2017 Fiscal Year Research-status Report
ジョセフソン接合を用いず極高感度化を実現する新奇超伝導磁束計の研究
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17K06382
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
武田 正典 静岡大学, 工学部, 准教授 (80470061)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齊藤 敦 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (70313567)
島影 尚 茨城大学, 工学部, 教授 (80359091)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 超伝導 / カイネティックインダクタンス / 共振器 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,カイネティックインダクタンスの電流非線形性を利用する超伝導共振器型磁束計の開発を行っている.平成29年度は4K-GM冷凍機を用いる高周波測定系の整備,本磁束計設計のための基礎実験及び共振器型磁束計の設計を行った. 本磁束計は,超伝導ループへの磁束入力により誘起される遮蔽電流によるカイネティックインダクタンス変化を検出することを動作原理にしている.そのため,超伝導窒化ニオブチタン(NbTiN)薄膜のカイネティックインダクタンスの電流非線形性を評価した.長さ0.2 mの超伝導コプレーナ伝送線路を作製し,その中心導体に直流電流を印加しながらベクトルネットワークアナライザで周波数5 GHzにおける透過係数の位相を測定した.直流電流を印加したことによる位相変化量からカイネティックインダクタンスの変化量を算出した.中心導体の幅が狭い線路ほど印加電流に対するカイネティックインダクタンス変化量は大きくなっており,理論解析とも概ね良い一致を示した.また,櫛形電極と超伝導ループから成る超伝導共振器型磁束計(共振周波数5 GHz)を電磁界シミュレータを用いて設計した.その超伝導ループに100 fTの磁束が印加された場合,カイネティックインダクタンスの電流非線形性の実験を基にすれば,共振周波数は約100 kHz程度変化すると見積もっている.平成30年度は本磁束計を作製し,検出感度及びダイナミックレンジの測定,またアレイ化実験から本磁束計の空間分解能の評価を計画している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は,本研究で実施する超伝導共振器型磁束計開発に向けた基礎実験を目的として,①超伝導NbTiN薄膜のカイネティックインダクタンスの電流非線形性を評価し,②超伝導共振器型磁束計を設計することを目標に挙げた.項目①に関しては,厚さ40nm程度のNbTiN薄膜を作製及びコプレーナ線路に加工し,コプレーナ線路の中心導体に直流電流を印加した状態でカイネティックインダクタンスの電流非線形性の線幅依存性及び温度依存性を測定した.測定結果は理論解析とも概ね良い一致が得られている.本実験から,本磁束計で用いる超伝導ループの線幅を細線化することにより磁束計としての感度を向上することが可能であるという知見を得た.項目②に関しては,項目①の実験結果を基に電磁界シミュレータを用いて櫛形電極と超伝導ループから成る共振器の設計を完了した.現在,動作検証に向けて作製の準備を始めている.以上の理由から順調に進展していると評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の方策として,①平成29年度に設計が完了した超伝導共振器型磁束計を作製し,動作検証を行うとともに磁束計としての検出感度及びダイナミックレンジを測定する.そのための実験系は平成30年度早急に構築する予定である.また動作検証を行った後,②本磁束計のアレイ化について検討する.リニアアレイを設計,作製し,応答特性を測定することにより,隣接する共振器間のクロストークを考察する.その結果に基づき本磁束計の空間分解能を評価する.さらに本研究は,高温超伝導体YBCO薄膜を用いて本磁束計を構築することにより液体窒素温度動作を目指している.YBCO薄膜に関しては既に共同研究者が高品質化に向けた作製に取り組んでおり,平成30年度以降において③YBCO薄膜のカイネティックインダクタンスの電流非線形性評価を実施する.最終年度では,YBCO薄膜を用いた超伝導共振器型磁束計の設計及び動作検証を実施する予定である.
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