレーション等で使用するために,構造体で使用するBi:YIGの誘電率を求めるために,円偏光変調法によるファラデー回転角とファラデー楕円率を測定する装置の開発を行った.分光器から出た光を直線偏光に変え,光弾性変調器に入力することで,50kHzで直線偏光から円偏光へと変化させ,試料を透過した光の強度を検出することで,回転角と楕円率を同時に測定する.また,分光エリプソメータを用いて,Bi:YIGの膜厚およびを誘電率テンソルの対角成分のスペクトルを求めた.ファラデー回転角と楕円率のデータと膜厚からテンソルの非対角成分スペクトルを求めた. ・光プラズモニック人工磁気格子の構造のシミュレーション: 長方配列のAu粒子との複合膜について検討を行った.この構造では光学と磁気光学応答に方向による異方性の導入が期待され,偏光の角度によってファラデー回転角の大きさと波長を変化する光学素子として利用できる.これらの構造の検討をFDTD法(有限差分時間領域法)によるシミュレーションを用いて行った.これまでにFDTD法によって,透過率スペクトルを求めていたが,新たに電界分布から,ファラデー回転角スペクトルおよびファラデー楕円率スペクトルとそれらの分布図を求めるプログラムを開発し た.今年度求めた誘電率テンソルを用いて,Au粒子の直径が120nm,周期が200x250nmの長方配列構造体の光学および磁気光学応答を求めることができた. ・光プラズモニック人工磁気格子の作製プロセスの開発: 新しく長方配列AuとBi:YIGとの複合膜を作製するプロセスの開発を行った.微細なパターンを作製するための電子線描画装置の立ち上げを行い,パターン作製条件を求めた.直径100nmほどのAu柱を作製するためのArイオンミリングの条件を求めた.
|
Strategy for Future Research Activity |
・光プラズモニック人工磁気格子の作製と評価: 電子線描画装置を用いたAu粒子作製プロセスを立ち上げる.磁性ガーネットBi:YIGは,RFマグネトロンスパッタ法で作製するが,今回は他にも有機金属堆積(MOD)法を試みる.この方法では液体材料を使用するため,細かな構造を持つ構造の中に,磁性ガーネットを形成させることができる可能性がある.Auと磁性ガーネットを組み合わせた人工磁気格子の開発を行うが,Auは変形しやすい金属であるため,できるだけ低温の熱処理プロセスが望ましい.スパッタ法で成膜した磁性ガーネットは750℃の高温で結晶化させる必要があるが,MOD法では500℃での結晶化も報告されており,プロセスの低温化が期待できる.作製した試料について,光学および磁気光学効果を測定し,ファラデー回転角と楕円率角スペクトルの関係,形状,周期などによる影響を明らかにする. ・光プラズモニック人工磁気格子のシミュレーションとメカニズムの解明: FDTD法を用いて詳細なシミュレーションを行う.回転角など機能が増大されるメカニズムをFDTD法により明らかにする.配列させたAu粒子と磁性ガーネットからなる人工磁気格子に,プラズモン共鳴が起る波長光を照射したときに粒子周辺の電界分布を求め,粒子周辺の近接場だけでなく,粒子間の電界分布も明らかにする.また全体の透過率スペクトルを求め,光学および磁気光学応答のメカニズムを明らかにする. ・近接場光学顕微鏡: 近接場光学顕微鏡(SNOM)の開発を進める.開口プローブを用いるSNOMはすでに出来上がっているが,分解能が高い観察が必要になるため,無開口プローブを用いたSNOMの開発を進める.Auナノ粒子と磁性ガーネットとの複合体について,ナノスケールの分解能で光学および磁気光学特性を明らかにする.FDTDにより透過率とファラデー回転角の分布を求めて比較を行う.
|