2017 Fiscal Year Research-status Report
光ガルバノ効果を利用した半導体量子構造光AND素子の研究
Project/Area Number |
17K06364
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
川津 琢也 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料拠点, 主任研究員 (00444076)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 電子デバイス / 量子構造 / 赤外材料・素子 |
Outline of Annual Research Achievements |
ショットキーバリア光検出器は、半導体と金属薄膜により構成されており、検出エネルギーは、半導体のバンドギャップではなく、半導体‐金属ゲート界面に生ずるショットキー障壁により決められる。このため、幅広い波長の光検出が材料の選択によって可能となる。ショットキーバリア光検出器では、光電流が素子に対して垂直、すなわち、基板から表面金属あるいはその逆方向に流れる。しかし、この垂直方向の電流は、低移動度キャリアを持つドープ基板を通る必要があり、ノイズの要因となる。また、垂直電流は集積回路との相性も悪い。本研究では、ショットキーゲートを局所的に光照射することにより、2次元電子チャネルの空間的な対称性を低下させ、光ガルバノ効果による面内光電流を生じさせることに成功した。特に、金属ゲートの端を照射することにより、ショットキー障壁の光応答が5倍以上増強されることを示した。 また、微傾斜基板上のInGaAs量子ドットの光学特性を調べた。InGaAs量子ドットを微傾斜基板上に作製すると、多段原子ステップに沿ってドットが配列し、面内方向の空間的な対称性を低下させる。そのため、微傾斜基板上のInGaAs量子ドットは、光ガルバノ効果を引き起こす新たな材料として期待できる。本研究では、ヘテロ接合素子に、配列した量子ドットを埋め込み、フォトルミネッセンスを測定した。その結果、非常に高い偏光異方性を示すことがわかった。また、6×6 Luttinger-Kohnハミルトニアンを用いて電子と正孔の固有状態および光学異方性を計算した。その結果、(1)隣接する量子ドット、(2)多段原子ステップ、(3)ピエゾ効果を含む歪 の3つの効果が、非常に高い光学異方性の要因であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、実験装置の都合により、当初予定していた光ガルバノ効果を利用した光ANDヘテロ素子の機能評価ではなく、素子の面内光電流の特性向上を目指した。また、平成30年度以降に予定していた微傾斜基板上のInGaAs量子ドット光学特性評価は、平成29年度に前倒しして行った。その結果、量子ドットの作製手法の確立と基板面方位依存性のデータが得られ、研究目的の一つである高指数面基板上の量子ドットの形成および光物性評価は達成された。当初の予定とは異なるが、この成果は、"区分(2)おおむね順当に進展している"に相当していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、平成29年度に予定していた光ガルバノ効果を利用したヘテロ接合素子の光AND機能評価を実施する。n-AlGaAs/GaAsヘテロ接合電界効果トランジスタに、さまざまな条件で波長の異なる2種類のレーザーを照射し、その光電流を測定する。試料にバンドギャップ以上のレーザーを照射すると、2次元電子の密度が増加する。また、金属ゲートに光を照射した場合も、ゲートからチャネルに電子が遷移し、2次元電子密度が増加する。これにより、拡散電流が生じ、系が異方的である場合には光ガルバノ効果が引き起こされる。本研究では、レーザー照射方法を工夫することにより、n-AlGaAs/GaAsヘテロ接合電界効果トランジスターに2種類のレーザーが照射された時のみ異方性を生じさせ、光AND機能を実現させる。特に、温度やレーザー強度、波長などを変えて、それらが光電流に与える影響を調べる。さらに、平成30年度は、平成29年度に用意した理論計算用のワークステーションを用いて、有限要素法を用いた理論的なシュミレーションを実施する。計算結果と実験結果を比較することにより、光電流発生メカニズムを明らかにする。
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