2018 Fiscal Year Research-status Report
光ガルバノ効果を利用した半導体量子構造光AND素子の研究
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17K06364
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
川津 琢也 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主任研究員 (00444076)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 電子デバイス / 量子構造 / 赤外材料・素子 |
Outline of Annual Research Achievements |
強誘電体や圧電物質などの反転対称性を持たない結晶に光を照射した際、直流電流が生じる現象は、光ガルバノ効果と呼ばれ、1970年代初頭に活発な研究が行われた。この光ガルバノ効果は、等方的なグラフェンやAlGaN/GaNヘテロ接合でも観測されており、それらの場合、光の斜め入射や偏光を用いて空間的な対称性を低下させている。本研究では、レーザー照射方法を工夫することにより、ヘテロ接合電界効果トランジスタに異方性を引き起こし、面内光電流を生じさせることを試みた。特に、2つのレーザー光が照射されたときにのみ電流が生ずるような光AND演算動作を行うことを示した。 測定に用いた試料は、変調ドープn-AlGaAs/GaAsヘテロ接合である。試料はホールバーにプロセスし、ドレインとソース間の光電流を室温で測定した。光照射には、波長808nmと940nmの2種類のレーザーを用いた。波長808nmのレーザーは、対物レンズで半径約25µmのスポットに絞り、強度2 µWでドレイン端子の端に局所的に照射した。一方、波長940nmのレーザーは、1.2 mW/mm2の強度で金属ゲートに一様に照射した。その結果、波長940nmのレーザーによるゲート一様照射や波長808nmのレーザーによるドレイン端子局所照射では、面内光電流を引き起こすことは出来ないが、それら2つを同時に照射すると約100nAの面内光電流が生ずる、すなわち、光AND演算動作を行うことがわかった。得られたドレイン-ソース電流は、計算モデルと比較し、光AND演算動作のメカニズムを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、平成29年度に予定していた光ガルバノ効果を利用した光ANDヘテロ素子の機能評価を実施した。これは、実験装置の都合により、平成30年度以降に予定していた微傾斜基板上のInGaAs量子ドット光学特性評価を平成29年度に前倒しして行ったためである。平成30年度の研究により、変調ドープn-AlGaAs/GaAsヘテロ接合における光AND演算動作とそのメカニズムを解明した。予定とは異なるが、この成果は、"区分(2)おおむね順当に進展している"に相当していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、主に、n-AlGaAs/GaAsヘテロ接合電界効果トランジスタの光応答評価を実施した。平成31年度には、平成30年度の研究を進めるとともに、量子ドットを埋め込んだヘテロ接合素子の光応答実験にも着手する。量子ドットをヘテロ接合電界効果トランジスタの2次元電子チャネル近傍に埋め込み、得られた試料の面内光電流やショットキー光電流を詳細に調べる。通常のヘテロ接合電界効果トランジスタでは、GaAsや金属ゲートに光を照射すると光電流が生じる。量子ドットを埋め込むと、ドットが吸収するような光にも応答するようになると考えられる。特に、高指数面基板上の量子ドットは、大きな異方性があるため、光ガルバノ効果を引き起こすことが期待できる。測定では、温度やレーザー強度、波長などを変えて、それらが光電流に与える影響を調べる。さらに、平成31年度は、平成29年度に用意した理論計算用のワークステーションを用いて、有限要素法を用いた理論的なシミュレーションを実施する。計算結果と実験結果を比較することにより、光電流発生メカニズムを明らかにする。
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Causes of Carryover |
論文掲載料の請求書が平成30年度内に間に合わなかったために次年度使用額が生じた。請求書が届き次第、論文掲載料の支払いを行う予定である。
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