2018 Fiscal Year Research-status Report
(Cu,C)系レアアースレス超伝導薄膜材料の低異方性化・実用作製技術の開発
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17K06355
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
寺田 教男 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (20322323)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥田 哲治 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (20347082)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 超伝導材料・素子 / 薄膜 / 人工格子 / 表面・界面物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
・レアアース・毒性元素を含まないこと、・50 K 級の超伝導臨界温度Tc が得られること、・類縁の無限層構造銅酸化物バッファ上に成長することで界面に圧縮性歪を印可することによりヘテロ界面に接する(Cu, C)-1201 層でTc が大幅に上昇する[ Tc > 60 K ]ことなどの特徴を持つ(Cu, C)系薄膜を基幹とする低温成長・高Tc 人工積層構造および天然多層型構造薄膜において、前年度までに、独自に開発した酸素原子源を用いた強酸化雰囲気中で成長した結果、超伝導異方性の支配要因となっている電荷供給ブロックの伝導度が向上し、人工格子膜において超伝導発現領域が積層上部領域が高導電化するとともに超伝導遮蔽信号が増大するなど上部層の超伝導化を示唆する結果が得られた。今年度は単一ターゲットを用いる実用的成長方法において、多層型(Cu,C)系におけるホール濃度が過剰酸素と炭酸基の濃度比に依存することに鑑み、上記の高強度酸化性雰囲気の活用に加えて過剰酸素・炭酸基の挿入サイトとなると考えられる電荷供給層のカチオン欠損の制御を実施し、同層の伝導度の一層の向上を試みた。電荷供給層のカチオン欠損を周期的に大とした構造を強酸化性雰囲気で成長することにより、膜試料全体の常伝導伝導度が大幅に増大するとともに、ゼロ抵抗温度が約10 K上昇することが明らかとなった。これらはカチオン欠陥の導入と成長雰囲気制御の併用が電荷供給層の高伝導化をもたらすことを示すものであり、本課題の目的である(Cu,C)系膜の低異方性化・高Tc化に直結する成果として位置付けられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由 前年度までの成果から人工積層構造、単一ターゲットからの多層構造薄膜ともに、独自に開発した酸素原子源を用いた成長時における反応場制御が電荷供給ブロックの高伝導度化、超伝導ブロックへのホールドープ促進に繋がる結果が得られており、当初の方針が妥当であったことが確認された。続いて今年度は、この手法に電荷供給層のカチオン欠損制御を重畳することが、電荷供給ブロックの伝導度を一層増大させること、及び、これを通じて試料全体の伝導性が向上すること、超伝導特性が増大することを見出した。これは研究目的達成のための主要なハードルである電荷供給層の電子構造制御における顕著な進展であり、目標達成のための新たなマイルストーンに達したと考える。以上から表記の区分にあると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
(Cu, C)系人工格子においては電荷供給ブロックとして過剰酸素を取り込み易く、更なる高伝導化が期待できるCu欠損を導入したCaCuO2層を用い、これら(Cu,C)-1201超伝導ブロックの積層構造を上記の高強度酸化性雰囲気で成長させることにより、超伝導ブロック間の超伝導結合・低異方性の極限を追求する。 全構成元素を同時供給する実用的堆積法においては、成長温度・成長速度と超伝導特性の関係を調べ、最適化することにより高Tcと;低異方性が共存するための条件を明らかにする。 これらにより人工格子、多層構造の両者で高Tc、低異方性な高性能超伝導薄膜材料を追求する。
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Causes of Carryover |
評価システムに用いている低温高磁場システムの保守を行う予定であったが、研究が進展進展したことに鑑み、中断期間を伴う保守作業を次年度に先送りした。これにより成果が早期に得られた。一方、作業自体は必須であるので今年度の適当な時期に実施する。また、低温実験の頻度が増えることにより寒剤費用も増えるので総額については計画通り執行する予定である。
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Research Products
(10 results)