2018 Fiscal Year Research-status Report
Recording and reading method of multi-level complex amplitude data for holographic memories
Project/Area Number |
17K06378
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
本間 聡 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (70362085)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ホログラフィックメモリ / 二重露光法 / 位相変調信号 / 複素振幅信号 / 多重記録 / SQAM信号 / 空間変調器 |
Outline of Annual Research Achievements |
振幅と位相を多値変調した空間複素振幅(SQAM)データをホログラフィックメモリに記録し,高記録密度を達成することを目的とした.本研究では二つの異なる位相変調信号のホログラムを同一領域に多重記録し等価的に複素振幅信号のホログラムを形成する二重露光法(TEM)を提案し,メモリとして十分な精度の信号を再生することを検討している.同手法は,一台の空間変調器を使用した小型な光学系でSQAM信号を記録できるという利点を持つ一方で,多重ホログラム間に強度差や位相差が生じると著しく再生精度が劣化する問題を有していた.露光時間によりホログラム間の強度調整を行うが,厳密に一致させることは困難である. 主に二つの解決手段を検討した.まずは二つのホログラム間の強度差により歪んだ再生信号を補正することを検討した.(1)パイロット信号を用いてホログラム間に生じた強度差を推定し,その影響を補正する手法(2)ターボ符号による誤り訂正(3)FIRフィルタによりピクセル間干渉を抑制する手法を再帰的に適用することにより,再生精度を大きく改善できることを明らかにした. もう一つの手段として,TEMで使用する位相変調信号の最適化を検討した.各位相変調信号には,本来のSQAM信号として必要成分と不要成分が含まれており,二重露光の過程で不要成分に対するホログラムだけを相殺し,所望のSQAM信号を生成していた.ホログラム間に強度差が生じると不要成分の打ち消し合いが不十分となり,結果として残留成分が重複し再生信号を劣化させる原因となっていた.これまでの位相ページの一部を交互に交換した新たな位相ページを使用することで,位相変調信号に含まれる必要成分と不要成分を空間的に分離できることを示した.さらに,空間フィルタにより不要成分の一部を除去することで,雑音の発生を大幅に抑制でき,かつモノマの消費を軽減できることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年次の計画の「多重位相ホログラムと複素振幅信号の再生実験」に関して,フォトポリマ中のモノマの局所的消費によって,露光時間だけではホログラムの回折効率の調整が難しく,想定よりも大きく再生信号が劣化するという結果を得た.同結果を踏まえて,3年次に計画していた「記録データに埋め込んだパイロット信号を利用したホログラム間の強度変動の推定と,再生信号の歪みの補正」「ターボ復号を用いたエラー訂正法」を前倒しで検討した.ピクセル間干渉を抑制するFIRフィルタ処理を追加し,3つの補正法を再帰的に適用することにより,信号再生精度を大きく改善できることを解析的に明らかにした.しかしながら,実験結果に適用した場合に良好な補正結果が得られていない.位相変調信号光をレンズで集光した際大きい強度ピークが発生しており,これが屈折率の非線形的変化や局所的な媒体のシュリンクを引き起こし良好なホログラム形成を阻害していると思われる. 大きな強度ピークを生じないように位相ページデータの最適化を検討した.従来の2枚の位相ページデータを空間的に交互に交換した新たな位相ページを使用すると,記録媒体上で高い強度ピークを生じず,SQAM信号に対応したホログラムを生成できることを確認した.さらに,この位相変調信号をレンズで集光した際に,SQAM信号として必要な成分と不要成分が空間的に分離されることを見出した.空間フィルタにより不要な成分の一部を除去することによって,ホログラム間強度差によって生じる雑音光を低減できる.またどちらか一方の位相変調信号光と適切な大きなの空間フィルタを使用することによって,十分に識別できる精度のSQAM信号をワンショットで生成可能となる.上記の原理およびその解析結果は,すでに論文にまとめ投稿中である.また,原理実験をすでに実施しており,十分な精度のSQAM信号を生成できることを確認している.
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Strategy for Future Research Activity |
プロジェクト最後の年となるので,従来の2重露光法で使用されていた位相ページを交互に配置した新しい位相ページデータを使用したSQAM信号記録法の確立と,ホログラフィックメモリに適用した場合の再生複素振幅データの評価結果・実験結果をまとめる. ワンショットで記録する同手法を導入することにより,記録時の外部からの振動の影響をできるだけ小さくでき,また二重露光法で難しかったホログラムの強度調整が不要となる一方で,SQAM信号の1シンボルに対して複数のSLMのピクセルを使用することが必要となり,結果再生SQAM信号の解像度の低下は避けられない. したがって,まず,使用するSLMのピクセル数に対する再生SQAM信号の質を実験および解析的に評価する.少ないピクセル数で1シンボルを表現する方が高い解像度のSQAM信号を生成できるが,位相変調信号に含まれる必要成分と不要成分の分離が難しくなり,再生SQAM信号にひずみが生じる.したがって,識別に十分な精度でかつできるだけ使用するピクセル数を少なくすることが重要となる.エラー訂正符号を使用した場合を含めて検討する. さらに,上記の必要な成分と不要な成分を効率的に分離できるように複素振幅信号のコード変換法を検討する.また,SQAM信号の再生精度を改善するために,同手法に適切なピクセル間干渉を抑制する方法を検討する.
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