2018 Fiscal Year Research-status Report
2次元強磁性スピン配列を持つ反強磁性誘電体/強磁性積層膜による電界印加磁化反転
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17K06358
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
岩田 展幸 日本大学, 理工学部, 教授 (20328686)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永田 知子 日本大学, 理工学部, 助教 (00733065)
高瀬 浩一 日本大学, 理工学部, 教授 (10297781)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 電界印加型磁化反転 / 電気磁気効果 / 2次元強磁性スピン配列 / 交換バイアス磁場 / 反強磁性ドメイン |
Outline of Annual Research Achievements |
2次元強磁性スピン(2DS)配列を持つr面配向Cr2O3薄膜(反強磁性体)に強磁性を積層させてた試料において交換バイアス磁場(HEB)を室温まで観測した。用いた基板はYAlO3(001)である。疑似ペロブスカイト基板上で、2DS配列を利用した積層膜においてHEBを観測した結果はこれまで報告の無い初の成果であり、電界印加型磁化反転素子開発に大きく貢献する。[Pt/Co]3/Pt/Cr2O3積層膜を作製し磁気特性を測定した。Cr2O3、Pt、Coの膜厚は約325 nm、0.5 nm、1 nmである。HEBは39.9Oeから急激に減少し、140Kから160Kの間で符号がマイナスに反転した。200Kでマイナス側の最大値-4.85Oeを示した後Cr2O3のネール温度(TN)308Kに近づくにつれゼロに近づいた。 電場磁場冷却の磁場の向きから、50Kの積層膜界面では上向きCrスピンを持った反強磁性ドメイン(AFMD)状態となり、Coスピンは下向きが安定となると予想できる。よって、HEBはプラスの値となる。磁化曲線測定後、プラス磁場からゼロに設定して温度を上昇させるためCoスピンは上を向いている。温度上昇させると、Crスピン間に存在する反強磁性的結合エネルギーの大きさ(JAF)は減少する。一方、界面を通して作用するCoとCrスピン間の磁気的交換相互作用のエネルギーの大きさ(Jintf)はJAFの減少よりも緩やかに減少するであろうから、ある温度でJintf>JAFとなって、積層膜界面で下向きCrスピンのAFMDが優勢となり、Coスピンは上向きが安定となると予想できる。この時、HEBはマイナスの値を示す。すでに温度はTNに近いため、HEBの大きさはプラス側ほど大きくならず、TNに向かってゼロとなると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
薄膜作製に使用するスパッタ装置およびパルスレーザー堆積(PLD)装置の不具合により、修理・改善に予想以上の期間を必要としたため、積層膜の作製ができない時期が数ヶ月に及び、当初の予定より大幅に進捗が遅れている。スパッタ装置に使用しているターボ分子ポンプの破損のため、新たなポンプの調達に予算を含め、調整に長い期間を要した。また、Pt、Co薄膜において粒径を小さく密に積層させるために購入したスパッタガンにも不具合がみつかり、その修理・調整にも長い期間を要した。一方、時期を同じくして、下部電極(Ca0.96Ce0.04MnO3薄膜)を作製するためのPLD装置のヒーターの不具合の修理、および新しいターゲット回転機構の導入、ロードロック機構の導入により、より清浄な雰囲気下で原子レベルに近い成膜をできる環境を構築するために予想以上の期間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
YAlO3(YAO)(001)の傾斜研磨基板上に、スパッタ装置を用いてCr2O3薄膜を作製する。面内において、基板と薄膜の配向関係を1種類にすることで、グレイン間に発生する溝を大きく抑制し、同時に電界印加した時のリーク電流を大幅に減少させる。[Pt/Co]/Ptの角型比の良い強磁性体の作製条件の最適化を行う。パルスレーザー堆積(PLD)装置を用いて、ステップ-テラス構造を有する下部電極(Ca0.96Ce0.04MnO3(CCMO)薄膜)を作製する。その後、[Pt/Co]3/Pt/Cr2O3/CCMO積層膜を作製し、電気磁気冷却によりCr2O3の反強磁性ドメインを揃えた後、磁化測定により交換バイアス磁場(HEB)の測定を行う。同時に、ホール効果測定によってHEBを測定する。また、Cr2O3/CCMO積層膜を用いて、Cr2O3の電気磁気効果の温度変化を測定する。電界印加をした場合のHEBの変化をホール効果測定を用いて明らかにする。また、磁気力顕微鏡を用いて、局所的に磁化が電界印加によって反転する様子を確認する。
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Causes of Carryover |
薄膜作製に使用するスパッタ装置およびパルスレーザー堆積(PLD)装置の不具合により、修理・改善に予想以上の期間を必要としたため、積層膜の作製ができない時期が数ヶ月に及び、消耗品の購入ができなかった。直ちに、装置の修理・改善を行い、研究に用いる消耗品を購入する。特に薄膜表面評価用に用いる走査型プローブ顕微鏡の探針を購入する。
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Research Products
(9 results)