2018 Fiscal Year Research-status Report
Electro-optic Modulator for Compensating the Third Order Intermodulation Distortion by Optical Interference
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17K06392
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
榎原 晃 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (10514383)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 電気光学光変調器 / 非線形 / 3次高調波歪み / 波長チャープ / ニオブ酸リチウム / ラットレース回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
マッハツェンダ型電気光学変調器(MZM)は高速で高品質な光変調が可能であるが、変調特性の非線形性に起因する歪みが発生し、特に3次相互変調歪み(IMD3)の抑圧は重要な課題である。本研究では、波長チャープ変調を行う2つのMZMを用いて光学的にIMD3を抑圧する新しい歪み補償法を提案し、その有効性を実証する。さらに、2つのMZMから構成されるデュアルパラレル型光変調器(DPMZM)と、変調信号を供給するための信号分配回路とを集積化した小型、単一チップ、単一入力構成の光変調器を実際に作製し、動作実証を行うところまでを本研究の目標とする。 30年度は、実用的な構造の歪み補償光変調器の実現の第1段階として、信号分配回路を小型で調整不要なプレーナ構造の一体化構成で作製する。それをDPMZMにケーブル接続し、10GHz帯の2周波信号を使用して、歪み補償変調動作を実証することを当初の目標としている。また、DPMZMについても、実際に光導波路から設計・試作して、歪み補償動作実験を行うことを目標としている。具体的には、前年度に決定した仕様の信号分配回路をプレーナ構造で設計し、数cm角程度の大きさを目標に通常の回路基板上に一体化形成する。回路は、一つの入力信号を4分配してDPMZMの各変調電極に信号を供給するが、その際に、DPMZMを構成する2つのMZMが逆符号の波長チャープ変調を行うように、4つの信号の振幅と位相が調整されている必要がある。 設計では、回路シミュレータおよび電磁界シミュレータ(HFSS)を、作製には基板加工機を用いる。作成した分配回路はDPMZMにケーブル接続し、10GHz帯の2周波信号を入力して、実際に歪み補償動作を実証する。さらに、LiNbO3基板上にTiの熱拡散法により光導波路を形成し、光導波路上には金薄膜による変調電極を形成してDPMZMを実際に試作する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分配回路の構成は、ウィルキンソン分配回路に180°移相器を接続した構造で変調信号を180°位相差で等分配に分け、それぞれを非等分配のラットレース回路で位相差180°で9:1の電力比で2つ信号にさらに分けて、DPMZMの4つの位相変調部に供給することを目指した。これにより、チャープパラメータ±0.5のMZMからなるDPMZMが実現できる。 実際の分配回路は比誘電率4.5,厚さ0.610mmの回路基板を用いて設計し、基板加工機で試作して、ネットワークアナライザで評価した結果、ウィルキンソン電力分配器に180°移相器を接続した構造では電力分配は等分配で出力位相差は183°。非等分配ラットレース回路では、並列リング型構造を用いて設計し、電力分配比は実測値で、9.24 : 1と9.31 : 1、出力位相差は177.8°と174.6°で所望の位相差に近い値が得られた。これによるチャープパラメータは+0.514と-0.515で動作させることができる。基板サイズは49.2mm×53.6mmとなり数cm角程度の大きさで作成することができた。 また、LiNbO3基板を用いてDPMZMの試作・評価を行った。光導波路幅は7μmで、50μm光導波路間隔のMZMを2つ並列に並べた導波路パターンを設計し、Ti熱拡散法で実際に試作した。また、変調電極は10μm の中心線路を10μm のギャップを介して接地電極で挟んだ構造とし、フォトリソグラフィーと電解金メッキ法により20μm 厚の金パターンで形成し、良好な電気特性が得られた。 実際に試作した電力分配回路を用いて歪み補償実験を行い、変調指数0.2πradにおいて,3次相互変調歪み成分が基本波成分に対して50dB以上抑圧されていることを確認した。この結果は、前年度行った解析による歪み抑圧量に合致しており、解析結果の有効性が示された。
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Strategy for Future Research Activity |
31年度(令和元年度)は、最終年度であるので本研究の最終目標の達成を目指す。試作したDPMZM導波路基板上に、信号分配回路を直接集積化し、小型、単一チップ構成で、かつ、単一入力信号で動作する実用性の高い歪み補償光変調器を作製する。そして、動作実験を行い、29年度に行った動作解析結果と比較して、本素子の有効性を実証する。さらに、本素子の構成を改良して特性を改善させるとともに、本素子原理の今後の発展性を検討も行う。 前年度にLiNbO3結晶上に形成したDPMZM導波路基板を用いて、信号分配回路をDPMZM上に集積化できるよう、小型構成の信号分配回路を設計、試作する。試作した回路は高周波特性を評価し、必要に応じてパターンを修正する。光導波路基板上に、設計した信号分配回路と変調電極とを直接接続した構成の電極パターンを作製し、単一チップ構成の歪み補償光変調器が完成させる。最終的に、歪み補償性能を評価し、目標仕様の達成を確認する。 本素子構成においては、4分配の信号分配回路を用いて4つの変調電極に変調信号を入力する必要があるが、この構成を改良し、2分配の信号分配回路を用いて2つの電極に信号入力を行う新しい素子構成においても歪み補償ができる可能性があることを昨年度の検討で見いだされた。そこで、この新しい素子構成を実現することも31年度の新たな検討課題とする。
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Causes of Carryover |
31年度(令和元年度)前半に国際会議での研究成果の発表を行うことが確定しており、平成30年度に必要な物品購入の一部は他の予算で執行するなどによりそのための費用を次年度に繰越した。繰り越された予算は、国際会議の旅費、参加費等に使用する。
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Research Products
(23 results)