2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K06396
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小田島 聡 北海道大学, 創成研究機構, 特任助教 (20518451)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹倉 弘理 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (90374595)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 単一光子 / 半導体量子ドット / 金属埋め込み / 多チャンネル化 / 発光波長チューニング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、量子暗号鍵配送技術に基づく量子情報通信を、実験室段階から実際の通信網への応用へと昇華・発展させることを目的としている。その目的遂行の為に、既存の光ファイバー通信網への接続効率が高く、かつ振動や温度変化など外乱に対し強固で恒久的利用が可能な単一光子発生源の開発を行なっている。 外乱に対し強固で恒久的利用が可能な単一光子源として、半導体量子ドット成長膜をナノピラーアレイ状に微細加工し、ファイバー端面に直接接続する構造を提案した。当該年度では単一光子源からの光子取り出し効率の向上を目的とし、半導体ピラー構造を金属内に転写した金属埋め込み型光源の作製を行なった。半導体ピラー構造を金属内に転写するために、ピラー構造上への金属成膜後 a)裏面より基板研磨、もしくは b)犠牲層(Alリッチ層)より基板を剥離し、ピラー下部の基板部分を取り除くといった手法が一般に用いられている。a)基板研磨は試料の膜構造に依存せず対応可能ではあるが、傾斜なく広い面積で一様な研磨面を得る事は難しく歩留まりが悪い。これに対しb)犠牲層を用いる手法は、広い面積で金属転写が可能ではあるが、元々の試料の膜構造として犠牲層が付加されている場合にのみ適用可能である。本研究では、元々犠牲層が付加されていない試料を用いナノピラーアレイ構造を作製し、そのピラーアレイ構造に50nm程度のAl層を犠牲層として蒸着する。更にその上からAgを数μm成膜し塩酸でAl部分のみ選択的に溶解し下部基板部分を切断することで、擬似的に犠牲層による金属埋め込みが実現された。またこれまでは作製したピラーアレイを単独のファイバーへ接続していたが、当該年度では12連装のファイバーアレイに接続し、単一光子生成の多チャンネル化に取り組んだ。また外部歪みにより発光波長のチューニングが可能な単一光子光源の開発にも取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
半導体量子ドット試料における微細構造の最適化により、高純度で長期間安定な単一光子発生源を製造した。使用した量子ドット成長膜は犠牲層(Alリッチ層)を持たない膜構造であるが、ナノピラーアレイ構造作製後のAg埋め込み層成膜時にAl層を50nm程度挿入した2層構造を作製することにより、擬似的に犠牲層を挿入した。この擬犠牲層であるAl層を塩酸で選択的に溶解し下部基板部分を切断することで、半導体ピラーの金属層(Ag)への転写が可能となった。作製した金属埋め込み型単一光子発生源の性能評価は未だ十分にはなされていないが、元々犠牲層を有しない試料に対し擬似的に犠牲層を挿入し金属転写を可能にした意義は大きい。十分な光学評価は来年度に行なうとして、本年度は本構造の作製に成功したことによって、「おおむね順調に進展している」と判断する。 本来の研究計画に加え、次の2点も行なった。(a)横長のピラーアレイ光源を作製し、12連装光ファイバーアレイに接続した。これにより単一光子発生源の多チャンネル化を可能とした。(b)外部歪みによる発光波長のチューニングが可能な単一光子発生源の作製を行なった。これら(a)(b)により、本構造の応用範囲が更に広まったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度において、犠牲層を持たない半導体量子ドット成長膜においても擬似的に犠牲層を挿入し金属転写が可能となる作製方法を開発した。今後は本方法による試料作製過程の最適化を行ない、得られた試料に対する光学測定を詳細に行なう。 今後は主に冷凍機結合型の単一光子発生源の開発を行なう。冷凍機結合型光源の実現により、永続的な単一光子生成が現実のものとなる。 また当初の研究計画には含まれていないが、今年度は(a)12連装ファイバーアレイへ接続可能な単一光子源の作製による単一光子発生源の多チャンネル化と、(b)外部歪みによる発光波長のチューニングが可能な単一光子発生源の開発を行なった。これら2点についても、今後更に研究開発を推し進める予定である。
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Causes of Carryover |
本研究は北海道大学共同利用施設(オープンファシリティ)を利用し遂行しているが、本年度八戸工業大学から北海道大学へ異動したことに伴い、施設利用時の移動費負担が解消された。これにより生じた次年度への繰越金は、研究の更なる進展に必要な物品購入費に充てる。
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Research Products
(5 results)